寒いギャグに合いの手を入れる −「会話がとぎれない、場を盛り上げる」5カ条【4】
「僕はおやじギャグ、大賛成。大いに飛ばしてほしい。しかも下手であるほうがいいんです。みんなに『あれさえ言わなけりゃ、いい男なんだけどな』と言われるのが大事だと思います。たとえば大砲の弾がどかどか飛んできて、全員が頭を低くしているときに、誰かがぼそっとくだらないことを言う。そうすると、みんな元気が出ると思うんです」
三木卓氏が力説する。では、その「くだらないこと」に、どう反応するか。
「なるたけ笑うといいですね。背中を叩いて、『バカ野郎!』と言ってもいい」
セクハラやパワハラに相当する「笑えない冗談」が飛び出したときは、
「言いすぎだよ、もうちょっと勉強しろ」
と助け舟を出してもいい。
三木氏の伯父さんはダジャレの達人だったという。こんな“作品”を残した。
「俺はまっすぐ死ねねえ」
「どういうことですか?」
「歪(いが)んで(胃癌で)死ぬ」
ちなみにこの伯父さん、「20年くらいしてから87歳で死にました。胃癌じゃなく脳梗塞です」(三木氏)。
ココイチ創業者の宗次氏にも聞いてみた。他人が明らかにつまらないギャグを言ったとき、どうするか。
「笑います。たいていはそれなりにおもしろいですよ。レベルの差はありますが、ムッとするようなことは絶対にないですからね」
世の勤め人がひそかに苦しんでいるのが上司の自虐ギャグ。たとえば社長が禿げ頭をつるりとなでて、自虐的な冗談を飛ばしたとする。笑うべきか?
元経営者の宗次氏は「笑ってあげてくださいよ」という意見である。
「本人は笑いをとりたいから言うんです。それを無視されたり、さめた返し方をされたりすると、『俺は笑いをとるセンスがないんだなあ』と落ち込んで、よけいに社内の雰囲気が悪くなります(笑)」
実は、とっておきの返し方がある。
「私のほうからも、同じように冗談を言うと場が和みます」と宗次氏。
三木氏もこう振り返る。
「作家の開高健さん(故人)は下世話な話も冗談もうまい人でした。電話口でダジャレを言うんです。それで、こっちもダジャレを返したらすごく喜んだ。互いに20代のころです。親しみを感じてくれて、そのときはダジャレの応酬になりましたね(笑)」
ダジャレにはダジャレを返す。そうでなければ、ただ笑う。では、笑えないときは?
「わっ、寒い!」
宗次氏の冗談に、秘書の中村さんはこう返すことが多いという。
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1948年生まれ。生後すぐに孤児院へ預けられ、宗次家の養子に。愛知県立小牧高校卒業後、大和ハウス入社。その後独立し、78年カレーハウスCoCo壱番屋創業。98年会長、2002年より現職。07年クラシック専門の宗次ホール設立、代表に就任。著書は『日本一の変人経営者』ほか。
詩人、作家 三木 卓
1935年生まれ。幼年期を満州(中国東北部)で過ごす。59年早稲田大学文学部露文科卒。71年『わがキディ・ランド』で高見順賞、73年に『鶸(ひわ)』で芥川賞、97年『路地』で谷崎潤一郎賞など受賞歴多数。99年紫綬褒章、2011年旭日中綬章を受章。児童文学も多く手がける。
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(面澤淳市=文 的野弘路、山口典利=撮影)
