史上最小146cmでプロテスト合格、大須賀望の秘話 救世主は娘を亡くしたプロゴルファー
3.08%の難関を突破した選手の声 山下美夢有と同学年の20歳が語る歩み
国内女子ゴルフツアーが活況を呈する中、今年も8月から日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)プロテストが実施された。今月1〜4日には、茨城・大洗GCで最終プロテストが行われ、18位タイまでの計20人が合格者となった。1次予選からの総受験者数は、計649人で3.08%の超難関。突破に至るまでには、それぞれのドラマがある。身長146センチの大須賀望(おおすが・のぞみ)は、4度目の受験で突破。史上最も背が低い合格者は、娘を亡くしたプロゴルファーとの出会いで成長していた。(取材・文=THE ANSWER編集部・柳田 通斉)
大須賀は10位で合格した。通算2アンダー。カットラインを5打上回り、余裕を持った難関突破だった。1次予選、2次予選はともに2位で通過。茨城・大洗GCでの最終プロテストも、初日2位、第2日1位、第3日10位からの流れだった。
「最終日にハーフチェックがあり、私たちより前の組にいた選手の多くがスコアを伸ばせていなかったので、同組の4人で『合格、いけるね』と話していました。私は11番から3連続ボギーを打ちましたが、焦りはなく、法政大の森彩乃さんに大学生活の話を聞いたりしていました」
4度目の受験で合格。うれしさはこみ上げたが、涙は出なかった。コースの駐車場で待っていた両親にも笑顔で報告し、「おめでとう」「ありがとう」と喜び合った。そして、父の運転でゴルフ練習場のパーシモンGC(茨城・那珂市)へと向かった。内田政美支配人とスタッフに報告するためだった。
「中に入ると、サプライズでくす玉が割られ、女性社員の方が泣きながら花束をくださいました。『私の合格をこんなにも喜んでくださるなんて』と思い、私も泣きました」
内田さんからは、「本当におめでとう」と声を掛けられた。そして、大須賀は「内田さんと出会い、教えていただいたおかげで合格できました」と心からの感謝を伝えた。
出会いは受験前に訪れた練習場「私が娘さんに似ていて」
出会いは、昨年6月だった。コロナ禍で延期実施の20年度最終プロテスト(茨城・静ヒルズCC)に向け、大須賀は地元宮城県大和町から現地入りしていた。自身にとって2度目の受験。練習のために入ったパーシモンGCで、内田さんから声を掛けられたという。
「他にも選手は大勢いたのに、私にだけだったみたいです。これは後から私の母から聞いた話ですが、内田さんにはプロテスト受験を前に亡くなられた娘さんがいて、私が背格好も含めて娘さんと似ていたそうなんです」
内田さんは、PGA(日本プロゴルフ協会)会員で日本プロゴルフ選手権などに出場している。祖父は「100歳の現役プロゴルファー」として知られた棟氏、父は初代シニア賞金王で「飛ばし屋ケサゴン」と呼ばれた袈裟彦氏。文字通り、「プロゴルファー一家3代目」で、愛娘が「4代目」になることを楽しみにしていた。
そんな事情は知らず、人懐っこい大須賀は内田さんと親しくなった。だが、アドバイスを受けることはなく、2度目の受験は、カットラインに5打差で不合格。昨秋、3度目の受験が2次予選不通過で終えた報告を内田さんに入れると、「スイング動画を送ってください」と言われたという。
「送ったら、『前と全然違う。何があったの。すぐに修正した方がいい』と言われました。実際、私はすごく不調だったので、時間を置かずに内田さんの指導を受けにいきました」
大須賀は4歳から父と一緒にゴルフを始め、二人三脚で歩んできた。東北高卒業後、宮城・利府GCの研修生になってからは、コーチを付けずに練習をしてきた。しかし、3度目の受験を前に第三者から、「これまでと違ったスイングの情報を聞いた」ことで迷走したという。内田さんは動画を見ただけでそれを感じ取り、手を差し伸べてくれた。
