決勝で殊勲の3ランを放った青学大・渡部海(左)、幼少期は阪神ユニで保育園に通う野球少年だった【写真:羽鳥慶太(左)、渡部の家族提供】

写真拡大

中学生で抱いたプロの夢 「それなら止めておこう」父の真意

 高校・大学野球の秋の日本一を決める明治神宮大会(神宮)は14日から6日間、熱戦が繰り広げられた。大学の部決勝は青学大(東都大学)が立命大(関西5連盟第2)を4-0で破り、2年連続2度目の優勝を飾った。殊勲の決勝3ランを打ったのは、来秋のドラフト1位候補、渡部海捕手(3年)。幼いころから野球一色だった少年が大学野球の大舞台でも輝きを放ち、高校・大学を通じて5度目の日本一を達成した。

 0-0で迎えた6回1死二、三塁。4番・渡部がカウント3-2から内角のスライダーを振り抜いた。「最後に自分の得意な球がきた」。打球は放物線を描き左翼席へ。「手ごたえは良くて。“行くかな”という感じで走っていました」。右手を突き上げ、ダイヤモンドを一周。先制3ランがそのまま決勝点となり、史上6校目の連覇に大きく貢献した。

 幼い時から野球に夢中だった。大阪市出身。幼少期は毎日のように阪神のユニホームやTシャツを着て、保育園に通っていた。休みの日になれば、公園で「野球しよう、野球しよう」と父・達人さんにねだった。渡部が小学生の時にクラブチームのコーチを務めていた達人さんは「自分が子どもの時よりも上手かった。僕の役割は野球を嫌いにならないようにするだけでした」と目を細めた。

 中学生だったころ、親子で掲げた目標がある。渡部は「プロ野球選手になりたい」と言った。しかし、達人さんからは「それなら止めておこう」とつれない返事。父の真意は明確だった。「やるならNPBの1軍のレギュラーになろう」。目標を明確に、かつ一段高く設定した。U-15日本代表に選ばれ、高校は多くのプロ野球選手を輩出した智辯和歌山に進学。高2夏に正捕手として甲子園優勝を経験した。達人さんは「高校の時から寮に入っているので、たまにしか会わないですけど、真面目に頑張ってくれているなと思います」と話した。

リーグ戦6連覇、4度の大学日本一「ドラフト1位でプロに行く」

 卒業後は東都大学の名門・青学大に進学。1年春からマスクを被り、リーグ戦6連覇、今回で4度の日本一を達成した。「勝てる捕手」として来秋ドラフトの1位候補にまで成長。そしてこの日、家族が応援に駆け付ける前で大仕事をやってのけた。達人さんは「犠牲フライでも何でもいいから点を取ってくれたらと。祈る思いで見ていました。想像を遥かに超える活躍ですね。興奮して、一瞬頭が真っ白になりました」と笑った。渡部も「家族は常に支えてくれているので恩返しがしたい。良い結果が出せたのでよかった」と感謝を口にした。

 今大会で、中日のドラフト1位・中西聖輝投手、DeNAのドラフト1位・小田康一郎内野手ら4年生がチームを去る。最上級生になる渡部は春秋リーグ戦、全日本大学選手権、明治神宮大会の4冠を目標に掲げる。

「大学4年間をやり切って、ドラフト1位でプロに行く。そこで活躍できるように下積みをしていきたい」

 視線は常に先を見据える。「バッティングの能力が上がってこないと、自分としての価値もなくなってしまう。『打てるキャッチャー』というのは貴重な存在。自分がそうなれるようにスキルアップしていきたい」と決意を新たにした。小さかった野球少年は確かな足取りで夢に向かって進んでいる。

(THE ANSWER編集部・澤田 直人 / Naoto Sawada)