奈良といえば、神社仏閣や大仏を見て歴史に思いを馳せ、奈良公園で鹿と触れ合う。そんなイメージを持つ方が多いでしょう。しかし、ここでしか味わえない美味もあるのです。今回は、老舗醤油蔵のレストランに星付きのフレンチなど、奈良を存分に味わえる逸品が登場します。新たな魅力発見旅へいざ。

わずか数滴で味が激変!天然醸造醤油の底力を見た『蔵元料理マルト醤油』@田原本

1689年創業の奈良県最古の醤油蔵だったが、戦後の食糧難でやむなく廃業。しかし、18代当主の木村浩幸氏が書庫に保管されていた古文書を読み解いて約70年ぶりに醤油づくりを再興した。

自慢の醤油は、近隣農家が栽培した大豆と小麦を原料に、昔ながらの製法にこだわり抜いている。敷地内にあるレストラン『蔵元料理マルト醤油』では、ランチとディナーのコースで提供されるすべての料理に天然醸造の醤油や通常の醤油蔵では廃棄される搾り粕を使用している。

酢醤油 ディナーコース「藤」11000円の一部

『蔵元料理 マルト醤油』酢醤油 ディナーコース「藤」 11000円の一部 泡状にした酢醤油を用いて魚介や野菜をいただく。酸味よりも醤油のコクと香りを前面に押し出した醸造元ならではの逸品だ。口の中がリセットされ、次の料理の期待も膨らむ

天然醸造の奥深い味わいはもちろん、どんな食材にも合う醤油の可能性を実感することだろう。

【宿泊もできる!】

2020年8月、築130〜140年の蔵を宿泊棟にリノベーション。全7室あり、醸造作業に従事していた蔵人の生活ぶりを肌で感じることができる。醤油絞りや村屋神社の朝参りなど体験メニューも用意。1泊朝食付き2名51200円〜。

『蔵元料理 マルト醤油』朝食 ※朝食付きを選択した宿泊客のみ 大和肉鶏の醤油餡掛けや明日香村産「のらのわ卵」でいただく卵かけご飯、おかずプレートと盛りだくさん
『蔵元料理 マルト醤油』

[住所]奈良県磯城郡田原本町伊与戸170
[電話]0744-32-2064
[営業時間]11時半〜14時半(12時LO)、18時〜21時(18時半LO)
[休日]水・第1、3火
[交通]近鉄橿原線田原本駅から車で11分

自家農園野菜の圧倒的な存在感に心躍る贅沢な時間を『Le BENKEI(ル・ベンケイ)』@大和郡山

郡山城跡の近く、緑あふれる敷地に佇むフランス料理店。オーナーシェフの尾川欣司さんは、老舗料理旅館を営む家系に生まれ育ちながらもフランス料理に魅せられ、1975年に『Le BENKEI』をオープン。茶懐石の伝統を採り入れた創作洋風懐石を編み出した第一人者として知られる。

ランチ「ステーキコース」7700円

『Le BENKEI(ル・ベンケイ)』ランチ「ステーキコース」7700円の一部 国産黒毛和牛のステーキ トリュフのソース 赤ワインとフォンドヴォーをベースにトリュフを加えたペリグーソースが旨い

国産黒毛和牛のステーキをメインとしたランチ「ステーキコース」(7700円※サ10%別)は、自家農園で採れた季節野菜をふんだんに使った全7品。どれも旬の食材ならではの力強い味わいが堪能できる。

『Le BENKEI(ル・ベンケイ)』

[住所]奈良県大和郡山市北郡山276-1
[電話]0743-53-3588
[営業時間]11時半〜15時(14時LO)、17時〜21時(20時LO)
[休日]月・火
[交通]近鉄橿原線郡山駅またはJR大和路線大和郡山駅から車で7分

明日香の大地で育まれた滋味が凝縮された一皿ひと皿に感動『Da terra(ダテッラ)』@岡寺

料理に使用する野菜は、すべてオーナーシェフの中井宏和さんとご両親が自家農園で大切に育ててきたもの。その数、年間100種類以上というからすごい。コースは昼夜ともに1種類のみ。ディナーは11皿程度で13000円、ランチは9皿程度で9000円。

ランチコース」9000円

『Da terra(ダ テッラ)』「ランチコース」9000円の一部 大地から この日のソースは、大根とゆず、自家製味噌の温かいソース

コースの中でひと際目を惹くのは、店名を日本語訳した「大地から」と名付けられたスペシャリテだ。15種類ほどの野菜を使い、それぞれに合った調理法で仕上げている。野菜本来の旨みを引き出す季節の野菜のソースもお見事!

