Netflix『地面師たち』では“殺害”されたなりすまし犯…現実の地面師たちが選んだ「もう一つの消し方」〈綾野剛が演じた男のモデルが告白〉
〈警察も検察も解明できなかった「55億5000万円の行方」…Netflix『地面師たち』のモデルが獄中から明かした“カネの真相”〉から続く
Netflixドラマ『地面師たち』では、なりすまし犯が殺害されるシーンが描かれた。しかし現実の地面師たちが選んだのは、殺人ではない「別の方法」だった。
【写真】カミンスカス操がモデルに…Netflix『地面師たち』で綾野剛が演じた辻本拓海を見る
綾野剛演じる辻本拓海のモデルとなった男、カミンスカス操の獄中書簡によって明らかになった事件の全貌を『地面師vs.地面師 詐欺師たちの騙し合い』(講談社)より抜粋して紹介する。(全4回の3回目)

写真はイメージ ©AFLO
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実際は殺害ではなく、逃亡させる予定だった
大ヒットドラマ『地面師たち』では、なりすまし犯を殺害するシーンがあったが、現実には殺人だと無期懲役や死刑という重罪に問われるため、そこまでしない。犯行グループのことをよく知る先の不動産ブローカーは、意外な事実を打ち明ける。
「積水ハウスが警視庁に被害届を出し渋っているあいだ、土井や内田は羽毛田と常世田を逃がそうとしました。現に、その打ち合わせもおこなわれました」
密談の場所は神奈川県の名門ゴルフコース「大箱根カントリークラブ」だ。内田や土井、北田のほか、のちに逮捕された17人のうち10人前後が集い、3組に分かれてゴルフをした。むろんカミンスカスもゴルフ謀議に参加している。折しも有明と浅草の二つのマンションを買った時期と重なるという。すでに手配師の秋葉紘子は別の事件で逮捕されていたため、そこにはいない。が、代わりに羽毛田を秋葉に紹介した犯行グループのメンバーが加わったとも聞く。その件をカミンスカスにぶつけると、否定もせず、次のような返事が戻ってきた。
〈私はゴルフはやらないのでと断っていたが、(地面師グループの)三木(勝博)と北田でゴルフクラブやバッグ、シューズ、ウエアーまで買ってくれて、いやいや行きました。(中略/いっしょに)回ったメンバーは三木と三木の社員と三木の彼女と私で私のスコアは120くらいでした。他のメンバーとは話自体出来ませんでした〉(2025年4月7日付書簡)
カミンスカス操は「冤罪」を主張するが…
ゴルフ謀議については、前の年の手紙でもこう書いていた。
〈この(ゴルフの)前までは土井は「羽毛田と連絡がつかない」と言っていました。しかし私はこの日に、土井が私を騙していると思いました。私は何十回も「羽毛田と連絡を取ってくれ」と言っていましたが、土井はこの日に「羽毛田はもうつかまらないよ」と私に言ってきました〉(2024年11月5日付書簡)
カミンスカス自身はあくまで逃匿謀議に加わっておらず、〈地面師グループからは1円も受け取っていない〉(2025年4月7日付書簡)と強調する。有明のマンションに5億円を運び込んだ件も否定する。しかし、とどのつまり異父弟との取引やなりすましの逃匿は、地面師たちが詐欺をもみ消そうとした隠蔽工作にほかならない。最初から羽毛田をなりすまし犯だと知っていたかどうかは別として、カミンスカス本人もそこに加担していたのである。一連の手紙を通じ、当人は冤罪を訴える。だが、それは土台無理な話だ。
不動産ブローカーによれば、なりすまし犯の逃匿が失敗に終わったのは、逃走資金を誰が出すかで揉めたからだという。事件の隠蔽工作が失敗に終わり、羽毛田と常世田が逮捕されると、地面師たちは2018年10月以降、次々と後ろに手がまわっていった。その渦中、フィリピンに高跳びしたカミンスカス操自身もまた、翌19年1月に日本に送還され、逮捕される。
たしかに本人は積水ハウスの地面師詐欺における主犯ではないかもしれない。だが、紛れもなく中心的な役割を担ってきた。史上最大の地面師詐欺事件には、捜査当局が見落としてきた事実が少なくない。
〈28億円が行方不明のまま事件は幕を閉じた…Netflix『地面師たち』で豊川悦司が演じた男のモデルが「なぜか逮捕されなかった」理由〉へ続く
(森 功)
