ディフェンスリーダーとしての覚悟を固めた高橋。全国の舞台でより逞しくなった姿を見せたい。写真:安藤隆人

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 左足から繰り出される変幻自在のパスに、いつも惚れ惚れさせられる。

 高校サッカー屈指の名門、“カナリア軍団”帝京の183センチのレフティCB高橋遼は、最終ラインで守備をコントロールするだけでなく、インカーブ、アウトカーブ、ストレート、バックスピンと多くの球種を持った左足のフィード、縦パスでチームの攻撃の起点を生み出している。

 インターハイ東京都予選の準決勝・早稲田実業戦。勝利すれば2年連続35回目のインターハイ出場が決まる一戦でも、高橋の左足がチームを勝利に導いた。

 開始早々の10分、ディフェンスラインのパス回しからボールを受けると、左に持ち出しシャープなスイングでフィードを繰り出した。インフロントにかかったボールは鮮やかな弧を描きながら、相手のCBとGKの間に走り込んだFW久保恵音の元へ吸い込まれていく。

 久保が胸トラップでコントロールして飛び出してきたGKと入れ替わると、GKに引っ張られてファールを誘いPKを獲得。これを久保がしっかりと決めて、帝京が先制する。

 その後も高橋は縦パスを何度も通して攻撃のリズムを作り、守備面では冷静な裏へのカバーリングと対人の強さを発揮して失点を回避。チームは4−0で快勝し、全国への切符を手にした。

「相手は5バックだったので、ウイングバックとセンターバックの間のスペースがどこかで空くと思って常に狙っていました」
 
 狙い通りのパスとクリーンシート。結果を出したと言えるが、まだ高橋は発展途上。気を引き締めることを忘れなかった。

「都予選は無失点で来ていますが、細かく振り返ると、いつ失点してもおかしくはないシーンがあります。運よく失点していない面もあるので、もっとセンターバックとしての守備の質を上げていかないといけないと思っています。攻撃面でも課題である対角のロングキックは今、磨いている最中なので、それをもっと試合で出せるようにしたい」

 昨年までディフェンスリーダーは、V・ファーレン長崎に進んだ187センチの大型CB田所莉旺が担い、高橋はトップで出番を得ることができなかった。常に背中を見つめる立場だった。

「莉旺君は高卒でプロに行ったように、フィードのうまさや対人の強さ、カバーリングのうまさだけでなく、声の部分でも影響力が絶大で、センターバックとしての能力がどれもハイレベルだった。本当に学ぶことばかりで、2年間で追いつけませんでしたが、逆に一緒に2年間プレーすることで、目標というか、『必死に食らいついていこう』、『見て真似ながら学ぼう』と思えたことが、僕にとって大きかった」

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 高橋がCBでプレーするようになったのは高校からで、FC東京U-15深川時代は左サイドバックだった。慣れないポジションで、見本になるのが高校屈指のCBだった田所だったことが、高橋にとって幸運とも言えた。

 向上心と学ぶ意欲も掛け合わさって、CBとして力を磨いていくと、今年はその田所が背負った20番を引き継いだ。藤倉寛監督からユニホームを渡された時、「莉旺君の跡を継ぐからこそ、今年はディフェンスリーダーにならないといけないと責任を感じました」と覚悟を固めたことで、精神的にさらに逞しくなった。
 
「センターバックはサイドバックよりも守備の要で、背負う責任が違います。やればやるほどそれを感じるし、後ろ向きになって対応しなければいけない部分で、クリアが小さくなったり、裏のボールをバウンドさせたりしてしまうこともあるので、もっと予測や技術でカバーできるようにならないといけない。まだ莉旺君のようにこのチームにとって絶対的な存在にはなれていないと思うからこそ、もっと自覚を持ってやっていかないと」

 インターハイではより逞しくなった姿と、変幻自在の左足のキックで全国の強豪たちのディフェンスラインに穴を空ける存在として脅威になるべく――希少価値の高い左利きのCBは、お手本となる偉大な先輩の背中を追いかけて、さらなるスケールアップを図ろうとしている。

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)