渋谷・代々木の「新スタジアム構想」、東京のJクラブの反応を含め整理してみた

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京都サンガF.C.の新しいホームスタジアム、サンガスタジアム by KYOCERAが話題だ。

関西では、セレッソ大阪も現在ホームの長居球技場が改修工事中。2021年3月には「桜スタジアム」となって帰ってくる予定だ。

一方関東では、首都東京、渋谷・代々木のスタジアム構想が飛び出してからしばらく経った。

候補地の代々木公園内には最近、ラグビー場が作られるという話が伝えられているが、そもそも東京都や国から「サッカースタジアムを建てる」という話が出てきたことはほとんどない。

スポーツ庁による『スタジアム・アリーナ改革』の中に「代々木公園サッカー専用スタジアム」の名前が出てくる程度である。

それにもかかわらず、なぜこれだけ話題となっているのだろうか。改めて整理してみた。

候補地(予定地)はどこ?

舞台となっているのは代々木公園、都道413号線を挟んだ南側(B地区)に位置するサッカー・ホッケー場を中心としたエリアだ。

西には「織田フィールド」の愛称で親しまれる代々木公園陸上競技場、東にはイベント広場、南にはNHKがある。

土地は国が所有しており、管理者は東京都となっている。

どんなスタジアムが検討されている?

現在は「渋谷スクランブルスタジアム」として、様々なエンターテイメントが楽しめる多目的スタジアムがイメージされている。

2019年秋にはコンセプトムービーが公開された。

イメージ画像や動画を見る限り、サッカー・ホッケー場とイベント広場を合わせた土地に建てることが想定されているようだ。

完成目標は2027年。収容人数は3〜4万人と伝えられている。

誰が推進している?

情報を主に発信しているのは一般社団法人の渋谷未来デザイン。

同団体は2018年4月に以下のような目的で設立された。

「ちがいを ちからに 変える街。渋谷区」が2017年に策定した基本構想に沿って、この度新しい形の産官学民連携組織である「一般社団法人渋谷未来デザイン」(代表理事:小泉秀樹<東京大学教授>、英語標記:Future Design Shibuya、以下:FDS)を、2018年4月2日に設立いたしました。

《代表理事》
小泉秀樹 東京大学教授(代表理事)
《理事》
佐藤仁 東京商工会議所渋谷支部会長
大西賢治 渋谷区商店会連合会会長
長澤貴淑 西武信用金庫渋谷支店長
浜田敬子 BUSINESS INSIDER JAPAN 統括編集長
金山淳吾 (一財)渋谷区観光協会理事長
須藤憲郎 事務局長
長田新子 事務局次長
《監事》
太田諭哉 日本公認会計士協会東京会渋谷会会長

渋谷未来デザイン設立のお知らせ(2018.04.25)より
http://fds.or.jp/update003/

より具体的には、渋谷に住む人、働く人、学ぶ人、訪れる人など、渋谷に集う多様な人々のアイデアや才能を、領域を越えて収集し、オープンイノベーションにより社会的課題の解決策と可能性をデザインする組織として設立された、とのことだ。

対象はもちろんスタジアムだけにとどまらない。今年度(2019年度)は、SDGs、エシカル、MaaSなどグローバルな視点での都市の将来像を踏まえ、「都市の体験デザイン」「都市の空間価値デザイン」「市民共創のデザイン」「都市のブランドデザイン」「都市間・大学連携デザイン」という5つの領域を切り口とした都市デザイン事業を行っている。

Jリーグクラブの反応は?

渋谷未来デザインは「SCRAMBLE STADIUM SHIBUYA(渋谷スクランブルスタジアム)」に関するイベントをたびたび開催。

昨年10月24日には、FC東京の大金直樹代表取締役社長、東京ヴェルディの羽生英之代表取締役社長、そしてアーセナルや名古屋グランパスの元監督として知られるアーセン・ヴェンゲル氏が参加するトークイベントも開催された。

チーム名に東京が付く両Jクラブの社長が、「新スタジアム」に関してどんなスタンスなのかは多くの人が気になるところだろう。

2人がこの時のイベントでどのような発言をしていたのかまとめてみた(※該当する発言のみ抜粋したため質問の文脈が繋がらない点はご容赦ください)。

――こういった都心部のスタジアムが実現したら、やはり夢のようなことですか?

大金(FC東京):本当に魅力的です。いつかはこんなスタジアムでFC東京もサッカーをしたいですし、応援してもらいたいなと思いますね。

羽生(東京V):ロンドンにはあんなにたくさん都心部にスタジアムがあるのに、東京には全然ないなとずっと思っています。そういう意味で言うと、都心部にサッカースタジアムがあるというのは、私たちサッカーに携わる者にとっては夢です。

――東京でもエミレーツ(※アーセナルのホーム)のようなスタジアムが生まれたら、社会連帯的な役割を担えると思いますか?

羽生:東京という街は日本中の様々なところから出てきた方が住んでいて、“一つになるもの”があるようでなかったりします。

今回のラグビーのワールドカップを見て分かる通り、スポーツの持つ精神性、チカラを改めて感じました。それこそ都市の真ん中にこういった皆さんが集まれるような場所があると、日本の文化そのものが変わっていくんじゃないかなという期待感もありますね。

――まだどんなスタジアムか分からないですが、やはりサッカー以外のものもコミュニティの連帯に繋がりますか?

大金:もちろんそうですね。サッカーやスポーツだけではなく、カルチャーの発信拠点となるのは欧州でもありますし、アメリカのスタジアムでも見てきました。東京にそんなスタジアムがあることが、今後のサッカー界、東京のためになるんじゃないかなと思います。

――渋谷区においてサッカースタジアムは街をどう元気にすると考えていますか?

