廣津留すみれの「ハーバード合格」を支えたTO DOリスト作り「1タスク5分」の魔法
娘が大学に入学したのを機に起業し、現在、幼児から高校生までを対象としたオンライン英語教室やハーバード生を講師陣にしたサマースクールSIJを主宰する廣津留真理さん。娘のすみれさんは、大分という地方都市に生まれ育ち、小学校から高校まで公立校に通い、海外留学したこともないままハーバード大学に現役合格。2026年4月現在は、バイオリニストとして世界各地で演奏活動を行うほか、作曲家、著述家として、また、国際教養大学特任准教授・成蹊大学客員准教授を務めるなど、多方面で活躍中だ。
なぜ、各分野から引っ張りだこになるこのマルチな才能は育まれたのか? 家庭学習だけで娘に世界トップの大学に入る学力を身につけさせた廣津留さんに、子どものうちから「タスクの優先順位をつける」「1つのタスクに時間をかけない」というトレーニングをしておくことの重要性について語ってもらった。すみれさんの学力を育んだ家庭学習法も紹介されている『ハーバード生たちに学んだ 「好き」と「得意」を伸ばす子育てのルール15』(講談社)からの一部抜粋でお届けする。
廣津留真理(ひろつる・まり)
ディリーゴ英語教室代表/一般社団法人Summer in JAPAN(SIJ)代表理事/株式会社ディリーゴ代表取締役。早稲田大学卒業。一人娘のすみれさんは、大分の公立高校から塾なし留学経験なしでハーバード大学に現役合格&首席卒業。英語指導歴30年超えの実績と娘への家庭内での学習指導経験を踏まえて編み出した独自の「ひろつるメソッド」を確立。英語教室やセミナーにて、これまで1万人以上を指導。現役ハーバード生が講師陣のサマースクールSummer in JAPANは、2014年、経済産業省の「キャリア教育アワード奨励賞」受賞。「羽鳥慎一モーニングショー」「徹子の部屋」(テレビ朝日系)、「セブンルール」(カンテレ・フジテレビ系)などメディア出演多数。子ども向け英語アプリ「UFOたぬきイングリッシュ」、英語経験ゼロの子も1冊で長文読解までできるようになるドリル『英語ぐんぐんニャードリル ひろつるメソッド 最短最速! ゼロから一気に中2終了』 、娘と実践した家庭学習メソッドを公開した『成功する家庭教育 最強の教科書』、『ハーバード生たちに学んだ 「好き」と「得意」を伸ばす子育てのルール15』など著書多数。https://dirigo-edu.com
子どもの集中力が続くのは5分
小さい子どもの学習で大切なのは「飽きる1分前にやめる」。これに尽きます。子どもというのは「やりなさい!」と言わないと勉強をしたがらないもの、というのは大人の思い込み。子どもは好奇心のかたまりですから、大人が思うよりずっと新しいことに興味津々で、いろいろなことを覚えたいと思っているのです。ただし、好奇心の寿命は短く、短時間で飽きてしまいます。
娘のすみれが小さい頃には、漢字や計算、英単語暗記などの学習をゲームのように一緒に楽しんでいました。けれど、娘がどんなに楽しそうに取り組んでいても、1つのことは5分でサッとやめていました。「さあ、勉強するわよ!」というような前置きもなし。いきなり始めて、ダラダラ続けず、完全に飽きる1分前にサッと終える。これで子どもの心には「今の何⁉︎ 楽しかった! もっと続けたかった!」という楽しい気持ちだけが残ります。
「5分で何ができるの?」と思うかもしれませんが、英単語の暗記だったら20個はできます。書き取りは不要だからです。私が出している英語ドリルも、書き取りするページはいっさいありません。
そう言うと、「書かせないと勉強をさせた気にならない」という方がいらっしゃるのですが、それは大人の常識にとらわれているだけ。筆圧が弱い小さな子どものうちは、書き取りをさせるとそれだけでイヤになってしまいます。なぞり読みだけするだけで十分暗記はできるので、書き取りという無駄な時間をなくしているのです。
1日20個、月曜日から金曜日までの平日5日間、毎日たった5分の学習で、1週間で100個の英単語を覚えられることになります。たとえそのうち80個を忘れたとしても、1週間で20個もの英単語を覚えられたら、子どもにとっては大きな達成感になり「もっと覚えたい!」という気持ちになります。どんなに忙しい親御さんでも1日5分くらいなら見ていてあげることはできるはずです。
小さいうちからこの「無駄をなくして何でも5分でする」という習慣が身についた娘は、成長してからも1つのタスクを5分間で終わらせるようにしていました。そうすると、1時間あれば5分×12で、12個ものタスクがクリアできます。
