天皇杯でジャイキリ連発を狙う筑波大の頼もしき男。風格漂う内野航太郎の思考。SNS話題のゴールで「迷いが一気に晴れた」
筑波大の3年生FW内野航太郎は、関東大学サッカーリーグ1部において、直近の6試合で5ゴールと躍動している。第11節では、2023年11月19日の関東1部リーグ最終戦で筑波大に0−1で敗れて以来、リーグ戦無敗を誇っていた明治大を相手に1得点。チームは開始5分にMF廣井蘭人のゴールで先制すると、相手の猛攻に押し込まれていた73分に、MF清水大翔のスルーパスに抜け出した内野が、右足で豪快に突き刺す。2−0で勝利し、明治大の無敗記録をストップさせた。
その表情は自信が感じられた。今年の筑波大では諏訪間幸成(横浜F・マリノス)、安藤寿岐(サガン鳥栖)、加藤玄(名古屋グランパス)と3人の新4年生の主軸がプロの世界に進み、チームのベース作り自体が難しかった。
内野自身もリーグ開幕直前まで横浜FMのキャンプとデンマーク1部リーグの強豪・ブレンビーIFに練習参加しており、合流後すぐに始まった関東1部では周囲との連係が噛み合わない部分も散見された。
「どうしてもチームとして劣勢に回ることが多くて、そうなると僕のタスクがゴールというより、ゴールの1つ、2つ前のことをやらないといけない。そこが多くなると、チャンスを決めるというより、チャンスを味方にクリエイトする方になる。それもやりながら、どう最後は自分がシュートを打つ形に持っていけるか。そこは悩みました」
この壁はこれまで何度か直面してきたが、今回は彼の向き合い方がこれまでとまったく違った。これまではどうしてもボールが来ないことに苛立ってしまったり、受けようとしすぎるあまり逆に囲まれてしまうなど、悪循環に陥ってしまうこともあった。
しかし、ブレンビーでの経験が内野の思考を大きく変えた。
「これまではゴール前で触って点を取ることが強みであり、逆にそこしかなかったのですが、それではブレンビーでは一切通用しなかった。ブレンビーは蹴るよりも間で繋ぐチームで、中盤に降りていって起点を作って、ボールを触ってリズムを作って、チャンスを作りながらゴールを狙っていくことを強烈に求められた。
最初はそこの対応にてこずったのですが、3日目くらいから慣れていくと、間で起点となるプレーをしたうえで、最後に走り込んで自分にボールが返ってくるプレーがスムーズにできるようになって、そこを評価してもらえたんです」
デンマークで起点作りの部分を改めて学べたことが、1つのターニングポイントだった。同時に「4年生が3人抜けた状態で、僕も開幕前の準備に参加できてないなかで、一生懸命筑波のためにトレーニングを重ねてきた仲間たちに感謝していますし、僕も筑波大への思いが強いので、みんなのために献身的なプレーをきちんとやりたいと強く思った」と、自覚と覚悟が、内野を心身ともに大きく成長させた。
それが結果となって表われたのが、第4節の桐蔭横浜大戦での決勝ゴールだった。フィードが主審に当たって跳ね返ったボールを、フィードを蹴った選手が触って、動きを止めた隙を見逃さず、そのままドリブルシュートを決めてみせた。
当時、このシーンはSNSで大きく話題となったが、これはオンプレーであり、周りの選手がセルフジャッジをするなか、内野だけが集中を切らさなかった。ストライカーとしての本能が凝縮されていたゴールだった。
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「このゴールで少し残っていた迷いが一気に晴れました」と、ここから量産態勢に入った。そして先述の明治大戦、先制してから劣勢の展開のなかで、「焦れずに一発を狙い続けました」と献身的なプレーをしながらも、『その時』を待ち続けた。
73分のゴールシーン。清水がボールを持って顔を上げた瞬間、内野は少し左のスペースに移動し、相手CBの視野から外れて斜め右前に一気に加速。そこにスルーパスが届き、ダイレクトで突き刺した。
「もし昨年のように気持ちが悪い方向に向かって、チームに対して『もっと俺にボールを出せよ』というマインドになっていたら、あのシーンで清水が前を向いた時にボールが欲しすぎて、自分から寄っていって、受けた時には相手のプレスに合っていたと思う。でも、虎視淡々と一発を狙えていたからこそ、相手にとって一番怖い動きができてゴールにつながったと思います」
研ぎ澄まされた集中力を『ここぞ』という場面で発揮する。これこそが内野から漂い始めた風格の要因だった。
「1年生や2年生の頃だったら、間違いなく試合中にふてくされていたと思います(笑)。今、積極的にやっているプレーは、昨年まであまりやりたくなかったプレーだし、ゴールを決めることにしか興味がなかったので、そこは成長したと思います」
次なる戦いは天皇杯2回戦、長崎はピーススタジアムに乗り込んでのJ2のV・ファーレン長崎戦だ。1回戦でJ2のRB大宮アルディージャを1−0で下し、2年連続のジャイアントキリングを果たし、今回は2試合連続の金星を狙う。劣勢を強いられる時間もあると思うが、そういう時こそ大仕事をするエースストライカーがいるのは、長崎にとって脅威以外何物でもないだろう。
「中2日ですが、自分が目ざしている場所は連戦が当たり前。だからこそ、タフに戦って、勝利を掴みたいと思います」
決戦の時は来た。心身ともに逞しくなった大学ナンバーワンストライカーは、長崎の地で研ぎ澄ました牙を剥く――。
取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)
