人生で一番幸福を感じる瞬間はいつなのか。24兆円の個人資産をもつ大富豪である95歳のウォーレン・バフェットさんによれば、それは会社のトップに立ったときでもなく、お金をたくさんもっていることでもなく、すごくきれいな人と結婚したときでもないという。では、どんな人がいつ幸福になるのか――。

※本稿は、桑原晃弥さん『バフェットさんが伝えたい お金を増やすために大切な10のこと』(イースト・プレス)の一部を再編集したものです。

SelectUSA2015投資サミットでのウォーレン・バフェット氏(写真=米国国際貿易局/CC-PD-Mark/Wikimedia Commons)

■Q 忙しすぎて勉強する余裕がありません。

仕事があまりに忙しすぎて、自分のために勉強したり、やりたいことに挑戦する体力も時間もありません。やりたいことをやるとか、勉強するのは、余裕ができるまで待つしかないのでしょうか。

A 自分にとって一番大事な顧客は、自分自身です

その悩みは多くの人が抱えているはずです。私の長年の相棒、チャーリー・マンガーは弁護士でしたが、誰にも指図されない自立した人間になるために、若い頃から勉強を続け、不動産投資にも挑戦していました。

私も同じように「早く自立したい」と願い、努力を重ねてきました。そこで学んだのは―自分にとって最も大切な顧客は、自分自身だということです。

どんなに忙しくても、1日たった1 時間でいい。自分のために学び、挑戦する時間を確保してください。そうすることで、まず自分を満たし、次に他人のために働けるようになるのです。自分を顧客とすること。それが、自立した人間への第一歩なのです。

■Q 小さな甘えは許される?

人生で成功するために大事な原則はいくつか知っているのですが、仕事が忙しかったり、つい誘惑に負けて、原則とは違うことをやってしまうことがあります。周りからは「それも人間らしくていいんじゃない」と言われるのですが、これくらいは許されるのでしょうか。

A 小さな妥協が、大きな失敗のはじまりです

うん、その気持ちもよく分かります。実際、企業で見られる大きな不正も、その多くは「このくらいはいいか」という小さな妥協から始まっているんです。それが積み重なって、やがて大問題へと膨れ上がる。

人間も同じです。「今日くらいはいいか」「ちょっとだけなら」といった小さな甘えが重なって、気がつけば大切なものを台無しにしてしまうことがあります。

だからこそ大切なのは、小さなことこそ大事にして守ること。良い習慣の積み重ねこそが、人生で成功するための大原則なのです。

■Q 利益にならない人とは付き合わなくていい?

自分が付き合っている人の中には、自分に利益をもたらしてくれる人と、そうでない人がいます。悪い人ではありませんが、こうした人たちと付き合うのは時間のムダな気がして、できるだけ縁を切るようにしています。その方が人生にメリットがあると思うのですが、どうでしょうか。

A 良き人間関係こそ、人生最大の財産です

なるほど、その発想も一理あります。たしかに、自分に害をなす人や、不愉快な思いをさせる人とわざわざ付き合う必要はありません。けれど、たとえ直接の利益にならなくても、自分にとって大切な人や信頼できる人は、人生に何人もいるものです。

ほんの少しの利益のために、そうした人たちとの縁を切り捨ててしまったら、人生はとても寂しいものになります。年齢を重ねるにつれて、人は「いくら稼いだか」よりも、「自分が愛されたいと思う人から、どれだけ愛されているか」が大切になってくる。

結局のところ、良き人間関係こそが、人生における最大の財産なのです。

■Q お金をたくさん稼げば幸せになれる?

自分は「どれだけ稼ぐか」がその人の価値を決めると思っています。「お金にこだわるな」「お金がなくても幸せになれる」なんて言うのは、負け犬の言い訳だと思うんです。だから人よりも、周りの同僚よりもうんと稼いで幸せになってやろうと考えています。バフェットさんのようなお金持ちになるためには、どうすればいいでしょうか。

A 他人との比較に幸せはありません

なるほど、率直な気持ちですね。お金を稼ぐこと自体は悪いことではありません。けれど、「いくら稼いだのか」を価値の尺度にしてしまうと、たいていの人はいつか厄介ごとに巻き込まれます。なぜなら、いくら稼ぐかには限界がないからです。

たとえば、年収1億円を手に入れれば、誰だって嬉しいはずです。でもその喜びは、同僚や知り合いが1億1000万円を稼いでいると知った瞬間にかき消されてしまう。そうやって比較を続ければ、どれだけ稼いでも心は満たされません。

お金を稼ぐことは構いません。ただし、他人と比べて勝った負けたを言っている限り、幸せは遠ざかっていくでしょう。

■Q 読書って本当に必要?

本を読むことが大切だとはよく言われますが、今の時代はYouTubeなどで簡単に知識が得られます。わざわざ高いお金を出して本を買い、時間をかけて読む意味があるのでしょうか。正直、その必要性がよく分かりません。

A 本は、時代も場所も超えて「偉大な師」に出会わせてくれます

なるほど、もっともな疑問です。私自身は子どもの頃から本が大好きで、オマハの図書館にある「金融」と名のつく本はすべて、2回以上読みました。

人類の歴史には、尊敬すべき偉人たちが数えきれないほどいます。もちろん彼らに直接会うことはできません。けれど、本を開けば、まるで彼らと同じテーブルで昼食をともにするように、思考を共有できるのです。本には、人を変える力があるのです。

写真=iStock.com/FreshSplash
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/FreshSplash

■Q 幸福を感じるのはどんなとき?