バイオリンのコンクールやハーバード大学受験といった大きな目標があっても、そこに到達するための中期目標、その手前の目標……というふうに、逆算してタスクを細分化していくことで、「今日するべきこと」は細かいピースになります。あとはそこに短時間集中して取り組むだけでした。
ハーバード現役合格を生んだTO DOリスト作り
娘は小学生の頃から、翌日にやるべきタスクを「TO DOリスト」として紙に書き出していました。簡単なことで言うと「図書館の本を返す」「ぞうきんを持って行く」といったことも書き出していました。タスクを終えると、チェックしてその紙は捨ててしまいます。どんな小さなタスクでもクリアすれば「やり遂げた!」という達成感が得られるのが嬉しくて習慣化したようです。
私自身、毎朝その日にするべきことをTO DOリストに書き出すことから1日をスタートさせています。何事も「準備が9割」と思っている大の段取り好きだからですが、娘もそんな私の姿を見て「楽しそう!」と真似するようになったのです。たとえば英検受験前のTO DOリストはこんなふうです。
【廣津留すみれの英検受験前TO DOリスト】
1)単語暗記 5分
2)短文 5分
3)会話 5分
4)長文読解 1本目 5分
5)長文読解 2本目 5分
6)長文読解 3本目 5分
7)リスニング 5分
8)ライティング文章暗記 5分
9)ライティング下書き 5分
10)ライティング清書 5分
11)スピーチ練習 5分
12)スピーチ発表 5分
5分×12で1時間です。これを応用して、バイオリンの曲を仕上げる、数学のテスト勉強をする、という場合も、1回通してやってみたあとに、「ここは弱いな」というところをおさらいする時に「1個1個の問題点クリアに5分以上はかけなかった」と言います。
TO DOリスト作りのメリット
TO DOリスト作りのメリットは他にもあります。「あれをやらなきゃ」「これをやらなきゃ」とやるべきことが頭の中で無秩序にグルグルしていると、脳へのストレスになります。TO DOリストでやるべきタスクを「見える化」することで、脳の空き容量を増やすことができるのです。そのおかげで、新しいことを覚えたり、創造したりすることができるわけです。
ハーバード生に聞いてみると、「TO DOリスト作りは、小さい頃からの習慣だった」と、みんな口を揃えて言います。勉強だけでなく、音楽やスポーツ、アートなど様々なアクティビティ、ボランティア活動など数多くのタスクをこなすのが当たり前の彼らにとって、「今日すべきこと」を細分化=ブレイクダウンして、見える化することは必須なのでしょう。
娘も「ハーバード時代、友人のGoogleカレンダーを見せてもらうと、テトリスのようにスケジュールが埋まっていた」と言っています。娘は、今ではデジタルも併用しつつも、その日のTO DOリストは毎日紙に書き出し、タスクを終えたら線を引いて捨てるのを習慣にしているそうです。
私も、プライベートレッスン(1年間コース)を受ける小学生の生徒さんの親御さんには、毎日の英語TO DOリスト作成とチェックをお願いしています。単語・短文・会話・長文など、するべきことを細かく分けて、1日に進むページ数まで管理しています。これにより、1ヵ月に1回20分のオンラインレッスンだけで、たったの1年で小学生のうちに英検2級(高校修了レベル)に合格する例がたくさんあります。まったく英語学習経験のなかった低学年の生徒さんでも、このTO DOリストの管理で目に見えて英語力がつきます。
小さなうちに親と一緒に自己管理法を楽しみながら取り組むことで、自然と1人でできるように成長します。やがて親の手を借りずに、親も解けないような難題に1人で取り組めるようになります。自己管理、時間管理が習慣化するからです。仕事や家事に忙しい親御さんほど、「後からラクになった」と感謝されます。
逆に、小さいうちから子どもに「これやりなさい」と大量の課題を与えて、1人でウンウン考えさせて学習させると、「勉強とは苦行である」というイメージが刷り込まれてしまいます。そうなると勉強嫌いになり、自己管理法は身につきません。すると後になって「うちの子は勉強嫌いで困ります」「宿題しなさい、って言ってもしないんです」と言う羽目に。学習による達成感が得られないまま大きくなるからです。
どんな大きな目標の達成も、小さなことを1つ1つクリアしていった先にあります。そのためには「タスクの優先順位をつける」「1つのタスクに時間をかけない」というトレーニングを子どものうちからしておくこと、そしてそのトレーニングによる小さな達成感と成功体験を積み重ねて、「やればできる」という自己肯定感を育むことが、非常に大切なのです。
構成/下井香織
