仮設住宅の集会所で漫談を披露する東川清文さん=2月、石川県珠洲市

 石川県を中心に活動する劇団「演芸列車『東西本線』」を主宰する東川清文さん(47)=金沢市=は、2024年の能登半島地震で被災した地域の仮設住宅を訪れ、被災者に漫談や落語などを披露している。厳しい生活を強いられる人たちに接し「演劇人の自分だからこそできる心のケアになれば」と活動を始めた。「ここで生まれたつながりを大切にしたい」と意気込む。(共同通信=梅本航成)

 今年2月下旬、同県珠洲市にある仮設住宅の集会所。お年寄り15人ほどが東川さんらの到着を待ちわびていた。「お待たせ!」。東川さんが相方の西本浩明さん(47)とともに10分ほど遅れて現れ、週末に降った雪の話題など、1時間近くよもやま話に花を咲かせた。

 東川さんが自身の双子の子どもを題材にした漫談を開始。舞台時のリーゼント姿で子どもの迎えに行くと不審者と間違われたエピソードを語り、笑いが起きた。近くの仮設住宅から参加した瀬戸裕喜子さん(68)は「みんなが集まるきっかけになる」と顔をほころばせた。

 介護士でもある東川さんは地震後、金沢市に開設された1.5次避難所を訪れ、認知症の被災者の介護支援に携わった。被災者と関わるうち、地元演劇人の自分ならではの支援ができればという思いが募った。

 約1カ月後、阪神大震災や東日本大震災などを経て結成された「国境なき劇団」に参加。関西や仙台市で活動する仲間と仮設住宅や避難所で即興劇や朗読を披露し、手応えを感じた。

 「せっかくなら笑ってほしい」。2024年6月からは西本さんを誘い、2人で珠洲市の仮設住宅を訪れ落語や漫談を始めた。現在も月数回、能登各地の仮設住宅を巡る。

 住民との付き合いは1年半を超えた。次第に不安や悩みを打ち明けてもらえるようになり、生活再建の進捗は人それぞれで、復興には終わりがないと感じる。「10年後も、20年後も通い続けるつもりだ」

仮設住宅の集会所で漫談を披露する東川清文さん(奥左)。同右は相方の西本浩明さん=2月、石川県珠洲市