シトロエンらしさは健在!? 新型「C5エアクロス」をフランスで試乗してみた! パワフルな1.2リッター「ターボ」搭載の “新世代SUV”の実力とは
1.2リッターターボで挑むフラッグシップSUV
シトロエンの新型「C5エアクロス」が、2026年4月16日から日本でも発売されました。
今回は発売前にフランスで新型C5エアクロスに試乗。その進化ぶりを確かめました。
【画像】これが“新世代SUV”のシトロエン新型「C5エアクロス」です! 画像で見る(32枚)
内燃機関への回帰がいわれる欧州車ですが、「燃やして走る」のがラグジュアリーとして復権している一方で、エネルギーとして単位あたりカロリーに対し、約5倍もの効率を引き出せる電動化の波は止まりません。
いわば自動車業界におけるメーカーもユーザーも巻き込んだ内燃機関VS電気の対立は、16世紀に起きた旧教VS新教という宗教戦争のような様相を呈していて、いずれも平等に認める勅令か、新しい勢力地図を引き直す条約が結ばれるまで、両陣営のヘゲモニー争いは続くのでしょう。
問題は、新教徒がそうだったように次世代経済を担う知識やスキルは圧倒的に後者側にあって、効率こそが福音で、環境こそが恩寵であるという功利主義かコスパ主義を前に、前者の旧教側は、発達し切った資本主義下においてキャスティングボードを握りがちな投資マネー集めの点で、どうしても不利に立たされます。
でも欧州にも、充電手段のもてない居住形態ながら自動車は必須で、環境への貢献は自らの負担できる範囲でやぶさかでない、そういう中間層的なユーザーが大多数を占めます。
前置きが長くなりましたが、第2世代に進化した新たなC5エアクロスは、こうした中間層を強く意識したリコンシリエーター(調停者)的な性格を多分にもつ、シトロエンの新しいフラッグシップです。
パワーユニットは、フランス本国と欧州では純BEVとPHEVの各仕様、南米向けなどには純ICEも用意され、日本市場ではもっとも現実的なMHEVのみ展開することに、エネルギー政策とモビリティの自由、両者のすり合わせの難しさが垣間見えるでしょう。
しかし難局面だからこそ、驚異的なレバレッジを利かせるアヴァンギャルドぶりが、シトロエンの伝統芸です。パワーユニットは1.2リッター直列3気筒ターボ+48VのMHEV、つまり電気モーターで小排気量の3気筒エンジンをアシストする、同社の「C3」や「C4」と同じ構成といえます。
全長4655mmは、メルセデス・ベンツ「GLB」よりほんの5mm短いですが、トヨタ「RAV4」の4600mmより55mmほど長くなります。加えて全幅も1905mmと、RAV4の1855mmより50mm広い設計です。対して全高は1710mmで、RAV4の1680mmに対して30mmほど高い程度に収まりますが、水平方向に大柄なことは確かです。
にもかかわらず、2.5リッターのストロングハイブリッドや2リッターディーゼル+MHEVに比べたら、圧倒的な小排気量で引っ張り上げるという、強烈というか小気味よいマニフェストぶりといえます。
C5エアクロスのシステム総合出力145psというスペックは、110psのC3よりは約3割増しですが、C4とは横並びの同スペック。ですがC5エアクロスのモーター出力15kW(約20馬力)に対し、C4の方が21kW(約28ps)と電気強めの設定です。C5エアクロスに組み合わされるE-DCS6こと6速デュアルクラッチトランスミッションも前2者と共通ですが、ギア比やファイナルそして制御ロジックは、別仕立てとなっています。

C5エアクロスの優位は、最新のデザインランゲージによる空力デザイン&設計が挙げられます。注目はリアコンビランプの、ボディ側面にほとんど突き出すような、整流効果を兼ねたカナード形状です。
チーフデザイナーのピエール・ルクレルク氏いわく、燃費やCO2削減に貢献するアイデアを具現化したパーツだからこそ、デザイナーやエンジニアだけでなく欧州の認証機関も前向きに取り組んでくれた、とのこと。前例主義ではなく、コーズ(cause)があれば小さくとも革命は起きるという、事なかれ主義からは生まれない細部です。
また水の流れに磨かれた小石のような丸みを帯びていた初代に対し、第2世代のシルエットは彫刻的です。彫刻的とは、2次元で一か所の視点から判断されることを拒絶するという意味で、空間の中で視点を変えることで美しさに気づいてもらうという、インタラクティブな効果ありきタイプのデザインということ。だから街や自然の中を走る自動車にふさわしいというロジックです。
先代からアドバンストコンフォートシート、ならびにPHC(プログレッシブ・ハイドローリック・クッション)入りのダンパー・イン・ダンパーも受け継がれていますが、ガラリと変わったのはダッシュボード周りの雰囲気でしょう。
“ビッグ・シトロエン”らしい快適性とは
水平基調の、外国目線での“ZEN”が漂う、必要なものが美しく揃った引き算の美学によるインテリアは、むしろC5 Xの直系といえます。ただし13インチのタッチスクリーンが縦型で、前方視界がより広々と感じられます。

またホイールベース2790mmと先代より60mmも伸びた分、リアシートの足元が広く、シートのアドバンストコンフォートぶりもブーストアップ。前列だけでなく後列の乗員にも優しく快適な座り心地を実現してきました。
でもシトロエンといえば、やはり気になるのは乗り味と乗り心地。一見、1630kgの車重と車格に対してプアそうに思える1.2リッターターボのMHEVということで心配したのですが、まずは動的質感について、最初の数kmを走っただけでその偏見は見事に覆されました。
発進から30〜40km/hの速度域までは、電気モーターが力強いのに黒子のような働きぶり。そこから先はエンジンがトゥルルンと目覚めるのですが、介入から切り替わりモードがきわめて滑らかで大人しく、いつしか意識しなくなるほど静かです。
もちろん、遮音性を高めたボディとアコースティックガラスの効果もありますが、周囲の風景は流れていくのに車内は静謐なままという感覚は、MHEVなのにストロングハイブリッドっぽい、C5エアクロスの矛盾に満ちた動的質感といえます。低負荷時はICEで、パンチの要る中間加速や登り坂は電気との協業、伸びの要る時は再びICE、減速回生は随時といった具合です。

加えてごく微低速域から、PHC入りサスことダンパー・イン・ダンパーを介して、まるで路面を極上のシルクタッチで撫でるかのような、しなやかな優しい入力を伝えてきます。石畳のような路面をガーっと踏み込んでいってもノイジーな共鳴音が車内に響かないのは、もはやクラスレスに上品さを感じさせるほど。
上下のストローク量は往年のハイドロ・プニューマティックほどではないとはいえ、微低速域から高速域までマジックカーペット・ライドが持続し続けるという意味で、C5エアクロスはやはり、最新にして最良のビッグ・シトロエンなのです。
さらにワインディングに入っても、操舵の速さと舵角に応じてゲインを増すステアリングの調律は、ため息が出るほど見事。まるでピアノでも弾いているような気分で向き合え、操らせてくれるSUVは滅多にありません。
結論として言えることは、SUVだけどフラッグシップの矜持を与えられたC5エアクロスは、単なる先代の進化版や、ラインナップ内の上位互換ではありません。MHEVを繋ぎの技術に終わらせるのではなく、ポジティブに捉えた1台。リッターあたり20km近い実燃費にも、フランス車としての正統ぶりを感じさせます。
この円安にもかかわらず、C5エアクロスの「PLUS」グレードが535万円(消費税込、以下同)から、「MAX」が570万円からという価格も、フラッグシップとして相対的にお買い得なモデルに違いありません。
