松本穂香、小関裕太 撮影:奥田耕平

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新型コロナウィルス(COVID-19)の影響で、苦境に立たされるクリエイター、制作者、俳優を支援する映画製作プロジェクト『DIVOC-12』。

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12人の監督が計12作品をオムニバス形式で描くという、挑戦的かつ心躍るこの作品群が、2021年10月1日より全国公開中。

ここでは、閉館間際のミニシアターを訪れた中学生カケルが、女性スタッフ・ユメミから波乱万丈の人生を聞かされる、『ユメミの半生』(上田慎一郎監督)に出演の松本穂香、小関裕太に話を聞いた。

コロナ禍での撮影を経て「公開できるだけでありがたい!」

──コロナ禍での映画製作プロジェクトの作品ということで、普段の撮影とは心持ちが違いましたか?

松本穂香(以下、松本) 正直、撮影しているときはいつもと変わらず。特別な気持ちを持っていたということはありませんでした。ただ、今は撮影時からだいぶ状況が変わったので、そんな中で作品公開ができることがありがたいです。

まだこの先どうなるか分からない、コロナの終わりが見えない状況ですが、少しでも多くの人に見ていただけたらいいですね。また、見ている間は明るい気分になれる映画なので、深く重くとらえず、純粋に楽しんでいただきたいです。

小関裕太(以下、小関) 僕は家にこもっているときに、何らかの作品に俳優として関わりたいとか、物づくりをしたいとか、色々とずっともどかしかったんです。なのでそのタイミングで同じ思いを抱えた方々と、今回のプロジェクトに参加させてもらい、撮影中はとても嬉しかったです。

──芸能界では特にお仕事がお休みになることが多かったですし、関係者は不安だったり悔しかったりの時間もあったでしょうから、喜びもひとしおだったんですね。

小関 この映画を通して、収益が次につながるとか、撮影環境をよりよい方向にするためにお金が流れていくとか、物理的に未来が切り開かれていくということを強く意識しました。また、感覚的に僕個人がこれを目指したいとか、真似したいとかという勉強になった部分も多く、勇気ももらいました。色んな方向に、映画のエネルギーが流れていくプロジェクトですね。

──小関さん自身が今まで我慢していた分、やる気が爆発した、意識が向上した、そしていつも以上に学びも増えた、ということでしょうか。

小関 監督が舞台挨拶で言った言葉を借りると、「渇望してたのかな」って思います。乾いた心や体に、やる気がみなぎって参加したのが『DIVOC-12』。

今までだって、役をいただくということは簡単ではなかったんですけど、1つの作品が終わったら次の作品をいただいて、その場で腕を伸ばして羽を伸ばしてやるっていうのが当たり前になっていました。それが当たり前じゃなくなってしまった今、何か1つ違うベクトルをこのプロジェクトで得たかなと思います。

アクションシーンで身体はバキバキ、ぜひ映画館でご確認を

──『ユメミの半生』はエンターティンメントとしてとても楽しく、普段のお2人とはまた違った魅力が発揮されていると感じました。

松本 ありがとうございます。作品自体は3日間くらいで撮らせてもらったんですが、アクションを含めあんなに色んな経験を1つの作品でさせてもらったのは、初めてでした。短い時間で七変化できて、大きく成長できたかもと思いました。

──アクションシーンはいかがでした?

松本 衣装合わせの日にアクション指導みたいなものがあって、練習もしていたのですが、撮影最終日は身体がバキバキに。普段の運動不足がたたったんでしょうね。でもちょっと頑張りました!

小関 撮影初日に「筋肉痛だ〜」って言ってたの覚える。

松本 そう多分、初日に一緒にアクションを撮ったんだよね。

──普段の演技とは、また違ったやり甲斐がありそうですね。

松本 「とにかくやってみよう」という意気込みは持っていました。できるか分からないけど、取り敢えず練習したし!みたいな。勢いとも言いますが。

──普段はあまり運動をされないんですね。

松本 そうですね、私は文系というか文化系で生きてきました(笑)

──小関さんはいかがでした?

小関 感触で言うと、役者としてと言うよりは、この脚本についてになるんですが……。現在、ミニシアターが閉じていくっていうニュースが、少しずつ増えてきているというのが日本の状況です。

僕はミニシアターが好きだし、自分が関わった作品が流れたこともあって、その感動があるからこそ思い入れも人一倍あります。ミニシアターに行ったことがないという方も多いかもしれないですが、独自の魅力があると信じています。

──個性豊かなミニシアターで出会った作品に、予想もしないような感動をもらった経験、映画ファンならきっとあります。

小関 でも今なんて大きな映画館すら行くことが難しく、今の10代や小さな子供たちはより映画館で映画を見る経験が乏しくなっています。

そんな中で、なくなりつつあるミニシアターを守るために、技術を作ろうというのが『DIVOC-12』のテーマなので、これを見て「映画館って素敵なものなんだ」「久々に行きたい、行ってみたいな」なんて感想を、見た人が持ってくれたらいいなと願っています。

幸せな映画館の思い出は一生もの、得た経験は宝ものに

──お2人は初めて映画館で見た作品を、覚えていらっしゃいますか?

