『Pragmata』試遊レポート:TPSとパズルの“二人羽織”がやみつきに 「面倒では?」の不安を打ち砕く圧倒的爽快感
■「謎に包まれたカプコンの新規IP」のベールがついに
数年前に、当時はまだ「次世代機」として語られていたPlayStation 5のソフトラインナップの一つとして『Pragmata(プラグマタ)』が発表された時に感じたのは、率直に言えば「困惑」だった。カプコンが何か新しいことをしようとしているのは分かっているけれど、そこにあるのは幼い少女の姿と宇宙の光景のみで、具体的にどのようなゲームなのかは何一つ分からない(「宇宙飛行士」といえばコジマプロダクションということで、関連性を推察する人も少なくなかった)。トレーラーにおいてゲームプレイ映像を出さないことは珍しくはないが、それにしたって抽象的すぎると誰もが思ったことだろう。
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だが、その「謎」自体が、『Pragmata』というタイトルを、何百、何千という作品の情報を浴びながらも、多くの人々が気にかけていた理由でもある。筆者もそのひとりで、大きなゲームのショーケースが実施されるごとに「そういえば『Pragmata』の続報は?」と思い出していた。
実際に試遊体験を経て思うのは、カプコン側も『Pragmata』というタイトルをどのように打ち出すべきなのかを悩んでいたのではないだろうかということである。今でこそ、「宇宙を舞台にした探索アクションTPS」というラベルを貼ることはできるだろうが、それだけではあの奇妙なプレイフィールを表現することは難しそうだ。
興味深いのは、本作のディレクターを務めるチョウ・ヨンヒ氏が、過去には『バイオハザード RE:3』のアートディレクターを務め、それ以前はプラチナゲームズで『NieR:Automata』や『メタルギア ライジング リベンジェンス』のコンセプトデザインを担当してきたという、いわゆるデザイン畑の出身であるということ。開発においても、若いスタッフを中心とした新興チームであることが明らかになっており、あらゆる意味で従来のカプコンのタイトルとは毛色の異なる作品であることは間違いない。それは、「間違いなくカプコンらしい手触りを感じる一方で、これまでのどのカプコンの作品とも異なっている」という試遊後の感覚を裏付ける。ここからは実際のレビューを書き進めていくが、少なくとも実際にデモ版をプレイしないことには、その魅力を感じ取ってもらうのは難しそうだ。
■「戦いながらパズルを解かなければならない」異色のスタイルが生み出す爽快感
試遊版における『Pragmata』の基本的な構造は、概ね「探索」と「戦闘」に二分される。探索パートでは、月面に建造された謎の施設を探索し、行く手を阻むパズルなどのさまざまな障壁を、主人公の一人であり、これまでのトレーラーでも印象的だった謎の少女型アンドロイド・ディアナの能力を駆使して突破していく。
パズルの多くは、表示された図形の一部を回転させて線を繋いだり、指定の順序でボタンを押したりといったシンプルなもので、(少なくとも試遊版の時点では)取り立てて悩まされることもなく、これまでのさまざまなゲームに導入されてきたパズルミニゲームのように、ゲームプレイにメリハリをつけるためのちょっとした要素であるように感じられる。それよりも興味深いのは、近未来SFのエッセンスが隅々まで詰まった月面施設そのもので、どうやらこの世界では3Dプリンターのようなものを活用して、家具はもちろん食べ物に至るまで何でも生成できるらしく、配置されたメモを読むと、そうした環境の中で暮らす住人の生活の様子が垣間見ることができた。だが、どこにも人間の姿はない。果たして彼らはどこに行ったのだろうか?
