左から中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏(撮影/山崎力夫)

写真拡大

 セ・パ交流戦の開幕直前、阿部慎之助・巨人監督が電撃辞任。混迷の巨人はどこへ向かうのか、次代を託される監督は誰なのか。球界が騒然とするなか、江本孟紀氏(78)、中畑清氏(72)、達川光男氏(70)による本誌・週刊ポスト名物対談企画「ENT座談会」を開催した。【前後編の前編】

【写真】江本氏の次期監督本命「高橋由伸」。座談会で名前の挙がった松井秀喜なども

監督代行は絶対にダメ

 最後に会場入りしたのは中畑氏。江本氏が「本日の主役、待ってたよ!」と声をかけるところから座談会は幕を開けた――。

中畑:次の巨人の監督に就任します。中畑清です(ペコリと頭を下げる)。やる気満々です!

江本:組閣はもう決まったな。オレはピッチングコーチだろ。

達川:僕はバッテリーコーチでお願いします。

中畑:条件は飲みましょう(笑)。まあ今回の慎之助の突然の辞任には驚かされたけど、今の時代、暴力は言い訳がきかない。問題を大きくしないことが重要です。その意味で球団が迅速に対応したことを評価したいし、極端な話、巨人が新しい未来をつくる出発点になればいいかな。あとは慎之助の家族が心配です。

達川:僕も同じ意見ですが、やはりジャイアンツに貢献してきた阿部の人生をこれで終わらせちゃいけんよね。自分から辞めたので、今度は球団が何らかの形で救ってもらいたい。このまま一般人になるのではなく、二軍のバッテリーコーチでやり直すとか、中畑監督の下でヘッドコーチでもいいじゃないですか。何とか助け船を出してほしい。

江本:事件の真相はわかりませんが、表に出たらこの結果は仕方がない。大切なのはチームのこれから。オフェンスチーフコーチだった橋上(秀樹)が監督代行になったけど、私は「代行」には反対。シーズン前に決めていた体制の柱が崩れると、どうしてもチーム全体が機能しなくなる。過去を見ても監督代行で成功した例はほとんどありません。

達川:中畑さんはアテネオリンピックの時、脳梗塞で倒れたミスター(長嶋茂雄氏)に代わって野球日本代表の監督代行に就任した経験者ですよね。

中畑:あれはめっちゃやりにくかった。選手への対応も難しく、「監督と呼んだほうがいいですか」なんて余計な気遣いをさせるんです。監督代行は無責任なポジションでもあるので、巨人は慎之助の次の監督を指名して、"お前に任せたからお前が責任を取るんだ"という明確なメッセージを出したほうがいい。

江本:現役時代、阪神のブレイザー監督が選手起用でフロントと対立してシーズン中に辞任して、中西太さんが監督代行になったんです。するとブレイザー監督のビジョンに合わせてきた選手のテンションが明らかに下がってチームが失速した。ある日突然、「お前監督になれ、でも代行だよ」と言われたらあちこちに気を遣って中途半端にならざるを得ない。今年はまだシーズンの3分の1だからやり直せる。一刻も早く代行ではなく正式な監督に切り替えるべきです。

達川:実際に阿部の辞任を球団も認めたのだから彼が戻って来ることはもうない。だから橋上監督でいいと思いますよ。

中畑:そのほうがわかりやすいよな。ただ橋上は監督代行になった直後にベテラン重視の大胆な選手起用でソフトバンクに勝利した。いい顔になって意外と堂々としている。これまでと反対の起用法でうまくいっているから、慎之助がちょっと可哀想と思うくらいだよ。

達川:橋上はヤクルト出身で野村(克也)チルドレンのひとり。報道によると、阿部が橋上を監督代行に推薦したらしいね。

江本:私の聞いた話では橋上が巨人に来たのも阿部が熱望したかららしい。逆に言えば、阿部がヘッドコーチにするような信頼できるOBが巨人にいなかったんじゃないか。

松井か、由伸か、原か

江本:巨人の監督と言えばこの先、松井秀喜監督は実現するの?

