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ことし4月に訪中し、習近平国家主席と会談した台湾の最大野党・国民党の鄭麗文主席が、日本のテレビ局としては初めて、NNNの単独インタビューに応じた。野党のトップでありながら習主席との会談した狙いや、台湾問題への姿勢を聞いた。

■「私が見た習近平主席」知られざる会談のエピソード

インタビューは台北市の国民党本部で行われた。私たちの前に現れた鄭麗文氏は56歳、習近平主席との会談で並んで立った際、ほぼ同じ背丈にみえたほどの長身だ。

まずは、先月の習近平国家主席との会談について。習近平主席とは、実際に会うとどのような人物なのか。

――中国を訪問し、習近平主席と会談した。一番の狙いは?

「中国と台湾の間の情勢が最近、急速に悪化していて、みなさんが両岸の間でいつでも軍事衝突が発生するかもしれないと思い始めました。台湾で生きている私たちにとっては、特に戦争が起こるのは見たくない。私は、台湾人にとって他の選択肢もあるということを証明したい、つまり、両岸の間では絶対に平和な関係を発展させられることを、です。今回の中国訪問で、これ(平和な関係発展)は台湾と中国政府の共同の考えであること、平和は台湾人の一方的な願いではないことを証明したかったのです」

――実際に会談して、習近平主席の印象はどうだったか?

「今回の訪問では、中国政府からの行き届いた細かな配慮を実感しました。中国政府の最高レベルの接遇は、中国政府が私たちの訪問を重視していたということです。習近平主席と会談した際、習近平主席もかなり心を打ち明けて話をしていました。いつもみなさんが抱いている彼のイメージとは少し異なると思います。習近平主席はとても率直に、私自身を含め訪問団員全員に、心からの親切で素直な思いを伝えてくれたと感じます」

国民党の現役トップが中国本土を訪問するのは10年ぶり。中国側は、民進党との間では緊張関係が続く一方で、国民党との間では融和路線を打ち出しており、その差別化を徹底するためにも、中国側が鄭主席を異例の厚遇で迎えた様子がうかがえる。習主席自身もかなり気を配っていたことがわかるエピソードも明らかにした。

――習近平主席と食事した際、プライベートな話はしたか。

「実は習近平主席の対応に少し恐縮してしまうこともありました。私たちが休憩室を出ると、習近平主席は休憩室の入り口でずっと待っていてくださり、そのまま私たちと一緒に宴会場まで歩いて入り、席につかれました。つまり、宴会場の席で待っているのではなく、入り口からずっと一緒に歩いてきてくださり、食事が終わった後もまた私たちを送り出してくださいました。」

習主席は若い頃、台湾に近い福建省に勤務していた。食事の際には中国と台湾のつながりを強調する演出も凝らされていたという。

「習近平主席は最初の料理を自ら紹介してくださいました。それは、大変特別な福建省の料理でした。ご存じのとおり、台湾と福建は深い縁があり、習近平主席ご自身も長く福建で過ごされました。さらに、この料理は、当時アメリカのキッシンジャー氏が中国を訪問した際の国宴で出された料理でもあると、非常に多層的な意味を持つ料理なので、特別に説明してくださいました」

「習家の二代にわたる昔の国民党の友人との関係についても話をしました。そして、かつて会われた国民党の指導者である連戦元主席と馬英九元総統の安否を尋ね、『どうぞよろしく伝えてほしい』と。これらはすべて人間味あふれる世間話です。宴席ではほかにも多くのことを話し、全体としてとてもリラックスした雰囲気でした」

■注目の台湾問題…習近平氏が会談で口にした言葉とは

では、習氏との会談では台湾問題を巡り、どのようなやりとりがあったのだろうか。中国側が台湾の平和的統一を掲げる一方で、懸念されているのは台湾有事だが…

――会談などの中で、習近平主席が将来の武力による台湾統一の可能性に言及したことはあったか?

「この点については会談の全過程で一言も触れられず、全く話題になりませんでした。実際のところ、習近平主席との会見のときだけでなく、私が大陸を訪問した際、また私が国民党の主席に就任してから、国民党と国台弁(中国の国務院台湾事務弁公室)との間のあらゆる交流でも、この関連議題には一切触れてきませんでした」

では、習近平氏が掲げる「ひとつの中国」について、鄭主席はどう感じているのか。

――習主席が主張する「ひとつの中国」というものは「台湾を含める形でのひとつの中国」だと思うが、鄭主席は習近平主席のこのような考え方についてどう思うか?

