「あんたは何やっても成功する」――そう断言された堀江貴文の未来は、大きく外れた。的中率34%という検証結果がありながら、なぜ細木数子は熱狂的に支持されたのか。視聴率とベストセラーを席巻した“占い師”の正体に迫る。

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 ノンフィクション作家・溝口敦氏の文庫新刊『細木数子 魔女の履歴書』(講談社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/続きを読む)


なぜ細木数子は人気占い師になれたのか?(写真:時事通信社)

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視聴率の女王・細木数子

 細木数子は1938(昭和13)年生まれである。「寵児」というにはいささかトウが立ちすぎたが、民放の番組や占い本の売れ行きを見るかぎり、時代にもてはやされ、一定の地歩を占めていたことはまちがいない。

 細木は2008年3月までテレビで2本のレギュラー番組を持っていた。『幸せって何だっけ〜カズカズの宝話〜』(フジテレビ系、毎週金曜夜8時台)、『ズバリ言うわよ!』(TBS系、毎週火曜夜9時台)であり、両番組ともスタート時から視聴率がずば抜けてよかった。

『幸せって何だっけ』は2004年11月5日のスタート時で17.1%。2位のTBS『日米野球第一戦』13.7%を大きく引き離した。2006年2月24日には、最高視聴率20.5%をマークしている(最低視聴率は2004年12月24日の9.7%)。

 同様に『ズバリ言うわよ!』も2004年8月10日のスタート時で17.4%。

 2005年8月30日には最高視聴率23.5%を叩き出した。レギュラー番組に限らず、細木数子の出演番組はたいてい娯楽部門ベスト10には顔を出し、彼女は「視聴率の女王」と呼ばれていた。

 しかし世の中、テレビを娯楽や息抜きとする人ばかりではない。で、言うのだが、彼女はなぜ娯楽番組を好んで見るような視聴者に受けたのか。

 民放の演出関係者が言う。

「細木さんは出演中、ここがおいしいところだと瞬間的に分かる。自分がアップで映るシーンが来ると、確実にインパクトがあることをしゃべります。本能的に話や態度、表情にメリハリをつける。こういうことは明石家さんまなど一流タレントにしかできない。細木さんは自分のトークが視聴者の印象に強く残るような自己演出が、非常に上手です」

 だが、この程度の技術論では、彼女の高視聴率の理由づけにはなるまい。テレビ番組に限らず細木の占い本も非常なベストセラーである。

ギネス級のベストセラー作家の顔

 細木数子『六星占術』シリーズ平成19年版(KKベストセラーズ刊)のカバーによれば、これまでの著作は累計6500万部を超え、占い本の販売部数世界一として、ギネスブックに連続掲載されているという(平成20年版のカバーによれば「平成18年版1000万部超! 平成19年版900万部超!」とあり、下向気味らしい)。

 KKベストセラーズの社員が同社の内情を明かす。

「うちの書籍に関しては98〜99%が細木関連です。会社全体の売り上げでいうなら雑誌もあるから3〜4割ぐらいじゃないか。現在の社屋(豊島区南大塚)も細木さんの本のおかげで建ったことから“細木御殿”と揶揄されるほどです」

 細木数子には一部の視聴者や読者を惹付ける強力な吸引力がある。たとえば彼女の高飛車で断定的な物言いには小泉純一郎元首相の「一言居士」に通じる「耳に入りやすさ」と説得性があるのかもしれない。その物言いは、どこから来たのか。

 ふつう「苦み走ったいい男」とは言っても「苦み走ったいい女」とは言わない。だが、細木数子の目にはそう形容したくなるような凄味が漂う一瞬がある。

「極妻」の凄味と言うべきか、ぎょろっと目を据えての決めつけ口調はかなりの迫力である。長くヤクザと交際し、内縁関係も続けたキャリアによって染みついたものだろう。

堀江貴文の未来を予言したが⋯

 断定口調は彼女が職業とする占いにも由来している。自信なげに告げられる占いは人に信用されない。強い言い切り口調は信憑性を増す演出になる。しかし、とはいえ占いは将来を言い当ててこそ値打ちが出る。自信ありげに占うだけでは足りず、内容と正確性が問われる。

 細木数子の占いの的中率が総じて低レベルにあることは、大半の読者や視聴者が承知している。ある雑誌(『PHPカラット』2005年2月号)は、細木の占い的中率は34%、ハズレ率は64%と算出している。

 ハズレのいい例がライブドア元社長・堀江貴文被告についての予言である(2005年7月23日『25時間テレビ』フジテレビ系)。

 細木「今ライブドアの株は427円くらい?」

 堀江「よくご存じですね。これ倍になると1000億円ですよ」

 細木「あんた(堀江)バカ言ってるんじゃないよ。5倍になるのよ。(中略)あんたは何やっても成功するし、いいんですよ。でも、女性には気をつけなさいよ。すってんてんになるから」

 言うまでもなく堀江被告は、それから半年後の2006年1月23日、東京地検特捜部に証券取引法違反容疑で逮捕され、4月14日に同社株は上場廃止、終値は94円だった。

 堀江被告は逮捕から約3ヵ月後の4月27日、3回目の保釈申請がようやく認められ、94日ぶりに東京拘置所から出た。

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「世間のためになってるよ。なぜ細木が世間で悪口言われるのか、俺には分からない」(関東の広域暴力団元幹部)

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(溝口 敦/Webオリジナル(外部転載))