「マスクかぶれ」の原因はご存知ですか?医師が薦める対処法も解説!

マスクかぶれの原因とは?Medical DOC監修医が治し方・塗り薬を塗ってもいいのか・予防法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
≫「人差し指の側面にぶつぶつ」ができる原因はご存知ですか?医師が徹底解説!
監修医師:
池澤 優子(あい皮ふ科・アレルギー科クリニック)
順天堂大学医学部卒業。横浜市立大学皮膚科助教、茅ヶ崎市立病院皮膚科部長を歴任後、神奈川県横浜市、あい皮ふ科・アレルギー科副院長として地域の皮膚科、アレルギー疾患の診療に努めている。医学博士。皮膚科学会専門医、アレルギー学会認定医の資格を有する。
「マスクかぶれ」の原因と治し方
新型コロナウイルス感染症の流行拡大によって、新しい生活様式の一つとしてマスクを長時間着用することが必要となりました。しかし、こうしたマスクの長時間の利用にはいくつかの弊害もあります。例えば、肌荒れや赤み、かゆみといった「マスクかぶれ」が気になったことがある方もいるのではないでしょうか。かぶれとは医学的には刺激性接触皮膚炎または特定のアレルゲンによるアレルギー性接触皮膚炎のことを指しています。刺激性接触皮膚炎は、摩擦や蒸れが原因で肌に炎症が起こるために起こり、アレルギー性接触皮膚炎はマスクの素材等によるアレルギー反応によって起こります。本記事では、医師がマスクかぶれの原因や正しい治し方、塗り薬の使用法について解説します。かぶれを防ぐための予防法についてもご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
マスクと肌との摩擦
マスクは長時間つけることで、マスクのゴムや素材が皮膚とこすれ続け、摩擦によって刺激性接触皮膚炎の発生率が高まります。
個人差はあるものの、マスクと肌の摩擦によって肌の角質のバリアー[y7] が障害を受け、そこから刺激物が入ってしまい、角化細胞を刺激し、表皮細胞からサイトカインやケモカインという物質が作られます。これらが皮膚の炎症を引き起こすといったメカニズムが考えられています。
対策・治し方としては、マスクの素材を柔らかいものに変えたり、あらかじめ肌を保湿するなど低刺激のスキンケアを心がけたりするといったものがあります。
マスクの素材や洗剤によるアレルギー反応
長時間のマスク着用によって、アレルギー性接触皮膚炎の発生率も高まります。
マスクに使われているゴムや染料、洗剤成分などのアレルゲンにアレルギー反応を示す場合があります。
対応・治し方としては、低刺激のマスクを選ぶ、布マスクを使用する場合にはよく洗って洗剤が残らない様にする、不織布マスクの下に布マスクをつける、ゴムひもが耳に直接かからないようにマスク止め(フック・クリップ)を使用するなどがあります。
乾燥によるバリア機能低下
マスクの着用中は温度・湿度が高くなりますが、外すと急激に低下します。特に、ある研究では、マスク内外の冬の湿度差は、39.0±14.3℃は、東京都の最低湿度2月49%と最高湿度83%の差である34%よりも大きいという結果が得られています。マスクの着脱によるこうした急激な湿度の変化によって、肌に乾燥などのダメージが起こります。これが間接的に、肌のバリア機能を低下させ、皮膚炎を起こしやすくなることにつながる可能性はあります。
マスクを長時間つけることによる肌の蒸れ
マスクをつけている際の肌は、湿度・温度ともに高くなるために蒸れてしまっている状態になりやすいです。30分程度の運動時のマスク着用時にも、角層が厚くなることが知られています。そのため、長時間マスクを着用すると、この蒸れによって、さらに肌の角質層の質の変化がもたらされる可能性があります。すると、肌のバリア機能などが低下し、結果としてかぶれを起こしやすい状態になるとことも考えられます。
マスクを長時間つけることでニキビができる
かぶれではないのですが、マスクの着用による肌トラブルとして、ニキビができやすくなることも知られています。これは「マスクアクネ(マスクニキビ)」とも言われています。
マスクを長時間つけることで、水分や湿気が閉じ込められることになります。それらが皮膚の刺激になり、さらにマスクとの摩擦も相まって口や鼻の周りにニキビ(尋常性ざ瘡)ができやすくなります。
治し方・対策としては、メイクを控え、その代わりに保湿剤や保湿力のある日焼け止めを塗っておくことが挙げられます。ノンコメドジェニック、敏感肌用の基礎化粧品などもおすすめです。ただし、ニキビが悪化し腫れや赤み、痛みが強くなるようであれば、早めに皮膚科を受診しましょう。
「マスクかぶれ」の正しい対処法は?
マスクが触れる肌に一致したかぶれが見られる場合、マスクによる接触皮膚炎の疑いがあります。接触皮膚炎の治療としてはまずは、ステロイド外用薬を塗ることが検討されます。
顔面には通常weak~mediumクラスのステロイドを使用します。その他、乾燥が見られる場合には保湿剤も使用します。かゆみが強い場合には抗ヒスタミン薬の内服が効果的な場合もあります。
しかし、ニキビができていたり赤みや痛みが強く感染を伴っていたりするような際には、抗生物質を内服・外用することも必要となります。
マスクかぶれの症状が強く出ている場合には、皮膚科を受診しましょう。
「マスクかぶれ」に塗り薬を塗っても良い?
