「彼とは関わらない」「芸能界から去る」嵐・大野智の元恋人がサインさせられたとされる「誓約書」は“そもそも無効”だった?
嵐のラストライブツアーの最中、リーダーの大野智さん(45)が「週刊文春」(2026年5月7日・14日号)で、かつての恋人との密会を「禁じられた愛」との表現で報じられている。
その内容は、大野さんが10年前の2015年に、写真週刊誌によって“岩盤浴デート”などの交際を報じられ、当時、ジャニーズ事務所に“今後、大野さんとは関わらない”“芸能界から去る”という誓約書を書かされ芸能界を引退したとされる元女優のA子さんと、ライブの合間にたびたび会っていたというもの。
同誌の直撃に、A子さんは、男女の関係や恋愛関係は否定しており、実際、交際が復活しているかどうかの真偽は不明だが、注目すべきは、交際発覚時、A子さんが、当時のジャニーズ事務所に、誓約書を書かされ、大野さんと別れさせられたと主張しているくだり。(ライター・中原慶一)
アイドルの恋愛に対する事務所の「圧力」の実態は?「文春」は報道から4年後の2019年9月に、A子さんが、文春の取材に答えたとしてこう書いている。
(以下、引用)-------
「あれ以来、彼とは一切、連絡を取っていません。たまにテレビで見かけて、『元気だったらいいな』と思うくらいです。(共通の)友人から『無理してアイドルを続けている』と聞いたこともあって。本当に優しい人でしたし、テレビでみるままの……。今ももちろん応援しています。ただ、当時私が死ぬような思いをしたのも事実。結果的に芸能界からも追放されてしまいましたから。ジャニーズ事務所から、もう彼とは〈関わらない〉、〈芸能界は辞める〉という誓約書を書かされました」
旧ジャニーズ事務所に「誓約書」を書かされ芸能界を追放されたA子さんと、自らの口で謝罪させられた大野。離れ離れになった2人はそれぞれの道を歩んだ。
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旧ジャニーズ事務所は、2023年に明るみになったジャニー喜多川前社長の性加害問題を機にすでに解体しており、当時実際に、自社タレントとの熱愛が発覚したタレントに対して、こうした行為があったかどうかは判然としない。しかし、記事にあるA子さんの証言が事実だとすれば、それは芸能界ではあり得ることなのか。さるワイドショー関係者はこう話す。
「かつてのジャニーズ事務所なら、あり得ることだと思います。
今は、ある程度年齢がいっていればアイドルが恋愛や結婚をしても許される時代となり、ジャニーズ事務所を引き継いだSTARTO ENTERTAINMENT社もそのあたりは、すっかり寛容になりましたが、当時は基本、アイドルの恋愛は御法度。発覚すれば、騒動が広がらないようマスコミに圧力をかけていた時代です。
また大野さんもまだ30代半ばで、事務所としては、まだまだアイドル売りで稼ごうと考えていた時期だと思います」
この“恋愛禁止”が、のちに大野さんが「アイドルを辞めたい」という思いに至る引き金になったというのだが、だからと言って第三者が、誓約書まで取って、二人を別れさせた上、芸能界から追放するという荒っぽい手法は許されるのか。話は続く。
「こうした恋愛が発覚した場合、相手が芸能人なら事務所どうしの話し合いになり、だいたいは、そこで別れるという合意に至れば、それで終わると思います。
ただ、当時、A子さんが所属していた事務所は、旧ジャニーズ事務所と比べると圧倒的に弱小だったのです。さらに、大野さんもA子さんもかなり本気度が高かったため、また関係が復活でもしたら自社の稼ぎ頭のアイドルの将来に大きな影響を及ぼすということで、誓約書という話にまでなったのではないでしょうか」
愛するふたりを強引に引き裂いたその手法は、当時の芸能界やアイドル界という特殊な事情も関係していたようだが、その真相は明らかにはなっていない……。
「別れる」という誓約書の法的効力は?それはさておき、一般論として、「●●とは別れる」「この業界では仕事をしない」などといった、個人の「自己決定権」や「職業選択の自由」などに制限を加える誓約書を書かせることは果たして有効なのか。
契約法に詳しい荒川香遥弁護士(弁護士法人ダーウィン法律事務所代表)は、「『契約自由の原則』(民法521条参照)があるので、本人が意思に基づき契約するものである限り、原則として有効」とした上で、こう答えた。
「公序良俗違反(民法90条)にあたる場合は無効となります。たとえば、片方が社会的権力をバックに他方に対し一方的に不利な条件を無理やり飲ませるもの、人格的生存の中核をなし自己決定が強度に保障されるべき権利(人との交際、職業選択)を不当に制限するものなどです。
したがって、許容されるのは、不倫した配偶者に対し『不倫相手とは二度と会うな』というケースや、退職後に競業避止義務を負わせる場合(場所や期限や対象顧客等を厳格に区切る、退職金の上乗せ等の代償措置がある、などの場合に限る)くらいです」(荒川弁護士)
ちなみに、男女交際の場面において、いわゆる「手切れ金」の契約がなされる場合はどうか。
「『手切れ金』の契約自体が、基本的には公序良俗違反であり無効です。無効というのは、契約上の義務がいっさい生じないということです。
ただし、手切れ金が実際に交付されてしまえば、それは『不法原因給付』にあたるので、受け取った側は、返金する必要はありません(民法708条参照)。
なぜなら、もし、公序良俗に違反する給付を行った者に返還請求権を認めると、不法を行った者に法が助力してしまうことになるからです。
もちろん、誓約書の『もう会わない』などの条項を破ったとしても、同様に返金の必要はありません」(荒川弁護士)
誓約書へのサインを迫られたら? サインしてしまったら?さらに、我々一般人が知っておきたいのは、本件のようなケースに限らず一般的に、意に添わぬ内容の「誓約書」にサインさせられそうになったら、どう対処すればよいかということだろう。
「きっぱり断って差し支えありません。その場の雰囲気で断りにくければ、『考えさせてください』と言って留保しその場を離れ、後で弁護士に相談してください。
例えば、断った場合に『サインしないとひどい目に遭わせる、業界におられんようにしてやる』などと言って無理やりサインさせたら強要罪(刑法223条)にあたります。なお、未遂も処罰の対象です(同条3項、43条)」(荒川弁護士)
さらに、拒みきれず、やむを得ずサインさせられてしまった場合はどうすればいいか。
「その場合でも、誓約書の条項が公序良俗違反ならそもそも無効なので、従う義務はありません。
また、強迫により意思表示させられたことを理由に取り消すことができます(民法96条1項)。
大切なことは、やりとりを記録に残しておくことです。対面や電話でのやりとりは、できれば録音しておくことが望ましいです。民事でも刑事でも、それが重要な証拠になります」(荒川弁護士)
いずれにせよ、意に添わない誓約書にサインを求められたら、まずは深呼吸。少なくともその場でサインをすることは極力避け、冷静に対処することが肝要と言えそうだ。
■ 中原慶一
某大手ニュースサイト編集者。事件、社会、芸能、街ネタなどが守備範囲。実話誌やビジネス誌を経て現職。マスコミ関係者に幅広いネットワークを持つ。

