【漢字トリビア】「拭」の成り立ち物語
「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」 https://tfm-plus.gsj.mobi/news/btmCTxPpMQ.html。今回の漢字は「拭く」「拭う」の「拭」。年末の大掃除を始める頃によみといておきたい漢字です。

「拭」という字は、手へんに「式典」「儀式」の「式」と書きます。
「式」という字の、中の「工」をぬいた部分は、「しきがまえ(弋)」と呼ばれる部首。
これは木に糸や網をつけて放ち、鳥などにからませて捕る矢のような道具のこと。
「工具」の「工」は、神に仕える人が手に持ち、神聖なものを守るため、邪気を取りはらう道具。
いずれも悪いものを祓い清める道具を表し、そこから「拭」という字は、「きよめる、ぬぐう、ふく」という意味に用いるようになりました。
拭き掃除に使う「雑巾」の歴史をひもといてみると、手で布を持って拭くようになったのは、畳を敷き詰めた書院造が登場した、室町末期の頃だといわれています。
江戸時代になって一般の住宅にも書院造が普及すると、はたきと箒を使って済ませていた掃除から、畳や廊下や柱まで、雑巾がけで磨きあげることをよしとするようになります。
そこには、中世以来の禅宗の教えによる影響があり、掃除が道徳的な生活規範になっていました。
禅語には、こんな言葉があります。
「時時勤払拭(じじにつとめてふっしょくせよ)」
本来の己は、悟りを宿す曇りのないものなのだから、煩悩の塵やほこりを払ったり拭いたりして、身心を清浄に保つこと。
日々の積み重ねと心がけが大事である、という教えです。
ではここで、もう一度「拭」という字を感じてみてください。
毎日溜まる塵ホコリは、心に影を落とすもの。
わかってはいても、本格的な拭き掃除はなかなかの重労働。
布を洗ってはしぼり、腰を曲げひざをついて進める雑巾がけは、つい、億劫になってしまう家事のひとつです。
そんなときには、幸田文の随筆を読んでみることにしましょう。
文に家事を厳しく教え込んだのは、父・幸田露伴。
彼女は、父のしつけを「一代のやしないになるもの」と感謝し、「よきつながり」と懐かしみながら、露伴流の拭き掃除を実践し続けます。
「水も雑巾もいわれた通りに守り、私は腕も肩も胴も脚も、全身をせい一杯に屈伸させ、杢目に従って拭き上げ、廊下は柔らかな艶をみせ、機嫌よさそうにすっと伸びていた。」
さっぱりと磨き上げられた、曇りのない文の心がうらやましくなります。
それではそろそろ私たちも、重たい腰をあげるとしましょうか。
漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。
その想いを受けとって、感じてみたら……、
ほら、今日一日が違って見えるはず。
*参考文献
『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)
『道具が語る生活史』(小泉和子/著 朝日選書)
『幸田文 しつけ帖』(幸田文/著 青木玉/編 平凡社)
12月15日(土)の放送では「霙(みぞれ)」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。
----------------------------------------------------
【▷▷この記事の放送回をradikoタイムフリーで聴く◁◁】 http://www.tfm.co.jp/link.php?id=7120
聴取期限 2018年12月16日(日) AM 4:59 まで
スマートフォンは「radiko」アプリ(無料)が必要です。⇒詳しくはコチラ http://www.tfm.co.jp/timefree_pr/)
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用頂けます。
----------------------------------------------------
<番組概要>
番組名:感じて、漢字の世界
放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット
放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜7:20〜7:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)
パーソナリティ:山根基世
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/

「拭」という字は、手へんに「式典」「儀式」の「式」と書きます。
これは木に糸や網をつけて放ち、鳥などにからませて捕る矢のような道具のこと。
「工具」の「工」は、神に仕える人が手に持ち、神聖なものを守るため、邪気を取りはらう道具。
いずれも悪いものを祓い清める道具を表し、そこから「拭」という字は、「きよめる、ぬぐう、ふく」という意味に用いるようになりました。
拭き掃除に使う「雑巾」の歴史をひもといてみると、手で布を持って拭くようになったのは、畳を敷き詰めた書院造が登場した、室町末期の頃だといわれています。
江戸時代になって一般の住宅にも書院造が普及すると、はたきと箒を使って済ませていた掃除から、畳や廊下や柱まで、雑巾がけで磨きあげることをよしとするようになります。
そこには、中世以来の禅宗の教えによる影響があり、掃除が道徳的な生活規範になっていました。
禅語には、こんな言葉があります。
「時時勤払拭(じじにつとめてふっしょくせよ)」
本来の己は、悟りを宿す曇りのないものなのだから、煩悩の塵やほこりを払ったり拭いたりして、身心を清浄に保つこと。
日々の積み重ねと心がけが大事である、という教えです。
ではここで、もう一度「拭」という字を感じてみてください。
毎日溜まる塵ホコリは、心に影を落とすもの。
わかってはいても、本格的な拭き掃除はなかなかの重労働。
布を洗ってはしぼり、腰を曲げひざをついて進める雑巾がけは、つい、億劫になってしまう家事のひとつです。
そんなときには、幸田文の随筆を読んでみることにしましょう。
文に家事を厳しく教え込んだのは、父・幸田露伴。
彼女は、父のしつけを「一代のやしないになるもの」と感謝し、「よきつながり」と懐かしみながら、露伴流の拭き掃除を実践し続けます。
「水も雑巾もいわれた通りに守り、私は腕も肩も胴も脚も、全身をせい一杯に屈伸させ、杢目に従って拭き上げ、廊下は柔らかな艶をみせ、機嫌よさそうにすっと伸びていた。」
さっぱりと磨き上げられた、曇りのない文の心がうらやましくなります。
それではそろそろ私たちも、重たい腰をあげるとしましょうか。
漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。
その想いを受けとって、感じてみたら……、
ほら、今日一日が違って見えるはず。
*参考文献
『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)
『道具が語る生活史』(小泉和子/著 朝日選書)
『幸田文 しつけ帖』(幸田文/著 青木玉/編 平凡社)
12月15日(土)の放送では「霙(みぞれ)」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。
----------------------------------------------------
【▷▷この記事の放送回をradikoタイムフリーで聴く◁◁】 http://www.tfm.co.jp/link.php?id=7120
聴取期限 2018年12月16日(日) AM 4:59 まで
スマートフォンは「radiko」アプリ(無料)が必要です。⇒詳しくはコチラ http://www.tfm.co.jp/timefree_pr/)
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用頂けます。
----------------------------------------------------
<番組概要>
番組名:感じて、漢字の世界
放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット
放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜7:20〜7:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)
パーソナリティ:山根基世
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/
