高市早苗首相

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 桜の名所は花見客でにぎわうが、後になって“あの頃は平和だった”と振り返る日が来るかもしれない。イラン攻撃による「原油高」への対策を声高らかにうたう高市政権。政策を誤れば電気・ガス代の記録的上昇が確実視され、「家計への影響」は計り知れないのだ。

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大混乱の金融市場

 桜満開の季節にもかかわらず、日本経済に目を転じれば“花散らしの嵐”が吹き荒れる様相を呈している。

 株価は5万円を割る寸前まで下がり、円相場も一時1ドル=160円台となって1年8カ月ぶりの円安水準。金融市場は大混乱の最中にある。

 イラン情勢が原因なのは言うまでもないが、原油の価格高騰と調達の問題は解決の見通しが立たない。世界の原油先物市場は乱高下が続き、ご存じのとおり国内のガソリン価格は史上最高値を更新。また必要な原油の約9割を中東に頼るのに、ホルムズ海峡が封鎖されて大半のタンカーが航行できないままだ。

高市早苗首相

高市政権の対策は「支離滅裂」

 目下、高市政権による「令和のオイルショック」への対策は主に二つある。

 一つ目は3月16日から始まった石油備蓄の放出。二つ目は、累計約1兆円にも及ぶ石油元売り各社への補助金の支給で、レギュラーガソリンの価格を全国一律1リットルあたり170円程度に抑えることを目的としている。

 石油元売り大手の旧共同石油(現ENEOS)に勤務経験があり、石油流通システムに詳しい桃山学院大学経営学部教授の小嶌(こじま)正稔氏はこう解説する。

「世界の中でも多い方とはいえ、日本の石油備蓄は約250日分しかありません。その放出は石油が本当に不足している時に行うべきで、価格を抑えるためにするものではありません。それなのに、補助金でガソリン価格を抑えて需要を喚起しながら、他方で備蓄を放出するのは支離滅裂。政府が本来やるべきは、限られた原油を経済活動に支障がないよう供給することです。優先したいのは、医療器具や日用品に使われるプラスチック製品などの原料となるナフサと、バスなどの公共交通機関やトラックなど物流を担う車のための軽油の生産です」

電気料金が3割増しに

 さらに、新年度を迎えた4月は値上げラッシュが家計を襲い、イラン攻撃が長引けば、電気・ガスなどの光熱費は「史上最高値」になる可能性が高いという。

 エネルギーに関する経済政策に詳しい、慶應義塾大学産業研究所教授の野村浩二氏が試算するには、

「2022年のウクライナ侵攻時などを参考にすれば、まだ値上がり幅は3分の1程度ですが、今後も需給が逼迫(ひっぱく)して原油やLNG(液化天然ガス)の価格が上昇したら、一般家庭の電気料金が3割増しとなるシナリオを想定しておく必要があります。以前の事例からみれば、電気料金は過去最高を更新する可能性があるといえる。これまでの電気料金が月1万円前後だったら、約1万3000円、年間では3万6000円程度の追加負担が見込まれます」

日本経済全体に対する実質的な増税

 負担増は家計への影響にとどまらない。

 前出の野村氏によれば、

「本当のインパクトは電気料金だけにとどまりません。エネルギー消費の半分は石油であり、コロナ禍前と比較すると、日本全体では年間20兆円前後の負担増になり得ます。家計や企業にとっては極めて大きなもので、感覚的には消費税率で5〜6%の負担増に相当するインパクトです。さらに、石油備蓄の脆弱(ぜいじゃく)なアジア諸国でエネルギー制約による生産停滞が先行すれば、日本の部品輸入が滞るなど、深化したグローバル化のリスクが顕在化する可能性があるのです」

 国の財源が乏しい中で、高市政権がガソリンのみならず電気にまで補助金投入を決断するとなってしまえば、またもや多額の財政負担となる。結局、その原資は税金であり、再び過ちを積み重ねることになろう。

 4月2日発売の「週刊新潮」では、「令和のオイルショック」がわれわれの生活に与える影響と、これを受けた高市政権が講じている対策について、識者が詳しく解説する。

「週刊新潮」2026年4月9日号 掲載