松本 私は正直あまり記憶がないんですけど、幼稚園の時に『とっとこハム太郎』を見たのが最初かな?

小関 似合う、イメージできる(笑)。世代も同じだし。

松本 多分、入り口はそんな感じです。あと小関くんが「新聞の販売所から映画の招待券をもらった」と言っていたんですが、私も小さいとき映画招待券をもらって、親と見に行った記憶があります。

小関 舞台挨拶で、クーポンのような映画の無料招待券を新聞販売所からもらったというのを、話したんです。僕はそれで幼稚園のときに『ハリーポッター』を見ました。割と鮮明な記憶で、それが多分初めて映画館で見た映画です。

──初めて行った映画館自体は覚えていますか?

松本 本当に正直言うと、映画館はぜんぜん覚えていないんです。ただパンフレット買ってもらって嬉しかった、帰り道は映画の余韻を感じていたなどの、楽しかった記憶はあります。映画を見るって、ちょっとワクワクする特別な出来事でした。

──映画を見たあとの、感情が揺さぶられたあとの満足感。わかります。

小関 エンディングロールが終わった後に、なんかスンッて終わるじゃないですか。そのスンッの後にパッと暖色の明かりがつくと、大体みんな無言で立ちますよね? 僕、あの瞬間が何とも言えず好きなんです。

──まさに後味が残った瞬間と言いますか。

小関 あの空間では、誰も感想を話さないですよね。「面白かったね」とか言わなくて、出口そばでポップコーンの空き箱なんかを捨てた後に、「感動したね」「面白かったね、次どうする?」とか言うんですけど……あのスンッ、からのみんなでコトコトコトコトって席を立つ瞬間が、映画館らしいな〜って。

松本 息だけ漏れる感じ?

小関 そうそう。「はぁ〜」ってみんなするでしょ、やっぱり気を張ってたんだなあと思うし、面白いなとも思う。

──確かにあそこまでが映画を見る醍醐味かもしれない。

小関 映画、映画館に限らないんですけど、作品を見終わった後って1つ人生経験が増えて、見る前より一歩踏み出せるってことがある気がします。人生観すら変わる可能性があるし。みんなで一斉に経験が1つ増えたっていう瞬間が魅力的に見えるし、面白いです。

今だからこそ大切にしたいこと、そしてユメミ俳優の夢見は?

──コロナ禍において、出来ないことが増え、みんなで共有すること・ものも減ってしまいました。それでもお2人が失くしたくないもの、大切にしていることがあれば教えてください。

松本 たくさんあるんですが、まず出会った人たちのことは、ずっと大切にしていきたいです。すごく漠然としていますが、ご縁みたいなものはおろそかにしたくないです。お芝居をしていくうえでも、重要だと思っています。

──人と人とのつながりですね。

松本 小関くんともそうですが、やっぱり1回つながったものは、大切にしないといけないなと。

小関 ちょっと上手く当てはまる言葉が見つからないんですが、僕は、敢えて言うなら緊張感かな。最終的には、お芝居をするのも、人とこうして対面で話すのも、脱力をしていきたいんですけど、なあなあにやるっていう脱力は嫌ですね。芯みたいなものは失いたくないです。

──肩の力を抜く、ということでしょうか。

小関 うーん、もともとガチガチに頑張ってしまう方で、それを何とか崩してきたんですが、崩しすぎて伝わらないこともあって。塩梅ってすごい難しいです。最近は脱力ばっかりしつつも、緊張感を完全になくしたくはないなと思います。

──バランスが大事ですね。ただ大人になるにしたがって。難しいかもしれない。

小関 人に寄りますね。大人になればなるほど、責任感も出て緊張する人もいれば、慣れていって脱力して仕切る人もいる。大事な過程を諦めて何もやらない人もいる……自分は、信じているものは失くしたくないなって思います。

──それでは最後の質問です。お2人、夢って見ますか?

小関 僕、最近は追われる夢ばっかみます。悪魔みたいな人にいっつも殺されそうになる。

松本 えー、大変そう……。私も変な夢みるなあ。二股かけられる夢とか。

小関 悪い夢じゃん!

松本 この前は夢の中で、ウォンバットみたいな、ネズミみたいな動物に襲われそうになりました(笑)。

──お2人とも、意外と夢見が悪い(笑)。その分、現実ではキラキラ輝いて素敵な作品を作っているから、プラマイゼロでしょうか? ありがとうございました!

映画『DIVOC-12』は公開中。

ヘアメイク/倉田明美(THYMON Inc.)(松本穂香)、佐々木麻里子(小関裕太)、スタイリング/李靖華(松本穂香)、吉本知嗣(小関裕太)