仕事がデキる人は、(たとえば営業なら)「この人から買いたい!」と、選ばれる人だといいます。

でも、一体どうすればいいのか。選ばれている人はどんなことをしているのか。

今回お話を伺ったのは、年間総指名数1万人を超えるカリスマ美容師の松本拓馬さん。

2016年7月23日に放送された『マツコ会議』(日本テレビ系)の密着取材では、松本さんに髪を切ってもらうため、全国から高校生や大学生の男子たちがお店を訪れており、SNSなどで話題になりました。

気になる。だって、髪を切ってもらうためだけに新幹線で松本さんに会いに来るって、すごくないですか?

一体、この人はなぜ選ばれるのか。その謎に迫ります!

〈聞き手=野瀬研人〉


【松本拓馬】AKROSGRAND X 代表/美容師。年間総指名数1万人を超える。超高速カット技術「ライジングカット」で注目を集め、『マツコ会議』や『人生のパイセンTV』(フジテレビ系)などメディアに多数出演。2017年9月に「AKROS監修美容師・理容師」、11月には「AKROS監修美容・理容学生塾」をスタート

野瀬:
今日は年間1万人のお客さんから指名される松本さんに、選ばれる人になる方法を教えてもらいたいと思いまして。

松本さん:
いいですけど、新R25さんが言ってほしそうなカッコいいことは言えないかも…


どうしよう…「顔がカッコいいからです」みたいな答えが返ってきたら…

選ばれる人になる方法?「“身近な人”であれ」

松本さん:
僕が選ばれてるのは、ひたすら丁寧に切ってるからだと思います。

野瀬:
あー…(たしかにすごく普通っぽい…)

松本さん:
普通ですよね? カリスマ美容師って、もっとすごい尖ったこと言うイメージがあるとおもうんですけど、僕、普通のことを普通にしてるだけなんです。

野瀬:
なるほど。確かに松本さんって、いい意味でカリスマっぽくないですよね…

インスタも料理とかゴルフとか釣りのことばっかりだし…


こう見えて趣味は釣りです

松本さん:
はは! 逆に質問なんですけど、野瀬さんが思うカリスマ美容師ってどんなイメージですか?

野瀬:
うーん…高級車乗ってたり、すごい高そうな料理を食べてたり…ですかね?

松本さん:
要するに超セレブみたいな感じですよね。

でも、そういう美容師さんに切ってもらいたいと思います?

野瀬:
いや、思わないですね。僕にはハードルが高すぎるな〜って、スルーしちゃいます。

松本さん:
ですよね。だから、僕は自分の趣味のことを中心に載せているんです。

あえてカリスマ感を出さずに、距離を感じさせないように

野瀬:
!?

じゃあ、僕がインタビュー前に松本さんのインスタを見て、「カリスマ美容師って怖そうだな〜。でも、この人ならなんか優しくしてくれそうだし、大丈夫か!」と思えたのも…

松本さん:
狙い通りです(にっこり)。


ここで笑うのは、ずるい〜〜!

野瀬:
ひい…! 見事に松本さんの思惑にハマったわけですね!

でも、普通っぽさを出そうと思ったきっかけってあるんですか?

松本さん:
昔、床屋から美容院に変えるときって、緊張しませんでした?

野瀬:
しました、しました!

松本さん:
僕自身、学生のときって美容室に行くのめちゃくちゃ緊張したんですよ。

そんな当時の僕を思い出したり、お客様と話したりするなかで、「カッコよくなりたい」と思ってるのに、気軽に美容室に行けないってもったいないと思ったんですよ。

そしたら、ファッションに興味を持ち始めた男の子たちが全国から会いに来てくれるようになりました。



選ばれる人になる方法?「業界の常識を疑え」

野瀬:
松本さんといえば、「ライジングカット」が有名ですよね。

野瀬:
これは、めちゃくちゃカリスマっぽい気がするんですけど、アリなんですか?



松本さん:
選ばれる人になるために、僕が意識していることのひとつに「業界の常識を疑う」ってことがあって。

野瀬さんはヘアショーとか、美容師のセミナーって見たことありますか?

野瀬:
ちゃんとはないですけど、なんとなくどういうものかはわかります。奇抜な髪の方が、ランウェイを歩いている感じですよね?

松本さん:
そうそう! あれって面白いです?

野瀬:
うーん…正直、凡人には理解できないというか…

松本さん:
ですよね! 僕、最初にあれを見たときに、「これ本当に面白いの? ぶっちゃけ全然面白くないんだけど!」って思ったんですよ。


それ美容師さんが言っていいんすか…

松本さん:
だから、当時メンズカットのショーでやっている人はいなかった、パァーって髪が散るようにかっこよく切る魅せる切り方をしてみたんです。

美容業界のなかで「かっこいい」とされていることでも、一般の方、たとえば僕の友達とか身近な人に見せたときに面白くないのなら意味がないと思ったので。

野瀬:
そうだったんですね。でも、業界の常識を覆すとなると、なかなか批判の声も集まりそうですが、まわりの美容師さんたちの反応はどうだったんですか?

松本さん:
「松本さん! これなんですか!?」って、いろんな人に話しかけられました!

