3人の“甲子園球児”を育てた黒川洋行さん【写真:編集部】

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関西外大新監督の黒川洋行氏「遠くの高校へ出すことが、親も子も成長できる一つ」

「パパコーチ」として子どもと向き合える時間は、実はそう長くはない。小さな頃から手塩にかけて育てても、高校から親元を離れてしまえば、あとは見守ることしかできないからだ。

 野球に邁進する少年少女にとって、高校の選択はその後の人生を左右するといっても過言ではないほど重要だ。名門校への憧れ、甲子園への夢など、様々な思いが湧き起こるだろう。しかし、親の熱意が重荷となり子どもの才能を潰したり、学校との“ミスマッチ”で活躍の場に恵まれなかったりするケースも散見される。

 2026年4月から関西外大で監督を務める黒川洋行氏の3人の息子は、いずれも甲子園に出場した。長男・大雅は日南学園(宮崎)で3年春夏、楽天で活躍する次男・史陽は智弁和歌山で5季連続、そして三男・怜遠は星稜(石川)2年春の選抜大会(コロナ禍で中止)でベンチ入りする予定だった。

 黒川氏自身も1993年、上宮(大阪)の主将として選抜優勝を経験している。甲子園に愛された一家の高校選びは、憧れや情に流されない、徹底した「生存戦略」にあった。

 まずは、寮生活をさせる方針を貫いた。上宮高時代は自宅から通い、同志社大では寮生活と両方を経験した黒川氏は、中学卒業と同時に親元から離すことが最良の選択と判断した。九州共立大(福岡)を含めて7年間を九州で過ごした大雅は、野球選手としてのみならず人間的にも大きく成長した。

「3人とも絶対に外へ出したいと考えていました。親が子離れするのは本当に難しいんです。やはり自分の子どもはかわいいじゃないですか。近くにいれば、つい言い過ぎてしまうことがありますが、遠くの高校へ出すことが、親も子も成長できる一つかなと思っています」

保護者が子どもに寄せがちな“期待の上乗せ”…進路選択で必要な冷静な判断

 ただ、甲子園を狙える高校へ進ませても、試合に出られなければ意味がない。智弁和歌山への進学が決まった史陽と一緒に公式戦を観戦した際、どのポジションが手薄なのかを逐一チェック。高校入学までの約半年間、内野の守備練習をみっちり行った。その結果、1年春からレギュラーを掴み、5季連続で甲子園に出場。プロの世界へ羽ばたいていった。

智弁和歌山という強豪校でしたが、次男の場合はある程度イメージとマッチしてスムーズに入ることができて、1年の春からレギュラーを獲ることができました」

 一方で、怜遠が智弁和歌山への憧れを口にした際には、あえて心を鬼にして反対した。「実力的にもそうですし、三男のイメージとは違っていました。星稜も彼が入学した2019年夏に甲子園で準優勝していますし、すぐに試合には出られないだろうとは思っていましたが、そちらに進んだ方が彼の野球スタイルに合っていると思ったので、レールを敷きました」。

 親はどうしても「うちの子ならやれる」と期待値を上乗せしてしまうが、まずは試合に出られるレベルなのかを冷静に判断することが重要になる。「やはり自分の実力と合っているのかということが第一です。その環境の中で高校3年間をやっていけるのかというところの確認は絶対必要になってきます」。

 技術を教えることだけがパパコーチの役割ではない。子どもの実力をしっかり把握した上で一緒に考え、一番輝ける場所へ導くことが、何よりのサポートになる。親の「見栄」を捨て、子どもの「現実」に寄り添う。黒川氏の教えは、進路に迷う親子にとって確かな道標となるはずだ。(内田勝治 / Katsuharu Uchida)