天王寺動物園に8年ぶりゾウ…戦後復興・万博と愛され続けたシンボルに来園者「大阪に来てくれてうれしい」
天王寺動物園(大阪市天王寺区)で、マレーシアから迎えたアジアゾウ3頭の一般公開が始まった。
天王寺動物園のゾウは、戦後復興、大阪万博との縁など時代とともに人々に愛されてきたが、8年前から不在だった。ゾウを待ち続けてきた園関係者は、新たな動物園の顔として期待する。(山根彩花、浅野榛菜)
マレーシアから3頭
22日、ゾウ舎の前は、平日にもかかわらず、人だかりができていた。先月11日にマレーシアから来て今月21日に一般公開された3頭は、並んで悠然と歩いたり、長い鼻で丸太をつかんだりして思い思いに振る舞い、新たな環境にも慣れてきた様子だ。
今回やってきたのは、体高2・5メートルで長い牙のある雄の「クラッ」(推定20歳)、一回り小さな雌の「ダラ」(同14歳)、最年少の雌「アモイ」(同9歳)の3頭。
ゾウ舎には砂地や水辺が設けられ、野生に近い環境が再現されている。展望スペースもあり、双眼鏡を持参した大阪府交野市の女性(61)は「3頭が仲良く砂遊びしている姿がかわいかった。大阪に来てくれてうれしい」と笑顔を見せた。
特別な存在
天王寺動物園にとって、ゾウは特別な動物だ。
動物園の記録などによると、1915年(大正4年)の開園にあわせ、大阪の中心部にあった文化・娯楽施設「大阪博物場」にいたサーカス出身のゾウを連れてきた。歩いて引っ越しする際、松屋町筋の沿道には見物客が集まった。
太平洋戦争では、空襲に備え、ライオンなどの猛獣が毒入りの餌で処分された。当時いたゾウ2頭も栄養不足などで死んでしまった。
終戦後の50年、大阪の貿易商がタイで買い付けた子ゾウを寄贈。「春子」と名付けられ、1日に6万人が詰めかける人気者になった。すぐ後に園に来た「ユリ子」とともに、活気を失って「静物園」と呼ばれた同園をよみがえらせた。
70年の大阪万博に合わせ、インドから記念として雌のアジアゾウが寄贈された。万博から1字を取って「ラニー博子」と名付けられた。
長寿だった春子は2014年に息を引き取り、18年1月にはラニー博子も推定48歳で死んだ。
以降、園の中心部にあるゾウ舎前には「ゾウはいません」のはり紙が掲げられていた。
自然に近い環境
同園も、ゾウ不在の状況を良しとはしていなかった。なぜ、8年も空白が生じたのか。
希少動物の輸入は近年、ハードルが高くなっている。アジアゾウは絶滅危惧種で、ワシントン条約で商業目的での取引は原則として禁止されている。購入のための価格も高騰しているという。加えて世界的に「動物福祉」の意識が高まり、群れで過ごすゾウの生態にあった飼育条件も厳しく問われるようになった。
同園はマレーシア政府と交渉を重ね、2022年、現地の動物園と保護プログラムを締結。大学や他の飼育施設と連携して繁殖や生態の研究などに取り組む手はずを整え、貸与という形で来園にこぎ着けた。
3頭を迎え入れるため同園は約45億円かけて環境を整備。飼育スペースを「日本最大級」の約6600平方メートルに拡充した。砂床を設置して脚への負担を軽減したという。
向井猛園長(68)は「天王寺動物園にとってゾウはシンボル。間近に見られることで、来園者に感動してもらえるはず。ゾウが安全安心に暮らして繁殖できる環境を整えていきたい」と話している。
◆アジアゾウ=南・東南アジアや中国に約5万頭が生息。体重3〜6トン、体高は2〜4メートルで、群れをつくって活動する。日本動物園水族館協会によると、国内では31の施設に87頭(2025年末時点)が飼育されている。飼育下での寿命は50〜70年程度。
