経営陣らが謝罪する姿は、一部の視聴者の「同情」を買ったが…(写真提供:渋井哲也)

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1月27日に行われた、元SMAP・中居正広氏の性加害問題やその後の社内処理をめぐるフジテレビの記者会見には、191の媒体から437人の記者が参加。10時間以上にわたる、異例の長時間会見となった。

経営陣よりも「記者」に批判が集まった

会見が長時間となった背景には、同月17日に行われた会見が「閉鎖的」であったとの批判を受け、今回は時間制限を設けずに実施されたことがある。しかし、記者たちは同じ質問の繰り返しや感情的な問い詰めを行い、「演説質問」と揶揄されるような長時間にわたる主観的な主張が見られ、怒声も飛び交う混乱が生じていた。

結果として、釈明を行ったフジテレビよりも、会見に参加した記者らの方が批判される状況となり、当日、Xでは「フジテレビかわいそう」がトレンド入り。漫画家倉田真由美氏も「『フジテレビかわいそう』がトレンドになっていて空いた口塞がらない。」と驚きを示していた。

長時間の会見を行い、厳しい質問に耐え抜く姿が公開されることで、SNS上では「誠実な対応だ」などと評価する声も上がった。ビデオジャーナリストの神保哲生氏は、朝日新聞の取材の中で「会見の運営自体にフジテレビ側の『ダメージコントロール』の意図があったのではないか」と指摘している。

そして「記者の追及は行き過ぎだった」との声も上がっているが、コンプライアンスに詳しい杉山大介弁護士は「その指摘も変な話だと思っています」と語る。

「スポンサー離れ」はまだ続いている

「記者会見とは、あくまで話を聞いてもらいたい側(今回の場合はフジテレビ)による主導で開かれて、ルールも会見を開く側が決められます。

休憩をはさんでもよいし、弁護士の助言を受けてもよい。ただし、会見をどう評価するかは、見ている人たちや聞いている人たちに委ねられます。

1回目(17日)の会見があまりに都合よくコントロールされたものであったため、フジテレビが批判を受けたのは事実です。だからといって、2回目の会見は外部から強制されたものではなく、フジテレビが自主的に行いました」(杉山弁護士

また、フジテレビ側に同情を誘う「ダメージコントロール」の意図があったのではないかという指摘にも、疑問を感じるという。

「1回目で批判を受けたから2回目は制限のない会見を開いたというだけであり、そこまで戦略的意図があったとも思えません。

記者会見を経て、フジテレビへの批判が和らいだわけでもなく、『スポンサー離れ』という実害は続いています。

また、厳しく質問する記者に対して視聴者の風当たりが強いのは、いまに始まったことではありません。そして、フジテレビは、記者と人気勝負をしているわけではないのです」(杉山弁護士

世間は記者たちの言葉をどう受け止めたか

フジテレビ側の意図はともかく、会見の結果、経営陣に対する同情の声が上がったことは否めない。

杉山弁護士は「この手の同情リアクションが生まれるのは、日本において『あるある』だと思いました」と所感を述べる。

「情報とは、受け手によって怠惰に消費されがちなものです。

多くの人は、情報が発信される場面を『瞬間』としてしか捉えません。強い言葉が使われる理由を考え、その背景を丁寧に確認するような真面目な人は、少数です」(杉山弁護士

また、記者会見でも見られたような強い言葉や批判を見聞きした時には、働いている職場でクレームを受けた場合など、自分が批判されているかのような連想をする人が多いという。

「自分が言われたくない言葉」「自分が出会いたくない場面」と受け止めて、嫌悪感や忌避感を抱く一方で、なぜ強い批判がなされているのかは考えない、ということだ。

「こういったリアクションは、確かに存在すると思っています。民主主義国家の主権者として、あまりに甘ったれた思考なのですが…」(杉山弁護士

一方で、優しく丁寧な対応が、世間から評価されるとも限らない。強い言葉でウソやデタラメを述べる相手のことを、何も考えずに「正しそうだ」と信じる人は一定数いる。さらに、優しく丁寧に応じている相手に対し、「この人には攻撃しても反撃されなさそうだ」と考える人もいるという。

杉山弁護士は、フジテレビが行った2回目の記者会見について「別に成功していない」と総括する。

「記者への批判なんて、ネットで瞬間的に消費される、どうでもいい要素でしかないんじゃないでしょうか。たぶん、数日後にはみんな忘れていますよ」(杉山弁護士