はい、マスクかぶれに塗り薬を塗っても良い場合が多いと考えられます。
しかし、マスクかぶれと思っていたら実は皮膚の感染症だったという場合もあります。例えば、痛みや赤み、膿が出る様なできものは細菌感染を疑います。また、頻度としては高くはありませんが、接触皮膚炎の症状が重くなることがあります。例えば、水ぶくれのような症状になってしまう際にもセルフケアでは治療が難しいです。また、市販の外用薬には鎮痒剤など、多くの成分が入っているため、塗り薬の種類によっては、かえってかゆみや赤みといった症状を悪化させてしまう場合もあります。もともと肌が弱く、症状が強く出てしまっている際には、皮膚科医の診察を受けるようにしましょう。
「マスクかぶれ」の正しい予防法は?
マスクによる肌トラブルを防ぐためには、まずは正しい洗顔と保湿が重要です。低刺激、無香料でノンコメドジェニック(毛穴をふさがない)の保湿剤がおすすめです。洗顔後には、すぐに保湿剤を塗ることが大切です。セラミドやヒアルロン酸などの成分が含まれたものを使うと良いでしょう。脂性肌の方はジェル状、普通肌の方はローションタイプ、乾燥肌の方はクリームタイプの保湿剤がおすすめですが、季節や年齢に応じて使い分けることも大切です。ワセリンは唇に塗る様にしましょう。洗顔後、マスク着用前、寝る前がおすすめです。
また、マスクによってかぶれやすいという方は、マスクを着用する際には可能であればメイクを控えたり、肌に負担のないパウダリーファンデーションやポイントメイクなど軽めのメイクにしたりするとよいでしょう。
マスクの選び方にもポイントがあります。肌に適度にフィットしたものを選びましょう。マスクがきつすぎたり、顔の上でずれたりすると、肌を刺激する可能性があるからです。また、マスクがずれることが多いと、必然的にマスクを手で調整することが増えます。その結果、手からマスクや顔に細菌が移ってしまう可能性があります。素材に関しては、肌触りのよい適度な通気性のあるものがおすすめです。オーガニックコットンやシルク、高機能なナイロンやポリウレタン製など、自分自身の肌にあわせたものを使用すると良いでしょうそして、マスクを長時間着用しなくてはならない環境では、4時間つけたら15分ほど外すなどの気配りも肌の健康を保つのに役立ちます。
マスクを使った後、布製の場合は洗いましょう。使い捨てのサージカルマスクは、一度着用したら捨てる様にしましょう。
もともと、皮膚にニキビなどのトラブルがある場合には、皮膚科で適切な治療を受けるようにしましょう。
「マスクかぶれ」についてよくある質問
ここまでマスクかぶれなどを紹介しました。ここでは「マスクかぶれ」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
マスクかぶれの際にワセリンを塗るのは問題ないでしょうか?
池澤 優子(医師)
マスクと肌が擦れるような頬や鼻、あご、耳の後などにあらかじめワセリンを塗ることでマスクかぶれの予防に役立つことがあります。また、軽度のマスクによる肌荒れであればワセリンなどの保護剤・保湿剤が効果的な場合があります。
しかし、人によってはワセリンを塗ることでマスクを着用することによる肌の蒸れが助長され、吹き出物の原因となることも懸念されます。また、マスクかぶれの症状によっては、ステロイド外用薬が必要です。そのため、軽いマスクかぶれの際にワセリンを塗るのはほぼ問題ないですが、トラブルがみられた場合は自己判断ではなくきちんと皮膚科を受診することが大切です。
まとめ
マスクかぶれは刺激性接触皮膚炎あるいはアレルギー性接触皮膚炎と呼ばれる状態です。マスクと肌との摩擦や蒸れ、アレルギー反応が主な原因となります。その他、マスクによるトラブルにはニキビなどもあります。これらの症状が軽いうちに適切なスキンケアを行い、悪化しないよう対策しましょう。もし症状がひどくなった場合は、早めに皮膚科を受診することが大切です。
「マスクかぶれ」で考えられる病気
「マスクかぶれ」から医師が考えられる病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
皮膚科の病気
刺激性接触皮膚炎
アレルギー性接触皮膚炎
皮脂欠乏性湿疹
マスクかぶれに関連して、こうした症状が出る場合もあります。スキンケアの徹底と、マスクを適切に使用することが大切です。
「マスクかぶれ」に似ている症状・関連する症状
「マスクかぶれ」と関連している、似ている症状は3個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
口のまわりのニキビ
顔の赤み
乾燥肌
マスクかぶれに関連して、こうした症状が出る場合もあります。スキンケアの徹底と、マスクを適切に使用することが大切です。
【参考文献】・重篤副作用疾患別対応マニュアル 平成22年3月 厚生労働省
・接触皮膚炎診療ガイドライン 2020