大金:もちろんサッカーの試合で楽しんでいただける、応援するチームがあるというのはすごく大事だと思います。

ただ、サッカースタジアムだけではなくて、これからのスタジアムの在り方としてはやはり“儲かるスタジアム”、いわゆる収益性の高いスタジアムを作っていかないと結局「作ったはいいけどこのあとどうなんだ」となってしまいます。

よって、今回構想としてある渋谷のスタジアムにおいては、今後の日本のスタジアム・アリーナのベンチマークになるようなものになってほしいなと。地域の方々、長寿や健康の促進などを含め様々な世代の方に楽しんでもらえる施設になればいいかなと思います。

――日本では「スタジアムをコミュニティに貸す」というのはよくあることですか?

羽生:先日も台風ですごく大きな被害が各地に出ましたが、東日本大震災の時に私たちが使っている味の素スタジアムも被災された方々の避難場所になったんです。スタジアムはシャワーや厨房もあって、暮らすことができるだけのインフラが整っています。だから多くの方を受け入れることができました。

渋谷もおそらく昼間人口のほうが夜の人口よりもすごく多いと思うので、たとえば首都直下型の地震が起きた時、絶対に皆さんの役に立つと思うんです。先ほど東京の土地の値段が高いという話がありましたけど、東京都には素晴らしい公園がたくさんあります。でもそういうところでは避難場所にならないんですよね。なぜなら建物がなくて雨風を防げるところがありません。

素晴らしいスタジアムがもっと都心にあって、そこが災害の際の避難場所になるという視点もすごく大切です。

――スタジアムが街のランドマークになることについてどう思います?

羽生:ランドマークたるべき、だと思うんですよね。ただそれも、人がたくさん集まらなければランドマークにはならないので、365日、どうやって皆さんに楽しんでいただけるような場所にするか。

私たちのクラブは今年(※2019年)50周年を迎えまして、次の50年、こういうクラブになるというメッセージを出しました。それは総合型スポーツクラブになりたいという意思表示です。

サッカーだけでなく他のスポーツ、そしてスポーツ以外の、たとえばヴェルディからミュージシャンが出てもいいですし、チェスのチャンピオンが出てもいいかもしれない。そういう色々な方が“ヴェルディブランド”で出ていけばいいなと思います。

多機能スタジアムが365日使えるようなクラブになれればなぁと。そういうことをしないと隣のビッグクラブにはなかなか勝てないと思うので(笑)。

――(スタジアムの共用について)お互いのクラブの価値観を譲らないままでも、FC東京と東京ヴェルディだから「東京」をキーワードに一緒に考えるということですか?

大金:今も味の素スタジアムを一緒に使っているのでそこは変わらないかなと思います。新たに作るのであればやはり、お互いのクラブがもっと大きくなるようなスタジアムであってほしいですね。

ただ、今はまだFC東京がとか東京ヴェルディさんがというよりは、「渋谷にスタジアムを作ること」の難易度、高いハードルがあると思っているのでそこが一番重要ではないかなと思います。

――この場所にサッカー専用スタジアムが建てば“最高のスタジアム”になりますか?

羽生:サッカー専用スタジアムを作りたいんだと言うと、「それはサッカーをやっている人しか使えないでしょ?」と言われるんです。でも日本中に立派な野球場はたくさんあるわけです。野球場は野球しかできないですよね?なぜ野球は良くてサッカーはダメなのかなとまあ思うんですけど。

あとは稼働率の問題。天然芝はあまり使うと痛んでしまうから少数の人しか使えないとよく言われるのですが、ぜひ365日使ってもへこたれない芝生の開発をどなたかやっていただけるとありがたいなと(笑)。何かないですかね。芝生をクルクルクルとロール状に畳んでしまっておけるとか。

――サッカースタジアムの近未来像、自身が一番見てみたいサッカー専用スタジアムってどんな感じですか?

大金:エミレーツのようなピッチとスタンド、選手とサポーターが近い位置であることがすごく大事かなと思います。

私たちは味の素スタジアムで試合を開催していますが、どうしてもサポーター・観客からピッチは遠いです。今は映像などでカバーしていますが、選手の声やボールを蹴る音が聞こえたりすることでやはり見ている人には臨場感を与えられますし、ワクワク感が募るスタジアムが素晴らしいんじゃないかなと思います。

――サッカースタジアムは今だけでなく、50年後、100年後の姿を想像することも重要だと思います。その点において“継続性のあるスタジアム”を作るためのキーワードは何でしょう?

羽生:やっと日本にもサステナビリティ(持続可能な)という言葉が世の中に出てきたと思うんですよね。ただ、ヴェンゲルさんのハイバリーに対する愛情のように、建築物に限らずずっと持続していくことの素晴らしさは日本人もよく知っていると思います。

もし渋谷にスタジアムができるとすれば、長年にわたって人々の思いが作っていくような、人々の思いがスタジアムを変化させていくような建築物であったら素晴らしいなと思いますね。

大金:365日、毎日使える、必要とされる、行くと何かがある。人生で何年か過ごした後に「あそこに戻ると何かがあるよね」というレガシーを感じられるようなスタジアムであることが今後は必要です。

まさに“生きたスタジアム”を作っていくことがすごく大事なんじゃないかなと思います。

両者ともにクラブの代表として言葉を選びながらだったが、「新スタジアム」への思いを熱く語っていた。

なお、渋谷未来デザインは、今週17日から21日にかけて東京ヴェルディとともに渋谷でイベントを開催する。

渋谷・代々木はもちろん、東京、さらには日本各地を舞台とした「新スタジアム」の動きについては今後もいろいろお伝えしていきたい。