『Da terra(ダ テッラ)』

[住所]奈良県高市郡明日香村川原884
[電話]0744-41-9072
[営業時間]12時料理一斉スタート、18時〜22時(19時LO)
[休日]水・木
[交通]近鉄橿原線ほか橿原神宮駅から奈良交通バス「川原」下車、約2分

築100年以上の古民家をリノベーションしたオーベルジュ『農家のオーベルジュこもれび』@八木西口

風情ある町家が現在も大切に保存され、江戸時代の面影を残す橿原市今井町。町内の散歩がてら立ち寄りたいのが、ココだ。

人気のランチ「花籠」(1800円)は、メインの煮込みハンバーグ以外すべて野菜。天ぷらや煮物、おひたしなど多彩な料理が楽しめる。旬の野菜の濃厚な味わいが引き立つようなやさしい味付けに心が和む。

花籠1800円

『農家のオーベルジュこもれび』花籠 1800円 野菜は可能な限り、生産者や栽培方法がはっきりとわかるものを仕入れている。デザートとドリンクも付く。ランチはほかに「プチランチ」(1200円)や「ジビエカレー」(1200円※前日までに要予約)も用意

ディナー(1組2名より)は要予約で3500円から用意しているほか、蔵をリノベーションした宿泊施設も併設している。1泊2食付き2名以上で12000円〜。

『農家のオーベルジュこもれび』

[住所]奈良県橿原市今井町4-10-6
[電話]0744-48-0458
[営業時間]11時〜15時(14時LO)、18時〜21時半
[休日]月(祝の場合は営業、翌火休)
[交通]近鉄橿原線八木西口駅から徒歩5分

スープまで完飲したくなる牛乳と鶏ダシのやさしい味わい『めんどや』@飛鳥

明日香村で創業100年以上続く老舗の食事処。料理は明日香や奈良県に伝わる郷土料理が中心。中でも鶏肉や野菜を新鮮な牛乳で煮込む「飛鳥鍋」をメインに、ゴマ豆腐と煮物、柿の葉ずし、わらび餅などが付く「飛鳥鍋コース」(1人前3850円※注文は2名から、要予約)がおすすめだ。

飛鳥鍋コース3850円

『めんどや』飛鳥鍋コース 3850円 「飛鳥鍋」は飛鳥時代に、唐から伝わったとされる。大きな鶏モモ肉がごろごろと入る。野菜は季節ごとに替わる。この日はカボチャやアスパラ、きのこ類など。鍋の単品は1人前2750円(注文は2名から、要予約)

「飛鳥鍋」は、たっぷりの野菜が食べられるのが魅力。見た目ほどしつこくはなく、鍋に染み出した鶏の旨みと牛乳のコクが相まって寒い季節にはぴったり。「〆のうどん」(1人前150円)も絶品だ。

『めんどや』

[住所]奈良県高市郡明日香村岡40
[電話]0744-54-2055
[営業時間]11時〜16時※売り切れ次第終了
[休日]不定休
[交通]近鉄吉野線飛鳥駅から車で6分

奈良のシン名所はココ!

『史跡郡山城跡』@郡山

1585年に豊臣秀長が入城し、畿内統治の拠点に。天守台展望施設からの眺めは最高だ。

『史跡郡山城跡』

[住所]奈良県大和郡山市城内町

『村屋神社』@田原本

大物主と三穂津姫の夫婦神を祭っていることから「縁結びの神」として知られる。

『村屋神社』

[住所]奈良県磯城郡田原本町藏堂426

『今井御坊称念寺』@八木西口

室町時代末期、今井町の中核となった寺院。1877年、明治天皇行幸の行在所となった。

『今井御坊 称念寺』

[住所]奈良県橿原市今井町3-2-29

2泊3日間で奈良の美食旅を敢行

筆者は奈良時代に建立された仏像が見たくて、10年ほど前から奈良を訪れるようになった。その反面、旅の楽しみである奈良のグルメは、茶粥や柿の葉寿司、スタミナラーメンくらいしか印象がない。

そこで今回は2泊3日で奈良の美食旅を敢行。中でもいちばん印象深かったのが、『NIPPONIA田原本マルト醤油』内のレストラン『蔵元料理マルト醤油』。

すべての料理に天然醸造の醤油を用いているが、味が単調になっていないことに驚いた。醤油が食材のおいしさを引き出しているのだ。朝食もとてもおいしくいただいた。

奈良市内から少し離れた郊外に実力派の店があると聞いて訪れたのが、大和郡山市にある『Le BENKEI』。1975年に創業し、ミシュラン一つ星を獲得した名店だ。料理はクラシックスタイルの王道フレンチ。自家農園で採れた野菜をふんだんに使っているのが特徴で、濃厚な野菜の味にホッと心が和んだ。

築100年を超える古民家をリノベーションした明日香村のイタリアン『Da terra』もミシュラン一つ星店。さらにグリーンスターの称号も得ている。どの皿も旬の食材に自家菜園で採れた野菜をプラス。どれも素朴で明日香村を体現していると思った。

明日香村では『めんどや』で郷土料理も楽しんだ。牛乳と鶏肉のダシで地鶏や旬の野菜を味わう「飛鳥鍋」だ。和風シチューのようなクリーミーな味わいは絶品。この日は寒かったが、身体の芯まで暖かくなった。

古民家が建ち並ぶ橿原市今井町では『農家のオーベルジュこもれび』へ。「花籠ランチ」は、その名の通り、天ぷらや煮物、ハンバーグが籠盛りで提供される。どの料理も丁寧に作られていて、満足度が高かった。

今回の旅で、奈良は寺社・仏閣だけではなく、美食の地であることを実感。有意義な時間を過ごすことができた。

撮影/中田浩資、取材/永谷正樹

2025年3月号

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『おとなの週末』2025年4月号
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※2025年3月号発売時点の情報です。

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

…つづく「奈良大和四寺巡礼で立ち寄りたい!老舗&新店グルメ&スイーツ5選」では、老舗の甘味処や人気のカフェなどでいただいたおすすめのスイーツやグルメを実食レポートしています。