スマホながら運転で事故率が約2.4倍に!?

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クルマを運転しながらスマホを操作したり、電話で話したりする、「ながら運転」。道路交通法の取り締まり対象になる違反行為ですが、ついついやってしまっている人が多いのではないでしょうか。

筆者もドライブに行った時に、制限時速60km/hのバイパス道路で30km/hほどで走る車両に遭遇しました。追い越しをかける時に運転席を見てみると、なんとドライバーがスマホを操作していたためにスロー運転となっていたのです。

令和4年の携帯電話使用などにかかわる交通事故は、1,424件発生しています。そのうち、携帯電話の画像目的使用に起因する交通事故が700件と最も多く、次いでカーナビなどの注視が666件でした。ちなみに、携帯電話を使用した場合は、しなかった場合の約2.4倍も発生率が高くなることが分かりました。

「ながら運転は危険」と言われる根拠とは

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ここで、ながら運転が危険である理由を考えてみましょう。時速60km/hで2秒間走った場合、ルマは約33.3mも進むといいます。

この2秒の間にスマートフォンを操作したり、別のことに気を取られて操作がおろそかになっていたら、どうでしょうか?

スマホやカーナビなど、目の前の画面に集中してしまうと、車外の上下左右に視線を配ることができなくなってしまうでしょう。

研究によれば、ドライバーが2秒以上のながら運転をした場合、危険を自覚する状態になりがちなことが分かりました。またJAFのテストによると、メール操作やスマホゲームをしたりした場合、発進の遅れや速度低下のみならず、横からの歩行者などの飛び出しに対して対応できないことが多いという結果が出ています。

「ハンズフリー通話なら違反じゃないし」が危険なワケ

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このように、ながら運転の問題点というのはドライバーが自車の状態を客観的に把握できないことにあります。運転以外のことに注力することで、クルマの状態に空白が生まれるからです。

さらに、ながら運転の危険はこれだけに留まりません。道交法での違反にはなりませんが、ハンズフリー装置を使った通話においても危険が伴うとJAFは警告しています。

通話に気を取られることで、ウインカー操作の遅れや出し忘れ、信号の見落とし、停止の遅れといった事象が多く発生することがテストによってわかったのです。

つまり、ハンズフリーフォンであれば安全であるという認識には誤解があるということです。

令和3年以降、“運転中スマホ”の取締りは増加傾向

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令和元年12月に警察庁は、ながら運転に対しての罰則を強化。その結果、令和2年度は携帯電話使用の取り締まり件数が前年比-56.9%と大幅に減少しましたが、令和3年以降は再び増加傾向にあります。令和4年の総取り締まり件数の約5%が、運転中の携帯電話使用の違反となっているのです。

今後、さらに罰則が強化される可能性もありますが、事故減少につながるかは疑問です。何よりもドライバーがながら運転をしないことこそが、一番の対策と言えるでしょう。

また、ながら運転のほか、大音量での音楽再生、イヤホンの使用など、やはり道交法の違反対象となっているこれらの行為も、周囲の状況の判断を鈍らせる原因となります。

運転中の車内は貴重なプライベート空間とも言えますが、クルマはシビアな環境の中を常に動いていることは認識しておきたいものです。