荒物雑貨の魅力を伝え続ける「暮らしの道具 谷中 松野屋」って?

東京・日暮里駅から徒歩約3分。谷中の名所「夕やけだんだん」を降りる手前にあるのが、荒物雑貨店「暮らしの道具 谷中 松野屋」(以下、「松野屋」)です。店先にずらりと並ぶかごの風景は、この街を象徴するひとコマ。思わず足を止める人も多く見かけます。

店内に一歩入ると、ほうきやちりとりといった掃除道具をはじめ、かごやざる、キッチン用品、カバン、小物類まで、暮らしにまつわる道具がぎっしりと並びます。海外からの来店客も多く、店内には英語が飛び交う場面も。それでもどこか落ち着く空気が流れているのは、並んでいる道具がどれも“日々の生活に寄り添うもの”だからでしょうか。

「THREAD-LINE」(すれっど・らいん)というタグ付きのバッグは「松野屋」オリジナル

もともと「松野屋」は、カバンの卸問屋としてスタートしました。現在の店のかたちをつくったのは、3代目の松野 弘(まつの ひろし)さん。京都の帆布カバン店で修業を積み、自らのカバンづくりを始めたのち、ある出合いをきっかけに大きく方向を変えます。
それが、アメリカのジェネラルストアで目にした“ヘビーデューティー” (Heavy-duty)の文化。丈夫で長く使え、使うほどに味わいが増す現地の道具たちに魅了され、日本でも同じように日常に根ざした道具の価値を伝えたいと考えるようになったのです。

「真竹味噌こし 日本製(栃木県)」など、すべての値札に生産地が書かれている

大量生産されたプラスチック製品があふれる時代のなかで、松野さんが選んだのは、自然素材で、修理しながら長く使える“荒物”(あらもの)とよばれる道具。国内外の各地からそうした品を集め、今の「松野屋」のスタイルが形づくられていきました。

松野さんの著書も購入可能

「ベストでも、ワーストでも、グッドでもない。“ナイス”なものを届けたいんです」と松野さん。誰にとっても一番ではないかもしれないけれど、それぞれの暮らしにちょうどよくなじむもの。そんな道具が揃うこの場所で、まずは自分の時間を見直すヒントを探してみることにしました。

暮らしと時間を見つめ直す。春の暮らしを整える道具8選

掃除|手を動かして、気持ちを整える


ほうき

「シュロ手ぼうき」4400円

玄関やベランダなど、掃除機をかけにくい場所では、ほうきが活躍します。なかでもシュロ製のほうきは繊維がやわらかく、フローリングでも使えるのが特徴。使うほどに床に自然なツヤが出てくるのもうれしいところです。

掃除を“作業”としてではなく、気持ちを整える時間として取り入れたくなる。そんなきっかけをくれる道具です。

(左から)「トタン文化ちりとり」770円、「パーム荒神ぼうき」990円

掃除機を出すほどではないけれど、少し気になる床のほこり。そんなときは、小さなほうきとちりとりがあると、さっと手に取れて便利です。

音を立てずに使えるので、朝でも夜でも時間を気にせず掃除ができます。思い立ったときにすぐ動ける、軽やかな掃除習慣が身につきます。
トタン豆バケツ

(左から)「トタン豆バケツ」大2530円、小2090円

ころんとした丸いフォルムが印象的な、「松野屋」オリジナルのトタン製バケツ。松野さんがトタンの工場を訪ねた際、大きな柄杓の頭が転がっているのを見て着想を得たそう。いわゆるバケツらしさが少なく、掃除道具を入れておくだけでも絵になります。

掃除用としてはもちろん、植木鉢を入れたり、根菜類を入れたり、植物の水やりに使ったりと用途はさまざま。室内に置いても生活感が出すぎないのもうれしいポイントです。フォルムとサイズ感が、現代の暮らしにもすっとなじみます。
水玉ピンチハンガー 角ミニ

「水玉ピンチハンガー 角ミニ」1210円

金属製のしっかりとしたクリップが特徴のハンガー。デニムのような厚手の生地もしっかりとはさめる頼もしさがあります。キッチンの近くに吊るして、ふきんやジッパー付き保存袋を乾かすのに使う人も多いそう。小ぶりなサイズならではの使い勝手のよさも魅力です。

洗濯物を干すだけでなく、ポストカードや写真を飾ったり、ドライフラワーづくりに活用したりと使い方はアイデア次第。干す・飾るという行為がひとつにつながる、ささやかな楽しみをくれる道具です。

■台所|自分のための時間を味わう


せいろ

「杉せいろ」15cm 5170円

ひとり分の食事にちょうどいいサイズのせいろ。肉まんや野菜はもちろん、冷凍ごはんや卵、ソーセージなど、蒸すだけでいつもの食材がぐっとおいしく感じられます。料理が苦手…という人にこそ、試してみてほしい調理道具です。

サイズは18cm、21cmもあるが、ひとり暮らしには15cmが人気

普段電子レンジで温めている食材を、試しにせいろで蒸してみてください。少し時間はかかりますが、蒸気でじっくり火を通すことで、食材のうま味を自然に引き出してくれます。いつもの食事が、より豊かな時間に変わります。
ふるさと鍋

「ふるさと鍋」16cm 3190円(上)、「ワラ釜敷き」小 2640円(下)

どこか懐かしさを感じる、インドネシア製のアルミ鍋。ラーメンや鍋料理などをそのまま食卓に出せる気軽さがあり、ひとりごはんにもぴったりです。

前述のせいろをのせて使うのもおすすめ。鍋としてだけでなく器としても使える万能さも魅力で、ひとつあるだけで料理の幅と楽しみ方がぐっと広がります。
お茶やコーヒーの道具

