カタールW杯、不健全な煽りに走る日本のメディア。格下だからこその冷静な視点を
カタールW杯のグループリーグ(E組)をドイツ、コスタリカ、スペインの順で対戦する日本。この組を勝ち抜き、ベスト16に進むためには……という話をするとき、「初戦必勝」は最もスタンダードな見解になる。
強豪ドイツとの初戦を、まさに決戦と見なし、彼らをどうしたら慌てさせることができるかと、その作戦を必死で考えることが日本に課せられた大きな使命になる。この原稿は、そのドイツ戦を前に書いているのだが、伸るか反るかの大一番が直前に迫っている自覚に欠ける意見を、ここに来て頻繁に見聞きする。
「ドイツ戦は引き分けでもオッケー」はその代表的な意見になる。ドイツに引き分け、コスタリカに勝利することができれば、スペインに敗れても1勝1敗1分けだ。勝ち点4なら可能性はあるとする意見である。勝ち点4の場合、他のチームと並ぶ可能性が高く、その場合は得失点差に委ねられることになるが、そんな運を天に任せるような話をするのは、その時になってからで十分だとは、筆者の見解だ。
そもそも日本はドイツに対して格下だ。「引き分けでもオッケー」とは格下がいうべき言葉ではない。ドイツが万が一日本に引き分けてもオッケーだと言うのなら、話の筋として通るが、その逆になると日本は何様だという話になる。狙って引き分けができるなら弱者ではない。言葉尻を捉えているわけではない。常識的な話をしているまでだ。
日本は行けるぞと、煽ろうとする人たちの存在を否定するつもりはないが、どうせ煽るなら、道理に則したスマートな方法で行って欲しい。
格好悪いなと思った煽り方をもう一つ挙げるならば、それは某地上波の民放のニュース番組で報じられた、W杯の優勝予想オッズの話題だった。「日本の倍率は35倍で、全体の13番目です」と、男性アナウンサーは伝えたのだ。盛り上げたくて仕方ないという感じで。
開いた口が塞がらなかった。平衡感覚はあるのか。報道に携わるものとして、犯してはいけない反則行為だと指摘したくなった。男性アナ氏が引き合いに出したのは、日本在住者向けに販売されているサッカーくじ(toto)だった。その倍率はまさに国内基準であって世界基準ではない。日本のくじは日本に甘く倍率を付けることで知られている。その購買意欲を煽ろうとしたとき、日本の人気を下げることは(オッズを上げることは)、購買意欲の低下を招くと考えたのだろう。
その差は、世界最王手である英国のブックメーカー各社の予想と比較すれば一目瞭然となる。その一つであるウィリアムヒル社の大会前の見解は次の通りだった。
日本は韓国、カタール、カメルーンと並び21位タイ。オッズは251倍だった。他社の予想でも日本は同様に扱われていた。
35倍と251倍対13番手と21番手タイ。カタールW杯の日本の活躍を占おうとしたとき、この差に着目せず日本のtotoの見解を、さも客観的な予想のように一方的に報じる日本の某民放テレビ局。信用するわけにはいかない。不健全な煽りの手口を見た気がする。
英国のブックマーカーも筆者の見立てに寄れば、地元英国勢に少しばかり甘い気がする。
1)ブラジル5倍、2)アルゼンチン6.5倍、3)フランス7.5倍、4)イングランド8倍、5)スペイン9倍、6)ドイツ11倍、7)ポルトガル13倍、8)オランダ15倍、9)ベルギー17倍、10)デンマーク29倍
これは、大会直前にウィリアムヒル社が下した予想だが、イングランド(4位・8倍)をスペイン、ドイツより上だと評価する見解に、自国のよしみを感じるが、日本のtotoに比べれば、まさに100倍抑制的かつ平衡感覚に優れている。
日本代表にイングランド代表と同じような力量があったなら日本のtotoは、スペイン、ドイツのみならず、ブラジル、アルゼンチン、フランスらを抑え、優勝候補の筆頭に挙げているだろう。先述の民放テレビ局に限らず、日本のメディアも同じような歩調を取り、いまごろイングランドの何倍も大騒ぎしているに違いない。
意気地があるメディアなら、日本のtotoの姿勢について、問題提起するのが本来の姿勢ではないか。
