(※写真はイメージです/PIXTA)

写真拡大

株式投資におけるリターンの源泉は「配当」だけではありません。企業がビジネスを通じて利益を稼ぎ出し、時間とともに価値を創造し続ける限り、株式の所有者は恩恵を受け続けることができます。本記事では、広木隆氏の著書『株はずっと上がるもの 誰も書けなかった株式投資の真実』(日経BP)から一部編集・抜粋し、投資の神様バフェット氏の言葉とともに、株式投資が「プラスサム・ゲーム」となる論理的な理由を解説します。

投資の神様・バフェットが語る「株式投資の核心」

株式への投資はプラスサム・ゲームです。ゼロサム・ゲームとは参加者の利益と損失の合計がゼロであるのに対して、プラスサム・ゲームとは損している人がいるとしても参加者全体としては利益が損失を上回っていることをいいます。

株式の取引はプラスサム・ゲームだと主張する研究はいくつかありますが、一番説得的なのは学術的な論文などではなく、このひとの意見でしょう。

投資の神様」と称されるウォーレン・バフェットさんです。ウォーレン・バフェットさんは自身が率いるバークシャー・ハサウェイ社が発行する年次報告書に「株主への手紙」を毎年書いてきました。

これは単なる会社の報告ではなく、長年の経験に基づく投資哲学、経営の教訓、人生観、そして将来への展望などが語られ、世界中の投資家にとって「投資の神様」からの貴重なメッセージとして、毎年注目を集めてきました。

その2020年度の「株主への手紙」(2021年2月公表)の中で、バフェットさんははっきりこう述べています。

“Ownership of stocks is very much a ‘positive-sum’ game.”(株式の所有は、まさにプラスサム・ゲームである)

“Stocks are not just pieces of paper that bounce around daily.”(株式は、日々上下するただの紙切れではない)

“Stocks represent ownership of businesses.”(株式は、企業の所有権を表している)

“Over time, businesses create value for their owners.”(時間をかけて、企業は所有者のために価値を生み出す)

“American businesses have delivered enormous gains to their owners.”(米国企業は、その所有者に莫大な利益をもたらしてきた)

これらを一つにつなぐと、バフェットさんの論理はこうなります。

1.株式は単なる取引対象ではない。

2.株式は企業の所有権である。

3.企業は時間とともに価値を創造する。

4.その成果は所有者に帰属する。

5. したがって “Ownership of stocks is very much a positive-sum game.” 株式の所有は、まさにプラスサム・ゲームである。

暗号資産や転売とは違う…企業が「価値を創造」する意味

ここに核心があります。「企業は時間とともに価値を創造し、それは所有者に帰属する」という点です。

僕がゼロサム・ゲームの典型として挙げたものは、アイドルのブロマイドやコンサートチケットの転売、暗号資産(仮想通貨)や絵画・骨董など美術品の取引でした。これらは何も生み出しません。

それに対して企業はビジネスを行い、利益(またはCF)を稼ぎ出します。その企業が稼いだ利益(またはCF)は株式の所有者である株主の手に渡るのです。

市場にCさん、Dさん、Eさんの3人の投資家がいるとします。Yという企業の株式を各自が1年間保有したのち、Y社の株式がCさん→Dさん→Eさんへと転々と譲渡されていくことを考えます。

Y社の株価は1,000円のままで変わりませんが、Y社は毎年100円の配当を払います。株価は値上がりも値下がりもせず1,000円のままなのでCさん、Dさん、Eさんによる売買の損益はプラスもマイナスもなくゼロですが、3人の手元には100円ずつ配当で受け取った現金が残ります。

売買はゼロサムですが、配当を考えるとプラスサムです。

配当ゼロでも株主が儲かる「内部留保」のロジック

では企業が配当を払うから株式投資はプラスサム・ゲームなのでしょうか。

MMの配当命題では、理論的には配当を払おうが内部留保しようが株主価値は変わりません。だとすれば、配当を払わなくても株式投資はプラスサムになるはずです。

さきほどの例でY社は1年で配当の原資になる100円のCFを稼ぎ出すとします。それを配当で払い出したのがさきほどの例でしたが、今度は配当を出さず全額内部留保するとしましょう。すると1年目の終わりにはY社の企業価値は1,100円になっているはずです。同様に2年目には1,200円に、3年目には1,300円になっています(※)。

(※)CFを稼ぎ出す営業資産は1,000円のままで変わらずとしています。各期のCFは営業資産に再投資せずに現金として保有する仮定です。したがってこの例では複利で増えていきません。

Y社の株は各自が1年保有してCさん→Dさん→Eさんへと転売されていきます。CさんはDさんに1,100円で売り100円の利益を手にします。Dさんは1,100円で買った株をEさんに1,200円で売るので、やはり100円の利益を手にします。

CさんとDさんは100円の売却益を手にしましたが、最後のEさんはどうでしょうか? 1,200円で買ったY社の株を1年保有するとその企業価値は1,300円となるので100円の含み益を手にします。

ここでは市場に3人しか投資家がいない設定ですから、EさんがY社の唯一の株主です。

企業価値1,300円はEさんが自由にできる「富」と言えるでしょう。Y社を解散して資産を売却し1,300円の現金に換金することもできます。現実的な設定にすれば、他にも投資家は無数にいるので、EさんはFさんに1,300円で売ることも可能です。Eさんは1,200円でY社の株を買い、その1年後にはやはり100円の利益を得るのです。

結局のところ、配当を出そうが内部留保しようが、企業がCFを稼ぎ出すことができるかどうかがすべてです。

企業が稼いだCFが投資家のリターンの源泉になっています。このリターンは、「誰かの損」によるリターンではありません。これが株式投資はプラスサム・ゲームであることの理由です。

広木 隆

マネックス証券株式会社

チーフ・ストラテジスト