「退場」1位の162回、真っ赤な顔で審判にまくしたてた名将逝く…「選手が不満なら本気で抗議する」
[フロントライン 太田朋男]
9日に84歳で亡くなった米大リーグの名将、ボビー・コックス氏は、味のある監督さんだった。
ブレーブスとブルージェイズを足かけ29シーズンにわたって率いた。ブレーブスのゼネラルマネジャーを経て1990年、監督に復帰すると、翌年から14季連続でブレーブスをナ・リーグ地区優勝(選手会によるストライキでシーズンが打ち切りになった94年を除く)に導き、95年にはワールドシリーズを制覇した。
彼の下では、マダックス、グラビン、スモルツの3氏というサイ・ヤング賞トリオのほか、強打のスイッチヒッター、C・ジョーンズ氏、楽天でもプレーしたA・ジョーンズ氏が長きにわたってプレー。5人ともコックス氏同様、米国野球殿堂入りを果たしている。
動画サイトで「コックス」「退場」と英語で入力すると、彼が退場になった動画が数多くヒットする。監督として史上4位の通算2504勝を挙げた一方、退場処分162回は史上1位。肩を揺すりながらベンチを出ると、顔を真っ赤にして審判にまくし立て、帽子を地面にたたきつける。そして退場が告げられる一連の流れは、お決まりと言えるほどだったが、ファンに愛された。
確か2000年だった。試合前の囲み取材で退場が多い理由について質問が飛んだ。すると、彼は当然のように言った。「必死にやっている選手が判定について不満なら、私の仕事は本気で抗議することだろう」
訃報(ふほう)に接したグラビン氏は大リーグ公式サイトで「彼の情熱を思えば、誰もが彼のためにプレーすることを喜び、壁を突き破ってでも走りたいと思っていた」と述べ、A・ジョーンズ氏は「第二の父のようだった。野球だけでなく、私を人として育ててくれた」と、感謝を口にした。
勝利数と退場処分の数は、無関係ではないのだろう。選手思いの指揮官なればこそ、積み上げられた数字だ。(編集委員)