「92年コンセンサスが指すのは、両岸はともにひとつの中国に属するということです。ですから、台湾の立場、中華民国の立場からいえば、中華民国憲法も『ひとつの中国』憲法なのです。これは、両岸がともに『ひとつの中国』に属するという原則に完全に合致します。この原則のもとで、我々は共に『台湾独立』に反対しますし、我々は共に中華民族の一員なのです。両岸は『ひとつの家族』である以上、歴史の経緯により両岸それぞれ社会制度や生活様式が全く異なる発展を遂げたとしても、それは交流と和解を妨げるものではありません。したがって、両岸の間で長く分断が続いているからといって、台湾独立を主張する理由にもなりません。両岸がともに『ひとつの中国』に属することが、両岸の平和的な交流と対話の政治的基礎なのです。台湾としても、この基礎の上に相互の敵意を解消し、軍事的武力行使のあらゆる可能性を排除したいと考えています。交流や将来の相互理解と対話を通じて、両岸の人々の真のニーズと利益にかなう、多様な仕組みを発展させることができるでしょう。ですから、当然、互いの願いを尊重し、互いの違いや異なる意見も尊重しなければなりません。そして、私は一歩ずつ、台湾と大陸の間の平和関係を安定させたい。これは何よりも優先されるべきことであり、壮大なプロジェクトです」

鄭主席は、台湾の独立反対を基礎に、台湾海峡の安定を維持する考えを繰り返し強調した。一方で、「ひとつの中国」について、中国側が台湾を統一する形になり得ることについての言及は避けた。そして、会談で習近平主席が台湾問題について次のように述べたことも明かした。

「習近平主席も、『両岸の分断は分厚い氷のように1日の寒さでできたものではないということを理解している。しかし、それは分裂の言い訳にはなりません。両岸の異なる意見やいかなる問題も話し合い対話できるものです。最大の決意と忍耐をもって、一つ一つ着実に進めればよいのです』と述べました。私が言いたいのは、平和の道には多くの困難や障害がありますが、私たちは一歩ずつ、極めて実務的に歩んでいくということです」

■米中首脳会談アメリカ「台湾独立に反対」なら「国民党の立場と一致」

インタビューが行われたのは、米中首脳会談の2日前。台湾問題が大きな議題と予想されていた中、鄭麗文氏の考えを尋ねた。

――今回の米中首脳会談で、アメリカから台湾への武器売却問題や、台湾問題についてのアメリカ側の立場が注目されている。どのように考えるか?

「武器購入の件についてですが、トランプ大統領は『私の在任中に、両岸間で戦争が起きることは絶対に許さない』と言っていました。トランプ大統領は以前にも、この点について問われ、同じように答えました。両岸の間に戦争を起こさないことは、もちろん喜ばしいことであります。しかし、私がさらに求めているのは、トランプ大統領の任期の間だけではなく、戦争が起きないことを永続的な状態にしたい。私たちは本当の意味で戦争を完全に避けて、そして両岸の平和関係を永続的に存続させたいのです。そのためには、台湾が十分な防衛力を持たないといけません。それは国家の安全を守るためであり、この点もとても重要です。しかし、私たちはさらに政治上の努力を求めて、徹底的にいかなる武力行使の可能性を排除したいと考えています」

鄭主席はこのように述べ、台湾海峡の永続的な平和のためには、防衛力が必要であることを認めつつ、防衛力よりも中国との対話を重視する姿勢も同時に示し、武器売却問題については曖昧な答えにとどめました。一方で、明確だったのは、アメリカの台湾問題についての立場について。

アメリカも長期間にわたり、ひとつの中国政策に同意していて、台湾の独立を支持していません。今回のトランプ大統領はさらにその立場を強化し、台湾独立を“支持しない”から“反対”とするのか、注視しています。国民党として、私たちの長期間な主張は中華民国憲法に従う『一中(ひとつの中国)主張』です。我々は台湾独立に反対します。もしアメリカ大統領がさらに明確的に台湾独立に対する態度を主張したら、曖昧な弁解余地も、人々に民進党の両国論を後ろから手助けしようとする懸念もすべて消すことができます。台湾独立の主張と両国論の主張そのものが、両岸に戦争を引き起こす導火線です。もしアメリカ大統領が“ひとつの中国”の政策について改めて述べ、台湾独立に反対する立場を述べるなら、国民党の立場と一致するものです」

――習主席との会談で、米中首脳会議の内容について事前に話し合ったか。

「これについては全く話しませんでした」

トランプ大統領が「台湾独立に反対」の立場を表明することには期待感をにじませました。一方で、トランプ大統領が、こうした問題を中国との交渉材料に使うことに対しては否定的な考えを示した。

■「トランプ大統領に会いたい」

鄭麗文氏は6月に訪米を予定していて、その際、トランプ大統領との会談を希望している。

――6月にアメリカ訪問するということだが、トランプ大統領との面会を希望しているのか?

