よく「地頭が良ければ〜」とか「知識だけあっても〜」などと、まるで思考力のほうが知識よりも優先するかのような物言いをされる方がいらっしゃいますが、本当に辟易します。

 地頭を現場で作業する能力とするならば、知識は建設資材です。どんなに技術があっても、道具がなければ人は働けません。

◆「思考力」という甘い言葉に惑わされるな

 本来、「思考力」とは、最低限の知識があって初めて活きるものであり、いたずらに思考力だけを追い求めても、中身のない張りぼてのような人間ができるだけでしょう。

 そして、思考力を身に着ける教育は、今のところうまくいっていないように見えます。本当に思考力が身についているならば、記述問題の正答率がもっと高くてもよいのではないでしょうか。

 私はいろいろな中高生を見てきましたが、やはり最低限の知識を持ち合わせているような方はあまり多くない。

 偏差値30とか40の子の話をしているのではなく、50とか60くらいの子でも、日常語彙、歴史的な事実、化学現象に対する知識など基本的な情報が欠落しているように見えます。

 見栄えのいい文句が席巻している今だからこそ敢えて言いますが、思考力なんて甘い言葉に惑わされず、知識を身に着ける方向へ回帰したほうがよいように感じられます。

 実戦形式で思考力を鍛える教育も考えられますが、様々なレベル感の生徒が数十人集まる公立校などでは、事実上不可能でしょう。

 結局、家庭教師や個別指導塾に行かせる余裕のある家庭の子どもだけが、マンツーマンの特別指導を経て、「思考力」を手にできる。格差は広がる一方ではないでしょうか。

 学習は確かに量よりも質が大事。とはいえ、質を保証するためには、最低限の量が必要です。まずは、知識を拡充するための「量」的な勉強を重視することが必要なのかもしれません。

<文/布施川天馬>

【布施川天馬】
1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を自ら編み出し、東大合格を果たす。著書に最小限のコストで最大の成果を出すためのノウハウを体系化した著書『東大式節約勉強法』、膨大な範囲と量の受験勉強をする中で気がついた「コスパを極限まで高める時間の使い方」を解説した『東大式時間術』がある。株式会社カルペ・ディエムにて、講師として、お金と時間をかけない「省エネ」スタイルの勉強法を学生たちに伝えている。MENSA会員。(Xアカウント:@Temma_Fusegawa)