麻生久美子に聞く人生。「芸能界に入る選択も自分でしてきたからこそ、子どもたちには自分たちで選択してほしい」

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「自分の選択を愛せる人生」

波瑠さんが作家志望で文学オタクのバーのママ・野宮ルナを、麻生久美子さんが専業主婦・沢辻涼子を演じる、W主演のドラマ『月夜行路 ―答えは名作の中にー(以下、月夜行路)』(日本テレビ系水曜夜10時〜)。

本作は、波瑠さんが演じる小説家志望のバーのママ・ルナと、麻生久美子さん演じる専業主婦の涼子が、「涼子の元カレを探す」という目的の中、多くの事件に遭遇、ルナが文学的知識とその観察眼で謎を解いていく「文学ロードミステリー」。原作は秋吉理香子さんの同名小説で、『最愛』『わたし定時で帰ります』などで知られる清水友佳子さんが脚本をつとめる。

第1話で、波瑠さんが演じるルナが、涼子にこう語るシーンがある。

「涼子さんには自分の選択を愛せる人生を送ってほしいです」

専業主婦の涼子は、今は家族を最優先にするという「選択」をしている。しかしルナの前でため息を18回もつき、「自分の存在意義がわからなくなる」と本音を吐露している。つまり、自分の選択に満足できていないのだ。このドラマは、そんな涼子がルナと旅をしたことで「自分の選択」「自分の人生」を見つめなおしていく過程も注目だ。

では麻生さん自身は、どうなのだろうか。2児の母である麻生さんにインタビューを行った第1回では、前後編で子育てについて聞いた。後編では「人生の選択」というキーワードでさらに深く話を聞く。

すべて自分で決断してきました

麻生さんが芸能界に進んだのは高校生のとき、自分の選択だという。1995年に映画『BUD GUY BEACH』でデビュー後、『カンゾー先生』で日本アカデミー賞新人賞と同時に最優秀助演女優賞を受賞。以降ご存じの通り、多くの作品に出演してきた。どのように「人生の選択」をしてきたのだろうか。

麻生:「うちは両親が早くに離婚していて、母が本当に自由にさせてくれていたので、振り返ると、私はほとんどのことを自分で決めてきたなと思います。

だからこそ、子どもたちにも、自分で選んでいってほしいという気持ちがあります」

「子どもの選択を大切にする」といっても、まだ子どものころは自分が何をしたいかもわからないことも多い。習い事だらけにして子どももヘトヘト……という話も聞くが、麻生さんはどうしているのだろう。

麻生:「たとえば習い事でも、『こういうところもあるし、こういうところもあるよね』『それぞれこういう良さがあるよね』といった話はします。そのうえで、好きなものをやればいいし、何もやらずに自分の好きなことをする時間があってもいい、というスタンスで、子どもの意見を大事にしています。でも、やりたいと言って始めたのに続かなくて、私に怒られることも多いです。『自分でやりたいって言ったのに、なんですぐやめるの』って(笑)」

「こうしなさい」と言われた記憶はありません

では麻生さん自身は親から「こうしなさい」と言われたことはあるのだろうか。

麻生:「『こうしなさい』と言われた記憶は、あまりないですね。初めて自分でやりたいと言ったのも、たぶんこの仕事のことだったと思いますし、それも応援してくれました。

最初は少し金銭的に助けてもらったくらいで、あとは本当に、自分で電車に乗って行って、勝手にやっていたような感じでした。田舎だったし、周りに何か特別な環境があったわけでもなくて、母もずっと働いていたので、そういう状況だったんだと思います。

ただ、今になって思うのは、もう少し情報があってもよかったなということです。うちは、『大学には行かせられない』と言われて育ってきて、高校を出たら働いて家にお金を入れるものだと思っていたんです。だから当時は、大学に行くという選択肢自体が自分の中になかったんですよね。でも今思えば、方法はいくつかあったはずなんです。

だから私は、人生にはこういう選択肢もある、今は難しく見えても、こういう方法ならできるかもしれない、ということを伝えてあげたい。

もちろん、それを親のせいにしたいわけではなくて、自分で調べることもできたはずなんですけど、当時はそういう発想や環境がなかったんだと思います」

麻生さんの言葉はフラットでやわらかい。かといって表面的ではなく、ありのままを淡々と語る。なにかを誰かのせいにするのではなくて、事実をそのまま受け止め、その中で全力を尽くしてきたのだなと感じる。

だからこそ、涼子をはじめ、『カンゾー先生』のソノ子しかり、『贅沢な骨』のミヤコしかり、『時効警察』シリーズの三日月しずかしかり、『MIU404』の桔梗しかり、多くの作品でさまざまな背景を持つ役柄によりそい、その人たちの人生を、説得力を持って生きてこられたのだろうとも感じる。

麻生さんの「選択」にどんな背景があっても、それを選んだからこと、私たちが今、麻生さんが出演した素晴らしい作品たちに出会えていることは間違いがない。エンターテインメントの世界を選んでくれてありがとうとも言いたくなる。

◇インタビュー第2回後編「麻生久美子が考える”過保護”。「子どもの人生を生きるようなやり方はしたくないんです」」では、「子どもの人生」と「自分らしさ」についてさらに聞いていく。

麻生久美子(あそう・くみこ)

1978年6月17日生まれ。1995年、映画『BAD GUY BEACH』でデビュー。1999年『カンゾー先生』では、日本アカデミー賞新人賞とともに最優秀助演女優賞をはじめ、多くの賞を受賞。2001年『贅沢な骨』では日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞。以降ドラマ『時効警察』シリーズ(2006、2007、2019)、『MIU404』(2020)『オリバーな犬』シリーズ(2021、2022、2025年は映画化)、『おむすび』(2024〜2025)、映画『回路』(2000)『インスタント沼』『夕凪の街 桜の国』(2007)『モテキ』(2011)『とんび』(2022)『海辺へ行く道』(2025)ほか舞台やCMも多く出演。『月夜行路』が最新のW主演作となる。

『月夜行路 ―答えは名作の中にー』

仕事漬けの夫と反抗期の子どもたちに軽んじられる専業主婦・沢辻涼子。45歳の誕生日の日、偶然出会ったのは小説家志望で文学オタクのバーのママ・野宮ルナ。見事な洞察力を見せるルナと、なぜか涼子の元カレ探しの旅に大阪へ行くことに。そこで殺人事件に遭遇すると、ルナが文学作品から謎を解き明かしていく。笑って泣ける痛快文学ロードミステリー。日本テレビ系 水曜夜10時〜

インタビュー・文/新町真弓(FRaUweb)

【後編】麻生久美子が考える”過保護”。「子どもの人生を生きるようなやり方はしたくないんです」