サザンオールスターズ『THANK YOU SO MUCH』

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<CD Chart Focus>

参考:https://www.oricon.co.jp/rank/ja/w/2025-03-31/

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 2025年3月31日付(3月25日発表)のオリコン週間アルバムランキングで首位を獲得したのはサザンオールスターズの『THANK YOU SO MUCH』で、推定売上枚数は230,803枚。2位以下に大きな差をつけた。ほか、トップ10圏内の初登場作品としては、3位 水樹奈々『CONTEMPORARY EMOTION』(17,450枚)、4位 Little Glee Monster『Ambitious』(13,796枚)、5位 東京スカパラダイスオーケストラ『NO BORDER HITS 2025→2001 ~ベスト・オブ・東京スカパラダイスオーケストラ~』(12,883枚)、7位 Jun.K『O/N』(10,045枚)、8位 宮世琉弥『Soleil』(9,579枚)、9位 大滝詠一『B-EACH TIME L-ONG 40th Anniversary Edition』(6,856枚)があった。

 本題に入る前にちょっと寄り道。8位の宮世琉弥『Soleil』に収録されている「猫がいびきで」は言葉遊びのようなシンプルな押韻が印象的な、スウィートで親密さにあふれたバラード。アンビエントR&Bを思い起こさせるような厚く奥行きを感じるアレンジや、間奏のちょっと意表を突くサウンド、意外な活躍をするチェロ等々、聴きどころのある1曲だ。せっかくなので推しておきたい。

 さて、取り上げるのはグループでの“5年代連続アルバム1位”というオリコン史上初の記録を打ち立てたサザンオールスターズ『THANK YOU SO MUCH』。オリジナルアルバムとしては10年ぶり、ベスト盤『海のOh, Yeah!!』から数えても約7年ぶりのアルバムだ。2023年以降コンスタントにリリースしてきたシングルを含む、バラエティに富んだ全14曲が収録されている。

 冒頭を飾る「恋のブギウギナイト」は、ドラマ『新宿野戦病院』(フジテレビ系)の主題歌だ。タイトルからも窺えるとおりの4つ打ちのディスコチューンで、現代的にスマートなダンスサウンドを展開するかわりに、こってりとしたメロディに彩られた大人のアレンジになっている。最後のサビ前の間奏で入るこれみよがしな掛け声と鼓の意外性も興味深い。

 こうしたギャップや意外性でいえば、「盆ギリ恋歌」のイントロが面白い。この曲自体はシンセのような音色も飛び出すエキゾチシズムに彩られたベンチャーズ調の変形サーフロックという感じなのだが、最初に聴いた時、イントロが始まって数秒はてっきり盆踊りの跳ねたリズムが始まるのかと錯覚してしまった。ギミックとしてはとてもシンプルながら、いい意味でのギャップが魅力のひとつといえよう。

 ちなみにこの「盆ギリ恋歌」は、“故郷”=茅ヶ崎をモチーフとしたフレーズが並ぶ三部作的楽曲のひとつ。「盆ギリ恋歌」のほかには、「歌えニッポンの空」、「Relay~杜の詩」がある。ある意味このアルバムの軸になる三部作だ。とりわけこれらの曲には、魅力と不意打ちが混ぜ合わされたような引っ掛かりを覚える。

■和と洋のすれ違いが生む独自の音楽世界とその真髄

 ラテン調の「歌えニッポンの空」にも言えることだが、サザンオールスターズは故郷をテーマにする際に、サウンド面でも言葉の面でも、その故郷らしい要素を取り入れるのに加えて、ごった煮性も押し出してくる。

 たとえば、能登半島地震に関する被災地の取り組みの報道をきっかけに書かれた「桜、ひらり」は、故郷への複雑な思いを未来へのメッセージに繋げる1曲だが、いかにも日本を思わせるような単語を散りばめつつ、自然の美しさを託した四字熟語の〈柳暗花明〉が持つ響きは、歌の中で換骨奪胎されていく。巧みな和洋折衷というよりも、和と洋が互いに交わることなく、すれ違うことを際立たせようとしているかのようだ。そんなことはいまさら言うまでもない、そこがまさにサザンオールスターズの“らしさ”だと言えるのだろう。

 こうした屈折をよりスマートに洗練させた形で表現したり、あるいはキャッチーな一語に集約してプレゼンテーションすることも可能だし、そのようにして人気も評価も獲得しているJ-POPのアーティストやバンドは数多いだろう。サザンオールスターズもその潮流に影響を与えつつ、むしろ枠に収まらない独自のスタイルを築き上げてきた存在だ――というか、むしろ歴史上最も成功した例のひとつと言えるかもしれない。

(文=imdkm)