これでも筆者はサッカーにおける客観性をとことん追求しているつもりだ。英国ブックメーカー各社の予想はそれを手助けする役割を果たしている。いかなるメディアの予想より客観的だと信頼を寄せている。その常識が日本のtotoには通用しない。客観を貫こうとする意気地がない。これでは権威や信頼感は失われる。それにそのまま乗っかり、前景気を煽ろうとするテレビ局、アナウンサーしかり。スポーツ文化の底の浅さを見せられた気がする。困った話である。
強豪ドイツとの初戦を、まさに決戦と見なし、彼らをどうしたら慌てさせることができるかと、その作戦を必死で考えることが日本に課せられた大きな使命になる。この原稿は、そのドイツ戦を前に書いているのだが、伸るか反るかの大一番が直前に迫っている自覚に欠ける意見を、ここに来て頻繁に見聞きする。
そもそも日本はドイツに対して格下だ。「引き分けでもオッケー」とは格下がいうべき言葉ではない。ドイツが万が一日本に引き分けてもオッケーだと言うのなら、話の筋として通るが、その逆になると日本は何様だという話になる。狙って引き分けができるなら弱者ではない。言葉尻を捉えているわけではない。常識的な話をしているまでだ。
日本は行けるぞと、煽ろうとする人たちの存在を否定するつもりはないが、どうせ煽るなら、道理に則したスマートな方法で行って欲しい。
格好悪いなと思った煽り方をもう一つ挙げるならば、それは某地上波の民放のニュース番組で報じられた、W杯の優勝予想オッズの話題だった。「日本の倍率は35倍で、全体の13番目です」と、男性アナウンサーは伝えたのだ。盛り上げたくて仕方ないという感じで。
開いた口が塞がらなかった。平衡感覚はあるのか。報道に携わるものとして、犯してはいけない反則行為だと指摘したくなった。男性アナ氏が引き合いに出したのは、日本在住者向けに販売されているサッカーくじ(toto)だった。その倍率はまさに国内基準であって世界基準ではない。日本のくじは日本に甘く倍率を付けることで知られている。その購買意欲を煽ろうとしたとき、日本の人気を下げることは(オッズを上げることは)、購買意欲の低下を招くと考えたのだろう。
その差は、世界最王手である英国のブックメーカー各社の予想と比較すれば一目瞭然となる。その一つであるウィリアムヒル社の大会前の見解は次の通りだった。
日本は韓国、カタール、カメルーンと並び21位タイ。オッズは251倍だった。他社の予想でも日本は同様に扱われていた。
35倍と251倍対13番手と21番手タイ。カタールW杯の日本の活躍を占おうとしたとき、この差に着目せず日本のtotoの見解を、さも客観的な予想のように一方的に報じる日本の某民放テレビ局。信用するわけにはいかない。不健全な煽りの手口を見た気がする。
英国のブックマーカーも筆者の見立てに寄れば、地元英国勢に少しばかり甘い気がする。
1)ブラジル5倍、2)アルゼンチン6.5倍、3)フランス7.5倍、4)イングランド8倍、5)スペイン9倍、6)ドイツ11倍、7)ポルトガル13倍、8)オランダ15倍、9)ベルギー17倍、10)デンマーク29倍
これは、大会直前にウィリアムヒル社が下した予想だが、イングランド(4位・8倍)をスペイン、ドイツより上だと評価する見解に、自国のよしみを感じるが、日本のtotoに比べれば、まさに100倍抑制的かつ平衡感覚に優れている。
日本代表にイングランド代表と同じような力量があったなら日本のtotoは、スペイン、ドイツのみならず、ブラジル、アルゼンチン、フランスらを抑え、優勝候補の筆頭に挙げているだろう。先述の民放テレビ局に限らず、日本のメディアも同じような歩調を取り、いまごろイングランドの何倍も大騒ぎしているに違いない。
意気地があるメディアなら、日本のtotoの姿勢について、問題提起するのが本来の姿勢ではないか。
これでも筆者はサッカーにおける客観性をとことん追求しているつもりだ。英国ブックメーカー各社の予想はそれを手助けする役割を果たしている。いかなるメディアの予想より客観的だと信頼を寄せている。その常識が日本のtotoには通用しない。客観を貫こうとする意気地がない。これでは権威や信頼感は失われる。それにそのまま乗っかり、前景気を煽ろうとするテレビ局、アナウンサーしかり。スポーツ文化の底の浅さを見せられた気がする。困った話である。
外部サイト
関連情報(BiZ PAGE+)
スポーツライター杉山茂樹氏の本音コラム。