″宝石蜂″という異名をもつ美しいハチ「オオセイボウ」″幸せのブルービー″「ルリモンハナバチ」の知られざる生態【岡山】
RSK山陽放送報道部に美しいハチの画像が届きました。
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美しい2種類のハチの姿を撮影したのは、カメラマンの青江隆晴さんです。
ハチについて、虫の生態に詳しい東洋産業の大野竜徳さんに聞きました。
(東洋産業 大野竜徳さん)
「写真を拝見したところ、2種類のハチが写っていますね。黒と青のシマシマに見えるハチはルリモンハナバチ(瑠璃紋花蜂)かその近縁種、全身メタリックブルーなハチはオオセイボウ(大青蜂)でしょう。
蜂、というと私たちに害をもたらしそうですが、ブルービーは人を威嚇したり刺したりすることはなく、その鮮やかな青い色から『幸せのブルービー』とも呼ばれ、人気を集めています。
オオセイボウの美しさは、宝石にたとえられることもあります。
ところが、その生態をひもとくと、ブルービーの背後には『労働寄生』という、自然界ならではのしたたかな戦略が隠されているのです」
美しい青の秘密
ーどうしてこんなに美しい色をしているのでしょうか。
(東洋産業 大野竜徳さん)
「ルリモンハナバチは黒っぽい毛と青っぽい毛が体に生えており、その配列やコントラストで、太陽光の下では黒に近いネイビーブルーの地に瑠璃色の帯が浮かび上がります。
黄色い花粉をまといながらモフモフと花に潜る姿は、愛らしく見えますね」
「一方、オオセイボウの青は構造色によるものです。外骨格の表面にナノレベルの微細な構造があり、光を干渉させることで青や緑の光だけを強く反射します。そのため、見る角度によっては金緑色や紫に見えることも」
「構造色は色素による発色と違い、退色しにくく、数千万年前の化石にまで輝きが残るほど安定しています。オオセイボウの青は『進化が刻んだ永遠の輝き』です」
他の蜂の巣の乗っ取り犯?
(大野竜徳さん)
「そんな見た目に美しい彼女たちには恐ろしい一面が…。なんとその正体は『他の蜂の巣の乗っ取り犯』なのです。
見た目は美しいブルービーですが、実はどちらも『労働寄生』という生き方をしています。
ルリモンハナバチはミツバチ科に属し、英語では Cuckoo bee、オオセイボウはセイボウ科に属し、英語では Cuckoo waspと呼ばれますね。
どちらも鳥のカッコウの名前を付けられているように、『托卵』という戦略をもち、他のハチの巣に自分の卵を産んであとは知らん顔です」
「ルリモンハナバチは寄生先として、泥で作った巣に花粉を集めて卵を産むコシブトハナバチやケブカハナバチの仲間の巣を狙います。
巣の主がせっせと花粉集めに出かけた留守を狙い、ルリモンハナバチは素早く巣に侵入して集めていた花粉に卵を産みつけます。
ルリモンハナバチはミツバチの仲間ですが、自分の体に花粉を付けて運ぶ器官は持たないので、自分では一切花粉を集めず、巣をつくることもなく、寄生先の巣の主がわが子のために用意した花粉団子だけでなく卵や幼虫まで自らの子の餌としていただき、幼虫は巣を乗っ取ってしまいます」
「いっぽう、オオセイボウは寄生先として『スズバチ』の巣を狙います(スズメバチ、ではありません)。スズバチは泥でできた鈴のような形の巣を作り、そこにシャクトリムシなどを狩って運び込み、卵を産みつけます。
オオセイボウはその巣壁に穴を開け、無理やり中に自分の卵を産卵して託してしまいます。生まれた幼虫はスズバチが集めた餌や卵や幼虫まで食べつくして成長します。
もちろん、寄生先のハチもただやられっぱなしではありません。やすやすと乗っ取られてはたまらないので、托卵されないようにさまざまな工夫をして生き残ってきました。
巣穴を曲げて侵入しにくくしたり、土を硬く固めたり、二重構造にして外敵を防いだり、さまざまな防御策を発達させたり、ブルービーとはちあわせた際には激しく攻撃して追い払うこともあり、恨めしそうにしつこくとどまるブルービーと戦ったりします」
托卵を成功させるための作戦とは
「対するブルービーも、なんとかして『托卵』を成功させようとします。産卵のタイミングを正確に計って留守を狙う緻密さを持ち、さらにオオセイボウは『家主に見つかったら丸まって防御』戦術を発達させました。
硬い外骨格で体を丸めると、相手の大顎でも歯が立たず、ダンゴムシのように丸まったオオセイボウをコロン!と捨ててしまうことしかできません。
寄生と防御のせめぎ合いは専門用語では『共進化』と呼ばれる軍拡競争であり、両者は世代を重ねながら互いに戦略を磨き続けてきました。
こうしてみると、ブルービーはずいぶん『ズルい』生き方に見えます。けれど、労働寄生は自然全体からみれば単なる悪事ではありません。
ブルービーに寄生されることで、寄生されてしまったハチは子孫を残すことはできませんが、その地域全体で見ると寄生されてしまったハチの個体数は次世代では増えすぎず、結果的に生態系全体のバランスが保たれます。
たとえばスズバチが減れば、彼らが狩るシャクトリムシの数も維持され、食物連鎖全体の均衡が保てるのです。
さらに、ブルービー自身も追い払われることが多く、寄生先より数が多くなることはなく、相手を絶滅させることもありません」
「自然界は『利用する者』と『利用される者』のせめぎ合いで成り立っています。ブルービーは、その均衡を支える重要なピースのひとつなのです。
『幸せのブルービー』は、その美しさと裏腹に、厳しい自然界をしたたかに生き抜く寄生者です。
花畑で見かけるその輝きは、ただの癒しではなく、数百万年に及ぶ進化の物語の結晶でもあるのです。
そんな生き物のドラマにも思いをはせつつ、美しい姿をいつまでも私たちに見せてほしいですね」

