【磯部孝】名古屋のユニクロ「あかのれん」が大手チェーンにも負けない理由 地元愛を一身に受けて100周年

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日本の真ん中に位置する中京、東海地区で絶大な支持を集めている衣料品ディスカウントチェーンがある。その店の名は「あかのれん」。創業100周年を迎える老舗チェーン店だ。場所によってはあの「しまむら」でさえ苦戦を強いられるそうで、地元愛を一身に受けるあかのれんの強さの秘密について解説していきたい。

買い回り効果を狙った出店戦略

あまり耳にしたことのない「あかのれん」の運営母体は株式会社あかのれんと言って名古屋市に本社を置く。創業は大正8年に伊藤藤三郎が「いとう呉服店」を創業後、「あかのれん」と改名したのが始まりだ。その後、昭和25年に株式会社あかのれんを設立、小売事業を始める。

現在は売上高192億円、店舗数は86店舗(19年2月期)を数え、最多出店県は愛知県の24店舗を中心に、近畿、東海、北陸地区の2府9県に渡って展開している。

あかのれん都道府県別店舗数
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最大の強みの一つに出店戦略があげられる。それは食品スーパーとの共同出店するショッピングセンター中心の出店。岐阜の食品スーパー「バロー」を始め、京都では「フレンドマート」、大阪では「マンダイ」、静岡では「フードマーケット マム」といった地域に密着した食品スーパーと一緒と併せて出店し、買い回り効果にひと役買う形となっている。        

一方、全国に約1700店舗を有する衣料ディスカウントチェーン最大手のしまむらの出店パターンは、今でこそショッピングセンターにテナントするケースも増えているが、地方の大半の店舗はロードサイドに位置した単独出店となっている店が多い。

地方は圧倒的に車社会が進んでいるとはいえ、食料品店への来店頻度は大いに魅力的である。『カテゴリー・キラー』などと呼ばれ専門チェーン店が擁立した時代も既に30年以上も前の話。今やお手頃な価格の商品は何処に行っても遜色なく買える時代にあっては、ロードサイドに位置する単独店の集客はかえってハンディキャップとなる。

実際、大型台風や降雪などの気象現象が生ずれば、その違いが売上げの比較としててきめんに表れる。台風、降雪前に食料品や日用品を買い込んでも衣料品まで買い込む人は少ないからだ。

そうすると、地方でも働いた帰りに主婦が車で食料品を買って帰るついでに、子供服や紳士服、或いは自分の服だって買って帰るケースだってあるだろう。特に地方のショッピングセンターの得意とする利便性が際立ってくる事が考えられる。

出店場所の地域性を活かす

そこで、今回、実際に週末に現地に出向いてみた。場所は東京から一番近い出店となる静岡県の富士厚原店と富士宮店だ。

あかのれん富士宮店

富士市と富士宮市は静岡東部に位置する人口24万、12万人合わせて人口約36万人商圏である。富士市の人口は静岡市、浜松市に次いで静岡県内3位を誇る市であって以前は製紙産業で栄えた市でもある。現在でもトイレットペーパーの生産量は全国比率で31.5%と日本一を誇る。

富士駅周辺では「富士ショッピングセンター・パピー」と「イトーヨーカ堂富士店」があったが、パピーは老朽化による耐震性の問題が浮上し補強による投資効果が期待できないことから撤退。残ったヨーカドーも不採算店舗の閉店施策によって2010年に閉鎖した。

パピー跡地は富士市立中央病の移転先候補に、イトーヨーカドー跡地にはホリデースポーツクラブ富士店が入った。富士市も車社会であることから国道1号線にイオンタウンSC、ニトリと、富士IC周辺にカインズがあってあかのれんは富士IC周辺地域という要所に位置している。

B級グルメの富士宮焼きそばで知られている富士宮市は市人口こそ県内8位だが、市人口の3倍超の商圏を築いている。特に物品全体における地元購買率が83.0%と県内1位(衣料品2位、食料品4位)であり、基本的に市内で消費される傾向にある。

その理由の1つとして「イオンモール富士宮」の存在があり、富士宮市民以外に隣接する富士市や山梨県などの他商圏からの吸入率も増加傾向にあることが背景となっているようだ。JR富士宮駅に隣接する形で出店しているイオンモール富士宮に対して、あかのれん富士宮店は富士宮駅から北に約3km行った富士宮道路(国道139号)に沿った場所に出店している。