んで、当時EXILEの「RISING SUN」が流行ってたから、「これは…ライジングカットですね」ってカッコつけて言ったら、「すげーーー」って(笑)。



松本さん:
ノリで決まったので、ライジングカットが松本拓馬の代名詞になるなんて思ってもいませんでした(笑)。

結果的に、これを機にメディアに取り上げていただくことも増えたので、よかったんですけど、もう少し真剣に名前考えるべきだったかな(笑)。

選ばれる人になる方法?「第三者視点で、目の前にいる人のことを考えろ」

野瀬:
やっぱり松本さんクラスになると、他の美容師さんと目の付け所が違うんですかね?

松本さん:
いや、逆にめちゃくちゃ普通だと思いますよ。

あえていうなら美容業界にいない人の目線に近いだけで。

ただ意外と第三者目線がない美容師さんも多いから、僕はラッキーなのかもしれません



松本さん:
せっかく美容院に行ったのに、イメージしてたのとまったく違う髪型になってしまうことってありませんか?

野瀬:
あります、あります。

思ってた髪型と違った仕上がりになると、どんよりとした気持ちのまま1カ月過ごさなきゃいけなくて、すごい辛いんですよね。

松本さん:
あれってなんで許されるんでしょうね?

僕はお客さんにそんな気持ちになってもらいたくないだけなんですよ。だから、相手のことをめちゃくちゃ考えるし、第三者目線を常に持つようにしています。


松本さん、アツい思いが隠せません

松本さん:
オーダーと違う髪型にしちゃう美容師は、目の前の人のことを考えていないと思うんです。

髪を切った後のその人の生活なんて考えてなくて、「自分が髪を切る」ことしか考えていない。お客さんと向き合っていないんです。

もう、美容師は全員、吉野家を目指すべきだと思います。

野瀬:
めちゃくちゃアツい……って、吉野家…? 牛丼の?

松本さん:
そう。吉野家。吉野家ってどこに行ってもおいしくないですか?


カリスマ美容師、吉野家を語る

野瀬:
たしかにおいしいですけど…

松本さん:
それにカレー頼んで、牛丼が出て来ることもないし、つゆだくの牛丼って言ったらつゆだくの牛丼が出て来るでしょ? 逆に出てこないと怒られますよね?

美容師も本来そうあるべきなんです。全国どこの美容室に行っても、かっこいい髪型を提供できないといけない。

野瀬:
なるほど…

松本さん:
だから僕は今、美容室の監修を行っていて、自分の培った技術を全国の美容師に伝えられる環境作りに取り組んでいます。

僕に会いに地方から来てくれる男の子たちのような人が、地元の美容室に行っても、自分の思う「カッコイイ」に近づけるようになればいいなって



野瀬:
カッコいい…! 吉野家を使ったたとえ史上、一番カッコイイ落とし方だ…!

「マジでしょうもなかった」カリスマ美容師の知られざる過去

野瀬:
松本さん、お話を聞いていると、ずっとカッコよすぎるのですが、美容師になろうと思った当初からこんな感じだったんですか?

松本さん:
そんなわけないですよ(笑)。

漠然と美容師業界を良くしたいとは思ってましたけど、スタイリストになりたてのころはマジでしょうもなかったです。

態度が悪すぎて、スタイリストからアシスタントに1年間降格してたこともあるくらい。



野瀬:
降格って相当じゃないですか! いったい何をしたんです?

松本さん:
昔からお客さまを「かっこよくしたい」という思いは人一倍強かったので、めちゃくちゃ練習したし、上達も早かったんですね。それで指名していただくことも多かったから、完全に調子に乗ってました。

自分よりもうまくないと思っている先輩には、敬語を使う必要もないと思って、挨拶も「うっす」みたいな。僕がうまいと認めている人には、めっちゃ敬語使うんですけど(笑)。

野瀬:
思った以上によくない新人だ…

松本さん:
それが接客にも出てしまってたんだと思います。

当時、目の前で僕の予約が入れられないように、管理しているシートに大きくバツをつけられたときは、めちゃくちゃ腹立ちましたけど、今はめちゃくちゃ反省してますし、むしろ気づかせてくれた先輩たちには感謝してます。

野瀬:
その1年間は相当つらかったのでは?

松本さん:
うーん、そうだな〜…普通の人なら100回辞めてると思いますよ!

まあ、そのときのヤバいエピソードは記事には書けないことばっかりですね!

そこから、ちゃんと反省して、立派になったということで勘弁してください!(笑)

年間1万人以上の指名を獲得しているとは思えないほどに物腰が柔らかい松本さん。

カメラマンが笑顔を引き出すために「好きな動物はなんですか?」って聞いたら、「犬です! もしかしてポーズ取ればいいんですか!? ワン!」と犬のポーズをとってくれたお茶目さに、取材陣一同「大好き…」と声をそろえるほど虜になっていました。

その一方、美容師のお話をされているときの真剣な表情。このギャップも、松本さんが多くのお客さんから選ばれる理由のひとつに違いありません。

自分の仕事にプライドを持ち、それを確固たるものにする努力…などなど。

美容師という仕事に限らず、人から選ばれるために必要なことを教えていただきました!



あ〜〜〜、何もかもが、ずるすぎる!!!!

〈取材・文=野瀬研人(@kerinirop)/編集=於ありさ(@okiarichan27)/撮影=二條七海(@ryuseicamera)〉