(上から)「ラオス竹茶こし」1320円、「厚口グラス」大 2310円、「受け皿」1540円

お茶好きにおすすめなのが、ラオス製の竹茶こし。ティーバッグから茶葉に切り替えて、抽出する時間を楽しんでみるのはいかがでしょう。紅茶や日本茶、中国茶など、いろいろ試してみたくなります。

「真竹コーヒードリッパー」6600円

コーヒー好きには、真竹でつくられたドリッパーがおすすめ。円錐型のフィルターをセットして、ゆっくりとお湯を注ぎます。ポタポタと抽出されるコーヒーを眺める時間もまた、心を落ち着かせてくれるひとときです。


収納|空間と気持ちに余白を


トタン米びつ

(上から)「トタン米びつ2kg」5500円、「トタン米びつ7kg」8690円、「トタン米びつ15kg」1万450円

もともとは米びつとして使われていたものを、収納道具として提案した「松野屋」オリジナル。ラベルをつけて中身を管理できるのも便利なポイントです。

洗えるので園芸用品や掃除用品入れにも最適

乾物や調味料、手芸用品など、用途に合わせて自由に使えるのも魅力。整えることで、空間だけでなく気持ちにもゆとりが生まれます。
かご

「会津おしんかご」1万6500円。リンゴなどの収穫用として使われている

店先に並ぶかごは、国内外の手仕事によるものばかり。ひとつひとつ表情が異なり、選ぶ時間も楽しみです。

タイ製の「ニッパヤシラウンドバスケット」Lサイズ 9900円。アジアは荒物雑貨の宝庫だとか

収納として使うのはもちろん、そのまま置いても絵になる存在。編み目やたたずまいの美しさに、思わず見とれてしまうものばかりです。
素材や作り手の減少により、出合いはまさに一期一会。入荷が安定しないものも多く、気に入ったものがあればぜひ手に取りたいところ。暮らしに取り入れることで、日常にさりげない温もりを添えてくれます。

ソロおすすめ Point

ひとりだからこそ、ひとつずつじっくり商品を手に取り、どう使おうか、どこに置こうか頭を巡らせる時間も楽しめます。道具を使う時間まで思い描くことで、日々のひとり時間が少し楽しみになりそうです。

想いとこだわりが詰まった、「谷中 松野屋」おすすめの道具3選

ヘビーキャンバスツールトート

ヘビーキャンバスツールトートS」1万6500円

「松野屋」のルーツでもあるカバンづくりから生まれた、オリジナルの帆布トート。しっかりとした生地でつくられていて、道具入れとしてはもちろん、日常使いにも頼れる存在です。
園芸道具を入れて使う人が多く、ガーデニング文化が根づくイギリスでも人気の高いアイテム。わざわざイギリスから買いに訪れる人もいるほどです。

使い込むほどに風合いが増し、「松野屋」では修理にも対応しています(内容により料金は異なる)。直しながら長く使えるのも特長のひとつで。時間とともに自分だけの表情に育っていく、“持ち続けたくなる”道具です。
牛革親子がま口

「牛革親子がま口」各5280円

「松野屋」のオリジナル商品のなかでも、帆布トートに次いで人気を集めているのがこちら。外側のがまぐちの中に、さらに小さながまぐちが収まった二重構造の財布です。
小銭と紙幣を分けて収納できる使い勝手のよさもポイント。手のひらに収まるサイズ感で、日常使いにちょうどいい存在です。

カードも入るサイズなので、名刺入れとして活用する人もいるそう。小さながまぐちにはリップクリームやお守りを入れるなど、使い方はさまざま。何を入れようかと考える時間も楽しくなる、遊び心のある道具です。
アルマイト製品

「松野屋」で人気の高いアルマイト製品。軽くて丈夫で、スタッキングでき、直火にもかけられるなど実用性の高さが特徴です。

「アルマイト手付マッコリコップ」13cm 990円

なかでもマッコリコップは、その特徴を生かした“アジアのシェラカップ”としてアウトドアシーンにも広がった一品。
「最初に水に石を投げたときの、小さな波紋のようなものがおもしろいんです。大きく広がって、誰もが知るようになると、松野屋でなくてもよくなる。だからまた次の石を探すんです」
松野さんのそんな言葉どおり、マッコリコップもまた、小さな波紋から広がった道具のひとつ。使い方次第で用途が広がる、可能性を感じさせてくれます。

「アルマイトちゃぶ台」5500円。縁付きでコップを倒してもこぼれにくく、子ども用としても人気

軽くて扱いやすいアルマイト製のちゃぶ台も、じわじわと人気が広がっているアイテム。折りたたんで持ち運べるため、室内はもちろんピクニックやアウトドアでも活躍します。

足をたためば、収納に場所を取らない

足をたためばお盆としても使え、食事だけでなく植物や小物を置く台としても活用可能。コンパクトに収納でき、ひとり暮らしにも取り入れやすいのも魅力です。
この記事で気になる道具に出合えたら、それは暮らしを見直すサインかもしれません。谷中を散歩しながら、自分の時間にそっと寄り添う道具を探しに出かけてみませんか。

■暮らしの道具 谷中 松野屋(くらしのどうぐ やなか まつのや)
住所:東京都荒川区西日暮里3-14-14
TEL:03-3823-7441
営業時間:11〜19時
定休日:火曜

ソロMemo

■ソロ率:50%(平日午後)
■おすすめの利用シーン:ひとりで買い物を楽しみたいとき、ひとりで道具の使い道を考えたいとき


▶▶「おとなのソロ部」の記事一覧はこちらから!


Text:山田裕子(editorial team Flone)
Photo:斉藤純平(editorial team Flone)
●店舗・施設の休みは原則として年末年始・お盆休み・ゴールデンウィーク・臨時休業を省略しています。
●掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。内容の変更が発生する場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。