また、マップ内には多くの武器の補充物資やサポート系のアイテムなどが配置されており、探索を進めていくと、一見すると壁のようでも、近づくとホログラムであることが分かり、その中にはたくさんのアイテムが保管されているといったギミックも見受けられた。探索と言えば、やはり「バイオハザード」シリーズが脳裏をよぎるが、あちらが狭い空間を中心としたレベルデザインが多いのに対して、『Pragmata』ではより広い、オープンな空間づくりを意識しているように感じられたのが印象的だ。筆者は試遊時間内でデモを2周したのだが、2回目にプレイした時には、初回には気づかなかった要素が数多くあることを発見し、探索の魅力をより実感することができた。
とはいえ、試遊における最も印象的な要素は、やはり主人公たちの目の前に立ちはだかる月面AI(アンドロイド)たちとの戦闘である。基本的には手持ちの銃を使って「バイオハザード」のようなTPSスタイルでの銃撃戦に臨むのだが、ただ撃つだけでは僅かなダメージしか与えることができない。ここで重要なのが、銃を構えた時に、ディアナ側でハッキング(=画面の右側に表示されるパズルを解く)をして、相手の抵抗力を下げることである。パズルは『The Witness』のように開始地点から終了地点までを線で引くようなもので、ルートの合間に特定のマークを通れば通るほど、与えるダメージを大幅に増やすことができる。実際の操作感としては、トリガーとアナログスティックを使ってTPSの操作を行いながら、十字キーを使ってパズルを解くという感じだ。実際のイメージとしては、TPSをしながら『サイバーパンク2077』のハッキングパートをこなしているような感覚に近いかもしれない。
恐らく、この仕様を聞いたほとんどの人は「面倒じゃない?」と思うのではないだろうか。実際、慣れないうちは、主人公のヒューとディアナと同様に、まるで二人羽織のようなこのスタイルに戸惑い、あたふたしているうちに、迫り来るアンドロイドたちの猛攻を何度も食らってしまった。だが、徐々に慣れていくにつれて、素早くパズルを解き、高威力のダメージを食らわせる爽快感に、やみつきになっていったのである。これは、ゲーム側がこのシステムならではの魅力を最大化するために、さまざまな調整を凝らしているというのも大きいだろう。
■少しずつ敵が迫り来る恐怖と、パズルが生み出す大ダメージの絶妙なバランス
「パズルを解きながら戦う」というゲーム性において、恐らく最大のフラストレーションとなるのは、解いている最中に攻撃を食らって、作業が中断されてしまうことだろう。その点を考慮してか、(少なくとも試遊版に登場した)敵の行動パターンや速度は、いずれも「並行してパズルを解く」という前提の元に設計されているように感じられた。歩行型はじわじわと迫り来るようになっていたり、いわゆるスナイパータイプは照準を合わせてから実際に発射するまでにかなりの時間差があったり、大型のボスであっても、攻撃のフェーズが明確になっていたりと、どのシチュエーションにおいても「今はパズルを解く/解かない」という判断がかなりしやすくなっている。
もちろん、そうは言っても攻撃を食らわないように、パズルだけではなく、主人公たちの置かれた状況もチェックしながら臨機応変に対応しなければならない。前述の通り、パズルの難易度は自力である程度調整できるため、余裕がある場合は最大ダメージの解法を狙い、そうでなければ最短でサクッと解くという状況判断が求められる。さらに、道中で手に入る「敵の被ダメージ量アップ」といったサポートアイテムも取得次第、自動的にパズル内に組み込まれるため、「いつアイテムを発動するか」も踏まえながら、頭をフル回転させることになる。だからこそ、敵に大ダメージを与えた瞬間の爽快感は、従来のTPSでは得られないほどに大きい。
例えば、『バイオハザード RE:2』では、限られた弾薬の中でゆっくりと迫り来るゾンビに、的確に弾薬を当てるという緊張感が大きな魅力となっていたが、『Pragmata』では、そのリスクとリターンのバランスを、「リアルタイムでパズルを解く」という斜め上の発想で進化させているというわけだ。
そうした爽快感をさらに増幅させているのが、ダメージ量を表示するサイバー感強めのUIと、機械のド派手な破壊音&エフェクトである。銃弾が一発ヒットするごとに鳴り響く強烈なクラッシュ音は、刺激を求めるシューター欲をしっかりと満たしてくれる。さらに、ヘッドショットに加えて、敵には弱点部位の概念がある。一方のプレイヤー側には、相手の動きを一定時間食い止めるガジェットが用意されており、その気になれば、「ガジェットで敵の動きを止める→一気にパズルを解いてバフを得る→敵の弱点部位を狙い、特大ダメージを与える」というコンボを決めることができるのだ。この爽快感といったら尋常ではない。
さらに、大型ボスに一定ダメージを与えると、超必殺技的なハッキングや、渾身の一撃を食らわせるシークエンスが入り、ドラマティックな戦闘をさらに盛り上げてくれる。この辺りは、まさに『メタルギア ライジング リベンジェンス』の演出を想起させ、スタイリッシュアクションの片鱗すらも感じさせてくれる。「パズルを解きながら戦う」という、いかにもフラストレーションが溜まりそうな要素に対して、障壁はなるべく削りつつ、成功した時の快楽をあらゆる角度から盛り上げてくれるので、試遊を重ねていくうちに、この未知の爽快感の虜になってしまった。
また、「快活で無邪気な少女アンドロイド」のディアナと、「口は悪いが思慮深い男性兵士(?)」のヒューの相性もちょうど良く、二人の姿はまるでちょっと硬派な『シュガー・ラッシュ』のヴァネロペとラルフのようにも感じられる。戦闘と探索の両面において、頻繁に声を掛け合う二人の軽妙なやり取りは、それ自体がゲームを進める上でのモチベーションになりそうだ。
2020年代屈指の「謎」となっていた『Pragmata』は、その世界観や物語こそ、今なお膨大な謎に包まれているが、今回の試遊では、「パズルを解きながらTPSで戦う」というトリッキーなゲーム性の魅力を最大化するために、さまざまな形で創意工夫が盛り込まれていることを感じられた。実験的でありながらも、そのプレイフィールは極めて良好で、もしデモが公開されたら、「面白いから、まずは触ってみてほしい」と万人にオススメしたい仕上がりである。個人的にも、その先の世界が気になって仕方がないので、リリースを既に心待ちにしている。
(文=ノイ村)

