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すき間時間に働く「スポットワーク」の仕事を直前にキャンセルされたうえ、賃金が支払われなかったのは違法だ──。

そう訴えるワーカー9人(20代〜60代)が4月21日、スポットワークのアプリ運営会社「タイミー」(東京都港区)を相手取り、未払い賃金相当額と慰謝料合わせて計約312万円の支払いを求めて東京地裁に集団提訴した。

原告側によると、スポットワークをめぐる「直前キャンセル」について、雇用主(求人企業)ではなく、マッチングの仕組みを提供するプラットフォーマーの法的責任を正面から問う集団訴訟は「全国で初めて」だという。

この日、原告側が東京・霞が関の厚生労働記者会で会見を開いて明らかにした。会場には多くの報道関係者が詰めかけ、関心の高さがうかがえた。

●1都4県の原告9人、135件分を請求

訴状などによると、東京、神奈川、千葉、石川、愛知の1都4県の原告らは、2021年10月から2026年3月にかけて、タイミー上でマッチングが成立した仕事について、雇用者側の都合によるキャンセルを計135件受けたと主張する。

それらの未払い賃金相当額は約102万円にのぼるとして、これに慰謝料を加えた総額約312万円を求めている。

●60代原告が語る「直前キャンセル」の現場

原告の1人である60代男性は会見で、これまでタイミーで700件以上の仕事をこなしてきたと語る。

男性が問題視している「直前キャンセル」は29件にのぼるという。これらとは別に、一部は補償されたが、飲食店での仕事が開始予定時間の十数分前にキャンセルされたこともあったという。

男性は「メールを見なかったら、そのまま店に行っていた状況だった」と振り返る。抗議したところ、最終的に報酬の6割が支払われたケースもあったという。

「一人では声を上げられなかった。僕以外にも泣き寝入りしているワーカーはたくさんいる。少しでも実態が知られればいい」とうったえた。

●争点(1)「併存的債務引受」は成立するか

原告側が考える訴訟の主な争点は3つある。

1つ目は、タイミーが企業と並んで賃金支払義務を負うのかという「併存的債務引受」の成否だ。

タイミーは、働いた当日に報酬を受け取れる「即日払い」を特徴としている。原告側は、利用規約においてタイミーが企業の賃金支払債務を併存的に引き受ける旨が明記されていると指摘する。

原告側代理人の牧野裕貴弁護士は会見で「ワーカーはタイミーに直接請求できるはずだ」と主張した。

●争点(2)「労働契約」はいつ成立するのか

2つ目は、労働契約の成立時期だ。

原告側は、現場での就労開始時(QRコードを読み込んだ)ではなく、マッチング成立時点で契約は成立していると主張する。

訴状によると、タイミーは2025年9月、労働契約の成立タイミングについて「ワーカーが求人への申し込みを完了した時点」とするよう利用規約を改定したが、原告側はそれ以前についても同様にマッチング時点に契約は成立していたとみる。

厚労省も、スポットワークについて「求人に応募した時点で労働契約が成立する」との考えを示している。

●争点(3)プラットフォーマーの「注意義務」

3つ目は、プラットフォーマーとしての注意義務違反の有無だ。

原告側は、タイミーが単なるマッチングの場の提供者にとどまらず、就労管理や賃金の立て替え払い、キャンセルルールの設計まで、一元的に担っている点に着目する。

その対価として企業側から手数料を得ている以上、雇用者による一方的なキャンセルの発生を防ぐ信義則上の義務があると主張している。

●個別訴訟では「泣き寝入りせざるを得ない構造になってきた」

スポットワークは数時間単位の短時間就労が中心で、1件あたりの報酬は数千円から1万円程度だ。

牧野弁護士はこれまで雇用者を相手取った訴訟も手がけてきたが、「1件ごとに訴訟を起こすのは現実的でなく、泣き寝入りせざるを得ない構造になってきた」と述べ、プラットフォーマーを被告とすることで、集団的な救済を目指すと強調した。

また、スポットワークでは、ワーカー側が直前キャンセルをするケースもあるが、原告側は両者の扱いに差があると指摘する。

60代男性によると、ワーカーが直前キャンセルした場合はペナルティが科され、一時利用停止や反省文の提出を求められるという。さらに、「個々のワーカーがどれだけキャンセルをしたのかについては、雇用側から閲覧できる状態になっている」。

一方で、雇用者側のキャンセル率などは、マッチング前にワーカーには開示されていないとされる。

また、キャンセルはショートメッセージで通知されるが、具体的な理由は示されず、その後は雇用者と連絡が取れなくなるという。

タイミー「訴状が届いておらず、現時点で回答差し控える」

タイミーは4月21日、弁護士ドットコムニュースの取材に対して、次のようにコメントした。

「一部報道にて、当社を相手に集団訴訟を提起した旨の報道がなされていることは認識しておりますが、現時点において、当社に訴状が届いておらず、事実関係の確認がとれないため回答を差し控えさせていただきます。今後、訴状が手元に届きましたら、内容を確認し対応を検討してまいります」

弁護士ドットコムニュース編集部・塚田賢慎)