飲酒した際の酔いやすさは人によって異なり、中には大量に飲酒しても意識がハッキリした状態が続く人もいます。そんなアルコール耐性の高い人の体内メカニズムを、自己免疫疾患やアルツハイマー病の治療薬開発に取り組んでいるトレバー・クレー氏が解説しています。

A lesser known mechanism for alcohol tolerance - Trevor Klee

https://trevorklee.com/a-lesser-known-mechanism-for-alcohol-tolerance/

アルコール耐性が高い人には「アルコールを大量に摂取しても血中アルコール濃度が高まらない」「血中アルコール濃度が高くなっても身体機能に影響が出ない」という2つの特徴があり、これらの特徴には「アルコールを日常的に摂取する人は肝臓が肥大しており、通常の肝臓を持つ人より大量のアルコールを処理できる」「アルコールを日常的に摂取する人はアルコールに対して心理的に適応している」」といった説明が付くのが一般的です。クレー氏は「これらの説明は正しいですが、全てではありません」と指摘し、あまり広く知られていないアルコール耐性を高める要因について解説しています。

一般的に、血中アルコール濃度が0.4%を超えると人は意識障害が生じるとされています。しかし、アルコールを日常的に摂取している人の中には、血中アルコール濃度が1%を超えても自動車の運転をするのに十分な意識レベルを保てる人が存在することが報告されています。クレー氏によると、1%を超える血中アルコール濃度でも高い意識レベルを保てることは、「肝臓の肥大」だけでは説明できないとのこと。そのため、クレー氏はアルコール耐性が高い人の脳細胞がアルコールに耐性を持つように変化していると主張しています。



アルコール耐性が高い人の脳細胞ではカリウム濃度を調節するカリウムチャネルの一種である「BKチャネル」のβサブユニットと呼ばれる部位に変化が生じていることが過去の研究によって示されています。通常の人がアルコールを摂取すると脳と体をつなぐ役割を果たしている「NMDA受容体」の働きが弱まって意識レベルが低下しますが、BKチャネルに変化が生じた人ではNMDA受容体の働きに影響が及ばないとのこと。これによって、日常的にアルコールを摂取する人の一部は、血中アルコール濃度が高まっても意識を保てるようになるとクレー氏は主張しています。

クレー氏は、BKチャネルのβサブユニットに変化を与える遺伝子を特定することで、アルコール耐性の発達を遅らせたり止めたりすることができるようになると締めくくっています。