スイング修正、教わった練習法で成長「普通にやれば通る」
「内田さんは私のスイングを元に戻してくれただけでなく、練習法も教えてくださいました。例えば、右腰にクラブを立てかけたままボールを打つ方法です。これでコンパクトに振り、方向性を安定させることができました」
アプローチは得意で、高校時代に練習を見てもらった中嶋常幸から、「かなり上手い」と称賛された程だ。だが、パットは苦手だった。それも、内田さんに教わった練習法で改善できたという。
「ボールの手前に100円玉を置いて、それにヘッドが触れないように打つ方法です。これによってヘッドの下側でボールをヒットできるので、きれいな順回転になって、ラインにも乗りやすくなりました」
ドライバー平均飛距離は230ヤード。ショット、アプローチ、パットがそろい、大須賀のスコアは安定してきた。昨年12月に初参加したDSPE(ツアープロを目指す女子ゴルファーを支援する団体)の月例会で2位。ミニツアーでも上位を重ね、今年6月放送のBS日テレ「ゴルフサバイバル」では初出場初優勝を飾り、解説の服部道子に「小さいのに体幹がしっかりしてよく飛ぶし、総合力が高い」と言わしめている。
そして、テストが始まる前は、内田さんからは「普通にやれば通る力がある。特に1次は、コースをお散歩する感覚でいいよ」と言われ、送り出されていた。
「高3から受験をしてきて、親とも『大学に進んでいたと考えて、4年生までの計5度』と話していました。内田さんに教わらなかったら、来年もどうだったか……。そう考えると、内田さんは私の救世主ですし、これからもお世話になりたいと思っています」
2001年度生まれの新世紀世代。同学年の山下美夢有は、中学時代からの友人で、中嶋による個別合宿にも一緒に参加している。そして、大須賀の合格を知ると、「おめでとう」とメッセージを送信。1週間後、ツアー史上最年少で「年間女王」となった。
小さくても230ヤード…女王の山下を手本に「優勝争いを」
「本当にすごいです。あの頃、一緒にいたのに『どうして〜』という感じです(笑)。でも、私もやっとスタートラインに立てました。(150センチの)美夢有や西村優菜さんが、『小さくても、トップで戦える』ことを証明してくれましたし、私もそこを目指したいです。空手をやっていたので体幹の強さ、トレーニングで鍛えた下半身の強さには自信があります」
来季の出場権を懸けたツアー予選会(QT)は、1次が今月22日から3地区で開催され、各地区の上位20人が、29日からの最終QTに進出する。さらにプロテスト1位通過者、今季シードで来季シード落ちの選手、メルセデス・ランキング(MR)51位〜70位、今季ステップ・アップ・ツアー優勝者らも含めて約100人が出場し、上位40人程度が来季ツアー前半戦に出場しやすい状況となる。
プロテストに合格しても、さらなる難関突破を求められるのがこの世界。それを分かっている大須賀は「QTで出場権をつかんで、ルーキーイヤーから優勝争いをしていきたいです」と言葉に力を込めた。小さな根性娘は、これからも内田さんの指導を受けつつ、山下の背中を追っていく。
■大須賀望(おおすが・のぞみ)
2002年2月1日、宮城県大和町生まれ。東北高卒。父が仕事で必要になったゴルフを始めた影響で、4歳からクラブを握る。ジュニア時代の実績は、18年、19年の東北女子アマチュア選手権4位など。宮城・利府GC開催の国内ツアー・ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンには、19年大会、21年大会に出場して予選落ち。その後、アマチュア資格を放棄し、プロ活動をしながらテスト合格を目指してきた。ドライバー平均飛距離230ヤード。目標のプロは、宮里藍、西村優菜。他のスポーツ歴は空手、水泳。家族は両親、小3の弟。146センチ、52キロ。血液型A。
(THE ANSWER編集部・柳田 通斉 / Michinari Yanagida)
