警察官が「女性遺体」をスマホで撮影、懲戒免職に…なぜ罪に問えないのか?弁護士の僧侶「死者の尊厳が十分に守られていない」
これを罪に問うことができないのか──。警察官による「女性の死体撮影」という信じがたい問題が明らかになり、SNS上ではそのような声が相次いでいる。
警察署に検視のため安置されていた女性の遺体をスマートフォンで撮影し、データを持ち出したとして、警視庁は鑑識を担当していた巡査部長の男性を懲戒免職処分とした。処分は2月27日付。
男性は2025年9月、JRの駅で女子高校生のスカート内を撮影しようとしたとして、逮捕・起訴された。さらに、インターネットで入手したとみられる女児の画像も所持していたとして、児童買春・ポルノ禁止法違反でも起訴された。これらの捜査の過程で、遺体の写真やデータが見つかったとされる。
警視庁は、男性が20人近く、480枚のデータを持ち出していたとし、「亡くなられた方の尊厳を著しく傷つけるとともに皆様の信頼を裏切るものであり 極めて遺憾で心よりおわび申し上げます」などとコメントを出した。
女性の遺体は裸だったり、衣服がはだけていたという。まさしく警察への信頼を揺るがしかねない出来事だが、こうした行為は刑事責任を問うことができないのだろうか。
刑事事件にくわしい本間久雄弁護士に聞いた。僧侶でもある本間弁護士は「現状の法律では、死者の尊厳が十分に守られているとは言い難い」と指摘する。
●性的姿態等撮影罪は「生きている人」が対象
──警察官が霊安室で検視のために安置されている遺体を撮影し、データを持ち出した行為は、罪に問えないのでしょうか。
まず検討されるのは、性的姿態等撮影罪です。
しかし、同罪で規定されている「人の性的な部位」の「人」とは、生きている人のことを指すとされており、死体の性的な部位を撮影しても、同罪に問うことはできません。
仮に刑事責任を問う余地があるとすれば、建造物侵入罪(刑法130条)が考えられます。
●建造物侵入罪の成立はありえる
刑法130条は「正当な理由がないのに、…建造物…に侵入した者は、3年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金に処する」としています。
ここでいう「侵入」とは、管理者の意思に反する立ち入りを意味するとされています。
死者の尊厳を害する撮影行為のために、霊安室に入った場合、建造物の管理者(たとえば警察署長など)の意思に反するものと言え、建造物侵入罪が成立する可能性があります。
実際、2023年には、女性の遺体にわいせつ行為をする目的で葬儀場の遺体安置室に侵入したとして、葬儀場の職員が建造物侵入罪で有罪判決を受けた例もあります。
●現状の法律では死者の尊厳が十分に守られていない…法改正検討しても
──あくまで建造物に不正に侵入した罪にしか問えないようですね。死体の撮影自体は倫理的に大きな問題だと思われます。
巡査部長のしたことの何が悪いかと言えば、やはり死者の尊厳を害した点です。そのことについて罰せられないことについては、もどかしさがあります。
死者の尊厳を害したことを罰する法律として、刑法190条の死体損壊等罪があります。同罪は「死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、3年以下の拘禁刑に処する」としています。
逆に言えば、死体を損壊・遺棄・領得(※簡単にいうと自分の所有物にすることです)しない限り、死者に不敬な行為をしても処罰されないのです。
先ほど触れた葬儀場職員の事案でも、死体を物理的に「損壊」するまでには至っていないため、死体損壊等罪に問われませんでした。
このように、現状の法律の枠組みでは、死者の尊厳が十分に守られているとは言えません。死者に対する不敬な行為を処罰対象とする法改正について、検討されてもよいと思います。
【取材協力弁護士】
本間 久雄(ほんま・ひさお)弁護士
平成20年弁護士登録。東京大学法学部卒業・慶應義塾大学法科大学院卒業。宗教法人及び僧侶・寺族関係者に関する事件を多数取り扱う。著書に「弁護士実務に効く 判例にみる宗教法人の法律問題」(第一法規)などがある。
事務所名:横浜関内法律事務所
事務所URL:https://jiinhoumu.com/
