【セルジオ越後】イングランドに勝って浮かれてはいけない。歴史的勝利? これは“練習試合”。世界との差は縮まっていないよ
選手たちはよく身体を張って守ったし、少ないチャンスをモノにした。特にゴールキーパーの鈴木はすごかったね。彼がいなければ負けてもおかしくない試合だった。三笘のゴールも、自分でボールを奪って、自分でチャンスを作って決めて素晴らしかった。ゲームの内容は良かったと思うよ。
ドイツやスペインに勝ったカタールワールドカップから時間が経ったけど、正直、ヨーロッパや南米の強豪との差は縮まっていないと感じるね。
なぜかって?それはもうサッカーの歴史の厚さだよ。アジア勢がヨーロッパや南米のチーム相手に主導権を握って試合を進める、なんてことはずっとできていない。これが世界との差なんだ。
「良い守りから良い攻撃へ」というのはカタールの時と同じ。でも、それだけじゃ足りない。いつになったら僕らがボールを支配して、相手を押し込んで勝てるようになるのか。
日本の選手たちも海外でプレーするようになったけど、彼らが活躍しているのはスコットランドやオランダ、ベルギーといったリーグが中心。もちろん素晴らしいことだけど、相手の国の選手たちは、もっとレベルの高いイングランドのプレミアリーグやスペインリーグでプレーしているんだ。相手もみんな「海外組」なんだよ。そこが違うんだよね。
ワールドカップでベスト16の壁を越えたいなら、もっと本気にならないと。今の強化プログラムはマンネリ化しているんじゃないかな。毎年同じようなことを繰り返しているだけに見えるよ。
協会はお金をどこに使っているんだろう。もっと強化にお金を使うべきだよ。海外の強豪と試合をするにも、日本がお金を払って来てもらっているのが現状。立場が逆にならないと、本当の意味で対等にはなれない。
選手の選び方にも疑問があるね。チャンピオンズリーグでプレーしている守田がなぜか呼ばれなくなった。Jリーグで何年も輝いている鈴木優磨も一度も呼ばれない。プレー以外の面で呼ばれない理由をいろいろ聞くけど、結果を出している選手を使わないでどうするんだって話だよ。本当に強いチームを作りたいなら、少々扱いにくい選手でも使いこなしてこそ本物の監督だと思うけどね。
今回のイングランド戦の勝利は、ニュースとしては良い話題だよ。でも、これはあくまで練習試合だから浮かれてはいけない。同じ日にやっていたワールドカップの欧州プレーオフなんかは、選手たちの目の色が全然違った。命がけで戦っていたよ。本番はああいうものなんだ。
いつまでも「ジャイアントキリングだ」って喜んでいるうちは、まだ弱いチームだという証拠。僕が本当に見たいのは、日本が強豪国に勝つのが当たり前になって、むしろ格下のチームに「負けたことがニュースになる」ような時代。そうなって初めて、日本が本当の意味で世界の強豪の仲間入りをしたと言えるんじゃないかな。
【著者プロフィール】
セルジオ越後(せるじお・えちご)/1945年7月28日生まれ、80歳。ブラジル・サンパウロ出身。日系ブラジル人。ブラジルではコリンチャンスやパウリスタなどでプレー。1972年に来日し、日本では藤和不動産サッカー部(現・湘南ベルマーレ)で活躍した。引退後は「さわやかサッカー教室」で全国を回り、サッカーの普及に努める。現在は解説者として、歯に衣着せぬ物言いで日本サッカーを鋭く斬る。
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