【吉沢 さりぃ】「出産騒動」はMrs. GREEN APPLEのライブだけじゃない…!「結婚式場」で破水した女性が明かす「まさかの出産体験」
2025年10月、人気音楽グループ「Mrs. GREEN APPLE」のコンサート会場において「トイレでファンが出産して開演が遅れた」とされる騒動があり、物議を醸した。
臨月に入ればむやみな行動は控えるのが当たり前とはいえ、なかにはやむを得ない事情があったり、思いがけない早産に見舞われることもある。家族のトラブルや子育てなどをテーマに執筆を続けるライターの清水芽々氏が、「まさかの出産」を経験した女性たちに取材した。
結婚式場で「まさかの出産」
「思いがけない早産……まさに私がそうでした」
そう気まずそうな表情を浮かべるのは、東京都在住の勝田みずきさん(仮名・29歳)。みずきさんは2024年10月に第二子を出産しているが、赤ん坊が生まれたのは病院ではなく、結婚式場だった。
「従姉妹の結婚式だったんです。当時私は妊娠36週、つまり臨月に入ったばかりでした。前日の検診でも『順調だね』としか言われてなかったし、式場でも周りは親戚ばかりだったので何の問題もないだろうと思っていました」
挙式は神前式。厳かな空気が流れる中、みずきさんは身体の異変に気付く。
「下腹部に鈍い痛みと張りを感じたんです。この時はすぐに収まったので前駆陣痛かと思って、それほど気にしていませんでした」
その後、披露宴が開かれた。来賓の挨拶やメモリアルムービーなどプログラムが進み、キャンドルサービスの段階になった時、再びみずきさんは下腹部の強い痛みと張りに襲われる。
「本格的な陣痛が来た!と思いました。なんとか披露宴が終わるまでは我慢して、終わったらすぐに病院に行こうと考えていました」
筆者は、まさにこの時撮影したという写真を見せてもらったが、満面の笑みでテーブルのキャンドルに火をつける新郎新婦の横で、苦悶の表情を浮かべるみずきさんが写っていた。
「それから1時間ほどたった頃、あまりの痛みに耐えかねた私は思わずいきんでしまったんです。その瞬間、破水しました」
みずきさんが隣に座っていた実母にそのことを告げると、実母は大慌てで式場のスタッフに伝え、式場のスタッフはパニックになりかけながらも別室にみずきさんを連れて行った。
「『体調が悪くなったお客様を休ませるための部屋』ということカーテンで仕切られたベッドが並んでいました。スタッフの方が救急車を呼んでくれたのですが、救急隊が到着した時にはもう赤ちゃんの頭が見えていたのでその場で産むしかなかったんです」
「分娩介助の研修は受けている」と言って立ち合った救急隊員は男性だった。男性医師に抵抗があってわざわざ女医のいる病院をかかりつけにしていたみずきさんだが、そんなことを言っていられる状況ではない。
「もう、どうにでもなれ!という気持ちでした」
温泉付きのホテルで破水
必死にいきみ続けるみずきさんの手を握って励まし続けたのはウェディングドレス姿の従姉妹だった。
「スタッフの人から話を聞いて、披露宴を抜け出して来てくれたんです。そのせいで披露宴のクライマックスだった『新婦から両親への感謝の手紙』を司会者が代読するという事態になってしまったようで、本当に申し訳ないことをしました」
そのまま近くの救急病院に運ばれたみずきさん。2780グラムの元気な赤ん坊で、幸いにも何の異常も見られなかった。
「子どもが無事に生まれたことが何よりでした。経産婦とはいえ、まさかこんな急にお産が進むとは思ってなかったので焦りました。
ちなみに、生まれたのは女の子です。せっかくなので出生地である結婚式場にあやかった名前にしました。お宮参りの後、式場に寄って、お世話になったスタッフの方に挨拶して来ました。『前代未聞でしたが、おめでたい出来事ですので……』とお祝いまで頂いてしまいました」
そんなみずきさんに対し、
「身内が集まっているところならまだいいですよ。私なんか周りは赤の他人だらけでしたから」
と、苦笑いをするのは神奈川県在住の山下弥生さん(仮名・33歳)だ。
旅行サイトのライターとして働く弥生さんは、取材で訪れたホテルで温泉を堪能し、「せっかくだから」と宿泊した。当時は妊娠8ヵ月だったが、翌朝に産気づいたという。
「子宮をわしづかみにされるような痛みで目を覚ましました。布団がびっしょりだったので破水していたことがわかりました。
私はすぐにフロントに電話をして事情を話し、清潔なバスタオルを数枚持って来てもらって局部にあてて横になっていました」
朝食の時間と重なったこともあって、館内は相当バタバタしていたようだ。
「このまま産んじゃいましょう」
「救急車を呼ぼう」「いや、お産の時は救急車は来てくれないんじゃなかった?」そんなやりとりが交わされていたところに、近くで聞き耳を立てていたひとりの男性客がフロントに声をかけた。
「何かありましたか?ちなみに私は産科医です」
渡りに舟とばかりにホテルの支配人は彼を弥生さんの部屋に誘導。この時弥生さんは出産のピークを迎えていた。
「このまま産んじゃいましょう」
産科医の男性からそう声をかけられた弥生さんは、渾身の力を振り絞っていきみ、無事に男児を出産した。
「お医者さんの他に、支配人の奥様とベテランの仲居さんも立ち合ってくれました。自宅出産の経験があると話していた仲居さんが励ましてくれたのが心強かったです」
この仲居さんが呼んでくれた助産師が、近くの総合病院に救急搬送されることになった弥生さんに付き添ってくれたこともありがたかった。
「子どもは1200グラムしかなかったので、NICU(新生児集中治療室)に入りました。私もそのまま入院しましたが、先に退院することになった後も近くのビジネスホテルに滞在して子どもの様子を見守っていました」
間もなく1歳になるという子どもは元気に育っているという。
「言い訳になりますけど、産休前だし、ただでさえ初産は遅れがちだと聞いていたので、まさか生まれるとは思いませんでした。お産ってホントに何があるかわかりませんね。良い勉強になりました」
続く後編記事『お寺の境内で起きた「出産騒動」…!駆け付けた僧侶がとった「的確すぎる行動」』では、同じホテルでも「ラブホテル」で出産してしまった、上岡麻由さん(仮名・31歳・埼玉県在住)の体験談を紹介する。

