実写版『ゴールデンカムイ』は山田杏奈なくして成立しない アシリパが“本物”だった理由
3月13日に公開される映画『ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編』に向け、『金曜ロードショー』(日本テレビ系)で2月20日に映画『ゴールデンカムイ』が放送され、さらに2月27日にはドラマ『ゴールデンカムイ 北海道刺青囚人争奪編』特別編集版もオンエア。実写版“カムイ旋風”が再び吹き荒れている。
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杉元佐一を演じたのは、“実写化請負人”とも言える山粼賢人。全力疾走、雪原バトル、泥だらけの格闘――体当たりのアクションで”不死身の杉元”をがっちり体現した。その存在感は間違いなく作品の大黒柱だ。だが、この実写化の成否を分けた存在は、もう一人いる。アイヌの少女・アシリパを演じた山田杏奈である。
『ゴールデンカムイ』の物語は、アシリパ抜きには成立しない。彼女は単なるヒロインではなく、物語の倫理軸であり、文化の語り部であり、杉元を導く羅針盤だ。そんなアシリパを“コスプレ的再現”としてではなく、キャラクターとして自身に落とし込んだのが山田杏奈だ。山田のアシリパは、いわゆる“かわいい少女”に寄せすぎない。少し低めで落ち着いた声。キリッとした目線。狩猟民族としての芯の強さが、自然とにじむ。
孤児となった過去を背負いながらも、悲壮に流れすぎない。その絶妙なバランスが、キャラクターに厚みを与えた。言葉の発音、所作、弓を引く姿勢。細部の積み重ねが、彼女がアシリパであるという説得力を生む役作りであった。
■『ゴールデンカムイ』原作ファンからも好評を博した“リスのチタタプ”のシーン さらに原作ファンからも好評を博したのが、杉元とのコミカルな掛け合いのシーン。なかでも象徴的なのが“リスのチタタプ”のシーン。味噌を入れた杉元に対し、それを“オソマ(うんこ)”と勘違いするアシリパのやり取りは、『ゴールデンカムイ』らしさが凝縮された名シーンである。
実写においてコメディは難易度が高い。間がずれれば一気に冷える。しかし山田は、ためらいのない表情と大胆な変顔で振り切った。思わずクスッと笑ってしまうその潔い山田の変顔は、公開当時、SNSで話題になるほど、視聴者への強い印象を残すシーンとなった。シリアスとギャグの振り幅を恐れない。その胆力と覚悟が、『ゴールデンカムイ』のテンポを守ったとも言える。
そして何より難しいのは、アシリパが“アイヌ文化を纏う存在”であることだ。明治期の北海道という時代背景。雪原での生活。馬の扱い、弓の構え、食文化、言語。現代日本に生きる俳優にとっては非日常の連続だ。それらを表層的に“なぞる”のではなく、身体に落とし込み、自然な動きとして成立させること。その積み重ねがなければ、物語は簡単に嘘になる。
山田杏奈のアシリパは、文化を“借りる”のではなく、“背負っている”ように見えた。まさにアイヌの民族に生まれ育ったアイヌの少女として生きていた。動物たちの命をいただくという意識や、雪原での立ち姿も、一挙手一投足に違和感がない。敬意と理解が感じられたからこそ、観客は安心して物語にのめり込むことができた。杉元が「アシリパさん」と敬意をもって従うのも納得のアシリパ像だ。
映画にはアクションの迫力も、映像の壮大さも重要。だが物語の魂を守るのは、キャラクターの実在感にほかならない。山田杏奈のアシリパは原作に忠実でありながらも、アイヌの女を演じる覚悟が画面越しに伝わってくる。公開を控える『ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編』でも、きっと物語の中心にはアシリパがいる。そしてその背後には、役と真摯に向き合う俳優・山田杏奈の覚悟がある。
※アシリパの「リ」は小文字が正式表記(文=結理乃)
