司馬遼太郎没後30年を記念する文藝春秋PLUSの対談企画に、俳優の東出昌大氏とお笑いコンビ・Aマッソの加納愛子氏が出演。自身の読書遍歴とともに、愛する司馬作品3作を語った。歴史嫌いの少年がページをめくるきっかけとなったのは、病に伏した父の書棚だったという。(全2回の1回目/続きを読む)

【動画を見る】東出昌大が選ぶ“司馬遼太郎ベスト3”「歴史嫌いだった自分の目を開いてくれた」父の書棚で出会った“ダイナミックな物語”

(初出「文藝春秋PLUS」2026年4月4日配信)

余命を宣告された父の書棚から

 文藝春秋PLUSの動画シリーズ「司馬遼太郎『未来』という街角から」に、俳優の東出昌大氏がゲストとして登場した。

 東出氏は司馬作品との出会いについて、こう振り返った。


東出昌大氏

「学校に通っていた頃は歴史は嫌いだったのですが、10代後半のとき、父が病に伏したんです。その父が司馬遼太郎や藤沢周平の作品を読んでいました」

 余命を宣告された父のことを「全然知らない」と感じた東出氏は、父の書棚に手を伸ばした。

「『なんじゃこりゃ、こんなに面白いものがあったのか』と目から鱗が落ちる思いでした。青年期に夢中で読んだのが、司馬作品との出会いであり、思い出です」

 父は司馬作品を何周も繰り返し読んでいた人だったという。

東出昌大が選ぶ、司馬遼太郎3作品は

 番組内では、好きな司馬作品を3作持ち寄って発表する時間があった。

 東出氏が1作目に挙げたのは『項羽と劉邦』。四面楚歌の語源となった楚漢戦争を描いた作品だ。東出氏は「三国志は漫画やゲームにもなっていますが、中国史にはどうしてもとっつきづらいイメージがありました。題名も読みづらいし、と思いつつ手に取ったら、めちゃくちゃ面白かった」と振り返る。「日本の人物の大きさにも圧倒されますが、中国史の登場人物たちのスケールはさらに大きくて、その壮大さに血が沸き立つような興奮を覚えました」と語った。

 2作目は、大村益次郎の若き日を描いた『花神』。主人公の村田蔵六(のちの大村益次郎)を「天才的だが、今で言う“コミュ障”。無愛想で、容姿を『火吹きだるま』と揶揄される」人物だと紹介。しかし「考えることはものすごく先鋭的で、理にかなった新しい考え方ができる」と述べ、「人から虐げられていたような青年が、実力でのし上がっていく様に心が躍りました」と魅力を語った。

 3作目は短い随筆『二十一世紀に生きる君たちへ』。「司馬さんが、今後の日本人はどう生きるべきなのかを、小学6年生にも分かるように推敲に推敲を重ねて書いた作品」と紹介した。この作品は教科書のために書かれたエッセイで、書籍は司馬遼太郎記念館でのみ販売されている。

そのドラマが好きでたまらない

 対談の中で東出氏は、司馬が描いた人物たちの魅力の源泉にも踏み込んだ。

「『司馬史観』という言葉があるように、史実として残っている文章が少ないテーマもあり、余白があったからこそ、その人物をドラマ仕立てにできたという側面はあると思います」

 歴史家から「実際は違う」と指摘される点があることは承知のうえで、「『人間は間違うこともあるし、色々あるじゃないか』という、ダイナミックな物語を提供してくれたのが司馬さんです」と、その本質を「ドラマ」という言葉に集約した。そして「そのドラマが好きでたまらない私は、今後も読み続けるのだと思います」と語った。

「竜馬になりたい、ああいう大志を抱くんだ」東出昌大が愛する司馬遼太郎『関ヶ原』『峠』を演じた俳優が受け取った人生観とは〉へ続く

(「文春オンライン」編集部)