ドバイの観光業に打撃、築き上げてきた安全神話の崩壊…紛争絶えぬ中東の「セイフヘイブン」は今
米イスラエルとイランの戦闘の余波が、アラブ首長国連邦(UAE)の大都市ドバイの観光業に暗い影を落としている。
長年築き上げてきた安全神話の崩壊で、観光地やホテルの客足は戻らず、収益減が関係者の生活を締めつける。(ドバイ 村上愛衣、写真も)
第三国移住も
ドバイの人気観光地ゴールド・スーク(市場)で9日夕、記者が金装飾品店を訪ねると、「今日来店したのはあなたが初めて」とインド人経営者のモヘディ・カジさん(32)に告げられた。
2月の戦闘開始前は店外に行列ができ、日本人観光客も1日に15人ほど来店していたが、売り上げの低迷で家賃の支払いに頭を抱える日々を送る。目玉商品は金でアラビア語をあしらったネックレスで、再び売れる日常に戻ることを「毎日祈っている」と語った。
UAEの人口約1000万人のうち8割は、働きにきたり移住したりした外国人だ。タクシーなどのサービス業で稼いだ金を母国の家族に送る人も多いが、20歳代のミャンマー人女性は「仕送りは以前の半分ほどだ」と嘆いた。
この女性が勤務する観光客向けの飲食店は閑散としていた。客は半分以下に減り、約15万円相当の月収も半減した。より高い収入を見込める第三国への移住も検討しているという。
破片で被害
世界有数の産油国UAEは1970年代から脱石油依存を掲げ、経済の多角化に取り組んできた。外国の投資に優遇措置を講じ、観光業の育成に力を入れた。90年代以降はエミレーツ航空が航路を拡大し、拠点とするドバイ国際空港は中東のハブ空港に成長した。国営通信によると、昨年外国から訪れてドバイに宿泊した人は約1960万人で、3年連続で過去最高となった。
急成長を支えたのは、紛争が絶えない中東で「セイフヘイブン(安全な避難所)」としてのイメージ戦略が奏功したことだ。治安の良さが評価され、大規模なイベント開催地としても人気だった。そこへ戦闘が始まり、米軍が駐留するUAEはイランによる攻撃対象となった。空港やホテルにドローン(無人機)が飛来し、迎撃後に落下した破片による被害が確認された。
「安定に半年」
世界一の高さを誇るビル「ブルジュ・ハリファ」を望むドバイ中心部の「レバ ホテル」創業者JS・アナンドさん(56)は、「利益が出ていない」と説明した。
戦闘開始前に8割だった客室の稼働率は一時、1割まで落ち込んだ。宿泊料金を半額以下にして地元住民の利用を促すことで、直近1か月の稼働率は5割まで回復したものの、「我々は営業を継続するが、安定を取り戻すには半年かかるだろう」と語った。
