『ウマ娘 プリティーダービー』公式ポータルサイトより

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 ゲームアプリ『ウマ娘 プリティーダービー』が、コアなゲームファン層の間で新たな「覇権ジャンル(もっとも人気を獲得した作品を指すネットスラング)」に君臨した。2月24日の配信開始から、わずか6日で100万ダウンロードを達成し、「App Store」のセールスランキングでもトップを独走。当初の配信予定から約2年間の延期を経て、一時は開発中止の噂もささやかれたものの、これまでの遅れを取り戻すかのような快進撃を続けている。

 Cygamesが提供する同ゲームは、オグリキャップやメジロマックイーン、サイレンススズカといった往年の名競走馬の名前を冠する美少女キャラクターを馬の代わりに見立て、プレイヤーと二人三脚でレースに挑む育成シミュレーションゲームだ。キャラクターデザインや、劇中のエピソードは、モチーフとなった競走馬を巧みにアレンジしたもので、競馬好きほどニヤリとできる。

 特に人気を集めているキャラクターが、ゴールドシップだ。「レースに勝利するとトレーナーにドロップキックをくらわせる」などの自由な言動が人気になるのにともない、元ネタである馬の破天荒さにも再び注目が集まっている。また、ゴールドシップを担当した今浪隆利厩務員が『ウマ娘 プリティーダービー』をプレイし、〈本物のゴルシよりむずかしい〉などと感想をツイートしたことも話題になった。

『けいおん!』がバンドブーム、『ゆるキャン△』がキャンプブームを巻き起こしたように、今後は『ウマ娘』をきっかけに競馬場に足を運ぶ若者が増えそうだ。若者の競馬離れが叫ばれているだけに、『ウマ娘』は業界の救世主となるかもしれない。同作をめぐってはアニメ版などゲーム以外のメディア展開も好評だ。

 また、引退馬支援の分野でも『ウマ娘』にかけられる期待は大きい。実は、毎年約7000頭もの競走馬が生産され、約5000頭もの競走馬が引退する中で、平穏な余生をおくることのできる馬の数はわずかだ。種牡馬や繁殖牝馬になれるのは、需要の高いごく一部のサラブレッドだけで、しかもレースで実績を残したからといって、その産駒も優れているとは限らない。繁殖は繁殖で厳しい世界なのだ。

 となると、受け入れ先となる牧場や乗馬クラブなどの施設が圧倒的に足りない。馬は体が大きく、食費などの維持費もかさむ。そのため、人間のために懸命に走ったにもかかわらず、引退後は殺処分されてしまう馬も少なくない。

 そんな現状を踏まえ、『ウマ娘』プロジェクトは、アニメ版の売り上げの一部を引退馬支援に関わる団体に寄付している。さらに自発的に引退馬支援に乗り出す『ウマ娘』ファンもいるようだ。認定NPO法人「引退馬協会」のスタッフはこう語る。

「『ウマ娘』をきっかけに引退馬に対しての関心が高まり、多くの方が入会してくださったり、ご寄付をお寄せくださったりしています。『ウマ娘』でも活躍しているナイスネイチャ、メイショウドトウ、タイキシャトルは、引退馬協会の所有馬として、ハルウララは、当会が対外支援活動として運営サポートを行っている『春うららの会』の所有馬として今も元気に暮らしています。馬たちはご寄付や協会の会員様の会費等を原資として余生を過ごしています。協力していただいている皆さまには大変感謝しております」

 大きなレースを勝った馬でも、誰にも知られないうちにいなくなってしまう。そういうケースがあるのも現実だ。

「馬たちの命運はひとえに人間に左右されています。私たち引退馬協会は、そのような馬を一頭でも救いたいという思いで活動しています。

『ウマ娘』ファンの皆さま、引退馬協会のホームページやサポートホース団体のサイトで馬たちの様子を掲載していますので、ぜひご覧ください。そして、頑張った馬たちの余生を一緒に支えていただければ幸いです」(同前)

『ウマ娘』ファンの「推しキャラ」への愛が、現実の馬を救う。

◆取材・文/原田イチボ(HEW)