自分の人生が「うまくいったなあ」と満足できるのは、どういうときなのでしょうか。たくさんのお金を稼いだときでしょうか。会社でトップに立ったときでしょうか。それとも、ものすごくきれいな人と結婚したときでしょうか。何が一番幸福を感じる瞬間なのか知りたいです。

桑原晃弥『バフェットさんが伝えたい お金を増やすために大切な10のこと』(イースト・プレス)

A 愛されたい人から愛されること。それが幸福の尺度です。

なるほど、誰もが一度は考える問いですね。私くらいの年齢になると、答えはとてもシンプルになります。

それは、自分が愛されたいと思っている人から、どれだけ愛されているか。お金をたくさん持っていなくても、偉くならなくても、幸せな家庭を持ち、家族や友人に囲まれて愛されている人は、本当に豊かな人生を送っています。

逆に、大金を手にしたにもかかわらず、最後はひどく寂しい最期を迎える人も少なくありません。結局のところ、人生でいちばん大切なのは愛情なんです。

■【参考文献】

『ウォーレン・バフェット 華麗なる流儀:現代版「カサンドラ」の運命を変えた日』ジャネット・タバコリ/牧野洋 訳、東洋経済新報社、2010年。
『ウォーレン・バフェット 自分を信じるものが勝つ!』ジャネット・ロウ/平野誠一 訳、ダイヤモンド社、1999年。
『ウォーレン・バフェット成功の名語録』桑原晃弥 著、PHP研究所、2012年。
『賢明なる投資家:割安株の見つけ方とバリュー投資を成功させる方法』ベンジャミン・グレアム/土光篤洋 監、増沢和美ほか 訳、パンローリング、2000年。
『最高経営責任者バフェット:あなたも「世界最高のボス」になれる』ロバート・P・マイルズ/木村規子 訳、パンローリング、2003年。
『スノーボール:ウォーレン・バフェット伝(上)』アリス・シュローダー/伏見威蕃 訳、日本経済新聞出版社、2009年。
『スノーボール:ウォーレン・バフェット伝(下)』アリス・シュローダー/伏見威蕃 訳、日本経済新聞出版社、2009年。
『世紀の相場師 ジェシー・リバモア』リチャード・スミッテン/藤本直 訳、角川書店、2001年。
投資参謀マンガー:世界一投資家バフェットを陰で支えた男』ジャネット・ロウ/増沢和美 訳、パンローリング、2001年。
『フィッシャーの「超」成長株投資:普通株で普通でない利益を得るために』フィリップ・A・フィッシャー/荒井拓也 監、フォレスト出版、2000年。
『バフェット&ゲイツ 後輩と語る:学生からの21の質問』センゲージラーニング株式会社 編、同友館(発売)、2008年。
『バフェットからの手紙:世界一投資家が見たこれから伸びる会社、滅びる会社』ローレンス・A・カニンガム 著/増沢浩一 監、パンローリング、2000年。
『バフェットからの手紙(第4版):世界一投資家が見たこれから伸びる会社、滅びる会社』ローレンス・A・カニンガム/長尾慎太郎 監、パンローリング、2014年。
『バフェットからの手紙(第5版):世界一投資家が見たこれから伸びる会社、滅びる会社』ローレンス・A・カニンガム/長岡半太郎 監、パンローリング、2021年。
『バフェット合衆国:世界最強バークシャー・ハサウェイの舞台裏』ロナルド・W・チャン/船木麻里 訳、パンローリング、2011年。
『バフェット 伝説の投資教室』ジェレミー・ミラー/渡部典子 訳、日本経済新聞出版社、2016年。
『バフェットの株主総会』ジェフ・マシューズ/黒輪篤嗣 訳、エクスナレッジ、2009年。
『バフェットの投資原則:世界No.1投資家は何を考え、いかに行動してきたか』ジャネット・ロウ/平野誠一 訳、ダイヤモンド社、2008年。
『ビジネスは人なり 投資は価値なり』ロジャー・ローウェンスタイン/ビジネスバンク 訳、総合法令出版、1998年。
『ピーター・リンチの株で勝つ』ピーター・リンチ/ジョン・ロスチャイルド/三原淳雄・土屋安衛 訳、ダイヤモンド社、2001年。
『日経ヴェリタス』第194号、日本経済新聞社、2011年11月27日。

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桑原 晃弥(くわばら・てるや)
経済・経営ジャーナリスト
1956年、広島県生まれ。経済・経営ジャーナリスト。慶應義塾大学卒。業界紙記者などを経てフリージャーナリストとして独立。トヨタ式の普及で有名な若松義人氏の会社の顧問として、トヨタ式の実践現場や、大野耐一氏直系のトヨタマンを幅広く取材、トヨタ式の書籍やテキストなどの制作を主導した。著書に、『スティーブ・ジョブズ名語録』(PHP研究所)、『ウォーレン・バフェットの「仕事と人生を豊かにする8つの哲学」』『トヨタ式5W1H思考』(以上、KADOKAWA)などがある。
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(経済・経営ジャーナリスト 桑原 晃弥)