中畑:昨年ミスターが亡くなった時、松井は弔辞で「長嶋監督と生前、約束したこともあります」「いつかは果たしたいなと思っています」と言った。本人は巨人の監督をかなりやる気でいると俺のなかでは感じました。

江本:メシを食いに行く約束とかじゃないの?

達川:それを大事な約束とは言わんでしょう(笑)。やっぱり監督のことだと思いますよ。

江本:ただオレの情報では松井はあまりやる気がないと聞いているけどね。

中畑:ミスターが生きていたら松井監督誕生の空気はなかなか生まれなかったでしょうね。でも亡くなったことによって彼は"約束を果たさないと"という責任を感じているんですよ。

達川:大勢の関係者を前に弔辞で語るということは、"やっぱりお前はジャイアンツの監督になれ。巨人軍は永久に不滅だ"と長嶋さんに直に言われたんじゃないのかな。ちなみに中畑さんはミスターと何か約束を交わさなかったんですか。

中畑:うん、俺はOB会長でいいって(笑)。もちろん巨人の監督をやりたいという願望を持ったことはあるけど、もういい歳だから。やはり松井にジャイアンツの夢を託したいよね。

江本:私の本命は(高橋)由伸です。阿部が辞任する前、仲間内のコンペで由伸と一緒になったけど、「お前また監督やるのか」と周囲から聞かれた彼は否定も肯定もせず、まんざらでもなさそうだった。あの感じだと、本人もやる気だと思う。

中畑:前回の監督期間は3年だったからちょっと短すぎたね。

江本:同じコンペで由伸は「あの頃、ぼろくそに言われましたからね」ともこぼしていた。確かに前回は急に監督をやらされて可哀想だったから、本人はもう一回やりたいのだろうね。

達川:原(辰徳)さんの再登板はどうだろう。

江本:あり得るでしょうね。やはり、ここで立て直すなら監督代行はダメだと思います。それなら思い切って経験者に監督を託してもいいのでは。

中畑:エモやんは原監督でOKなの? 原はもういいでしょ。

江本:いやいや緊急の場合よ。とりあえずは経験者だから納得するでしょう。(中畑氏の顔を見て)この人がやっても別に構わないですよ。我々の就職先も決まるしな(笑)。

 ただ阿部が監督を続けていても今季の巨人はしんどかったと思いますよ。岡本(和真)が抜けた穴は埋まらず、一貫性のあるオーダーを組めていません。戸郷(翔征)が復活したかもまだ怪しい。

達川:村田兆治さんと同じで、理にかなったフォームじゃない。

江本:ベテランの田中将大と則本昂大が先発ローテにいるのも本来はおかしな話です。でも最近のバッターは150キロを想定したスイングをするから、田中の140キロにタイミングが合わず振り遅れてるわけです。

中畑:期待感を持てる若手もほとんどいないなぁ。泉口(友汰)は巨人で唯一新しく育った野手。新人投手の竹丸(和幸)も別格で、彼がいなかったら今季はどうなっていたことか。

▼▼▼後編記事▼▼▼

【つづきを読む→】セ・リーグの行方は阪神にヤクルトがどこまで続くかが焦点 「ルーキーの立石がいい」「サトテルは三冠王を獲る」「藤川監督の投手起用がお見事」

【プロフィール】

江本孟紀(えもと・たけのり)/1947年、高知県生まれ。1971年に東映入団。1972年に南海に移籍し、エースに。1976年に阪神に移籍し、1981年の引退後は参院議員、タレントとしても活躍。

中畑清(なかはた・きよし)/1954年、福島県生まれ。1976年に巨人入団。「絶好調男」として定着。引退後はDeNAの監督を務めた。現在は巨人OB会の会長を担う。

達川光男(たつかわ・みつお)/1955年、広島県生まれ。1978年、広島に入団し正捕手に。引退後は広島監督などを務め、ソフトバンクでヘッドコーチとして日本一を経験。

※週刊ポスト2026年6月19日号