「そうです。訪米の優先度は高く、そして重視しています。アメリカのみなさんに国民党の態度と主張を理解してもらうためでもあります。同時に我々も戦争以外の方法があることを示し、みなさんに平和という可能性が絶対に可能であると信じてもらいたいです。我々は、日本から韓国から大陸の東南海岸、台湾、香港、そしてシンガポールまで続く第一列島線を、過去の戦争対峙(たいじ)の最前線から平和と繁栄の列島線に変えたい。現在、全世界のなかでも最も裕福で科学的進歩を遂げている地域であり、我々はこの地域のなかで、国際的な努力を通じて、人類により貢献したいと考えています。今回の訪米でトランプ大統領本人と会えることを、私はとても期待しています。トランプ大統領がもし(台湾問題について)影響力とリードする力を発揮し、歴史上、実現したことがない太平の世が実現し、東アジアで人類の平和と繁栄を創造するができれば、トランプ大統領が非常に偉大な世界のリーダーになれると信じています。ですので、私はもちろんトランプ大統領本人と会いたいです」

一方、日本との関係についてはどう考えているのか。

「日本は台湾にとってはとても大事で、私も将来、日本を訪問する機会を楽しみにしています」

――高市首相に面会を希望するか?

「もちろん私は各国のリーダーたちと会いたいです、私もみんなを歓迎しているし、みんなと会いたいです。もちろん中には日本のリーダーも含まれています」

日本との関係を重視していると訴えた一方で、高市首相との会談については、「各国のリーダーと会いたい」と述べるにとどまった。

■鄭主席のホンネ?

ここまで、インタビューで度々、台湾独立に反対の姿勢を示し、中国との融和策の重要性を繰り返し説いてきた鄭麗文主席。しかし、台湾の調査では、中国の目指す「平和統一」について、6割以上が受け入れられないと回答するなど、台湾の民意は揺らいでいる。こうした現状について尋ねると…

――台湾ではさまざまな声がある。将来、台湾有事を心配する声もあるし、現状維持したいという声もある。

「現在の両岸関係は急速に悪化しつつあり、世界中が非常に懸念し、台湾海峡で戦争が勃発することを強く心配しています。今後2〜3年は極めて重要な時期です。頼清徳総統もかつて公の場で、2027年に戦争が起こる可能性があると発言したことがありますが、それはもう来年のことです。台湾の人は誰も、台湾が戦場になることも、次のウクライナになることも望んでいません。したがって、いかに戦争を避け、いかに平和を維持するかが、現在の最も重要な課題となっています。私が言いたいのは、平和は人々が思うほど難しいものではなく、台湾も対岸からの武力脅威に必ずしも悲観的に向き合わないといけないわけではないということです。92年コンセンサスに立ち返り、台湾独立に反対すれば、両岸関係は急速に緩和し、双方が共に利益を得る状況を迎えられます。この基盤の上に、両岸は対話と交流を重ね、無用な敵意と憎しみを解消すべきです。現状を踏まえ、民衆の真のニーズに基づいて多様な仕組みを構築し、両岸の平和的関係を固めていかなければならないと考えます」

その一方で、次のように訴える場面も。

「今後の両岸交流は、台湾側だけが一方的に犠牲を払い、妥協し、既存の生活様式や経済的成果を放棄するものでは決してありません。持続可能な平和的関係とは、双方が尊重され、双方の利益が守られるものでなければなりません。一方だけが利益を得て、もう一方が犠牲と妥協を強いられる関係は長続きする平和にはなり得ません。我々が築くべき平和な関係は対等で相互尊重であり、互いを家族のように接するものです。ですから台湾民衆の福祉は絶対守られるし、民意も絶対に尊重されます。このような関係こそ、両岸の平和が長期的に安定して存続する基盤となります。両岸の発展にとって、これこそ安定した平和的な関係です。あらゆる交流、あらゆる発展が十分に実現可能となります。今後、もし現状とは異なる大きな変化を迎えるとしても、その前提は両岸の民衆の利益がいずれも配慮され、両岸民衆の意向がいずれも尊重され、台湾民衆の利益は必ず守られ、台湾民衆の意向も絶対に尊重されなければなりません。こうした前提のもとでこそ、双方がウィンウィンとなり、共に栄え合う両岸関係が築かれていくのです」

■台湾野党 ふたつの大国のはざまで

インタビューで鄭麗文氏は一貫して、台湾独立に反対する姿勢と中国との対話の重要性を訴えた。一方で、武器売却問題や中国側が目指す台湾統一の是非については明言せず、台湾世論への配慮もみられた。2028年に予定されている次の総統選への意欲を尋ねると、次のように答えた。

――次の総統選に出る予定はあるか?

「私は党主席としての職務を全力で頑張っています。目の前の数多くの課題に全力を尽くして取り組まなければなりません。そのため、遠い将来の長期的な構想や計画を立てるよりも、私は目先の仕事をしっかりやり遂げることを優先しています。私は非常に実務的な責任感のある政治家です。今の最重要課題を確実に成し遂げたいと考えています。それは国民党の改革を完遂すること、藍白(民衆党との)連携を実現すること、年末の地方選挙で勝利を収めること、そして、両岸が対話を通じて平和な関係を築けることを国際社会に証明することです。そのため、北京訪問をしっかり果たし、ワシントン訪問も順調に完了させる必要があります。台湾から世界に平和のメッセージを発信し、全世界が両岸の平和に自信を持てるようにしたいと願っています」