「しまむら」との類似点

企業規模に大きな開きがあるものの、出店、品揃え商品のラインナップを見ても一番似ているのはしまむらだ。

近隣に構えるしまむら富士宮北店

あかのれんの1店舗当たりの平均売場面積は350坪としまむらの平均売場面積の315坪に近い。しまむらが郊外中心に出店してきた標準店舗サイズの300坪と同レベルと考えて良いだろう。

1店舗当たりの売上高はしまむらの3.7億円/店舗に比べ2.2億円/店舗と及ばないが、局地戦ではしまむらを凌駕してしまっている店舗も存在しているようだ。地元食品スーパーのショッピングセンターに出店している店舗については立地の優位性のある店舗は強い。両社とも生活圏に近い場所を、得意としつつ実用衣料品を得意としているところに類似点がある。

ファッションの品揃えを明確な複数のライン管理しているのも特徴のひとつ。

レディスではガーリーカジュアルを担う「NOA-Clubノアクラブ」、キレイ目カジュアルの「AI-CUTEアイキュート」、ミセスは「MinaLunaミナルーナ」、レディスボトムは「FOR-ANYフォーエニー」、大きいサイズの「L.MYRIAエルミリア」、メンズでは「HALF-BEATハーフビート」といったように売場のゾーニングもこのライン毎に陳列されている。

複数の明確なラインを配置した店内

また、同店は早くからショップ内に「Alenアレン」というインショップを展開してきた歴史を持つ(※別年表参照)。恐らく、その流れだと推察するのだが、現在は「REnA」という名前のインショップタイプを加えて展開している。

これらのインショップに並んでいる商品のターゲットは、ズバリ元気なレディス後期高齢者向けの商品。明らかに他に並んでいる商品とはファッションテイストやデザインが異なる。

そして何といっても価格帯も格段に違う、例えばレディスの中綿ブルゾンが970円(税抜)、メンズのダウンジャケット1770円(税抜)に対して「REnA」のダウンジャケットは3850円(税抜)、「Alen」のデザインコートは1万8000円(税抜)といった具合に同じ空間にありながら、異なったファッションの価値観を提供しているのだ。

“宝探し”のような服選びができる

今回、あかのれん富士厚原店と富士宮店と、周辺に立地している路面タイプのファッションセンターしまむらとジーユー(旧ユニクロからの業態変化)に行ってみて感じたのは顧客年齢の違い。年齢の高い方からあかのれん、しまむら、ジーユーの順となる。あかのれんは年齢人口構成の高い部分を網羅しているといえ、高年齢者は衣料品に関する消費支出額は減少傾向にあるので一概には喜べない。

あかのれんでは、ユニクロの「ヒートテック」のように冬の暖か機能商品は「AN LIFEアンライフ」というブランドネームで展開している。この「AN LIFE」のブランドアンバサダーに女優の雛形あきこを使っていた。

雛形あきこというと、かつて土曜夜に放映されていたTV人気バラエティ番組「めちゃ×2イケてるッ!」のレギュラーメンバー。この番組が高視聴率を記録したのが1999〜2006年頃なので、今から13〜20年ほど経っている。当時20歳前後の若者であれば30代の後半から40代といったところだろうか。雛形あきこも41歳といった年齢から同世代くらいの女性達からの好感は期待できそうだ。

モデルには雛形あきこを起用

あかのれんのヘビーユーザーのもうひとつ特徴は、時間をかけてじっくりと服選びに時間をかける人が多いように見られた。店内のほとんどがスリーブアウト陳列となっているがゆえの“宝探し”というわけだ。

少し前にしまむらでも良く見受けられた現象で、当時しまむらを定期的にサーチする行動を「しまパト」(“しまむらをパトロールする”意味の略称)と呼ばれていたが、「しまパト」ならぬ「あかパト」をしている人達がヘビーユーザーとして支えているのだと思う。こうして頻繁に訪れてくれている客層にマッチさせた品揃えを、真摯に取り組めているのがあかのれんの強みだろう。

あかのれんのように、全国的にはあまり知られていない地域密着タイプの衣料品ディスカウンターはけっして少なくない。長引く日本のデフレ経済下の中に存在感を示しながら着実に健在しているのだ。