関西万博を訪れた学生60人の“リアルな声”がSNSと真逆すぎ…「見聞きしていたのとは全然ちがった」感想を現地で聞き込み

開幕後もさまざまなニュースが飛び交っている大阪・関西万博。メディアやSNSではネガティブな話題が先行しているが、実際に現地を訪れた若者たちは何を感じたのか――。今回は万博を訪れた学生たちに、その本音を聞いた。
“強制”の声も? 揺れる学校行事としての万博
今回の万博では、大阪府が会場付近の学生たちを無料で招待しているが、これに対しては賛否が巻き起こっている。アクセスの悪さや、安全面での懸念などがあり、一部の市では“#関西万博への校外学習を強制しないで”という署名活動まで繰り広げられた。
また、遠足や修学旅行先を、行きたかったテーマパークから万博に変えられてしまったと嘆く学生たちの声もSNSで散見され、〈そこまでして来場者数をかさ増ししたいのか〉と批判の声も上がっていた。
そんな中、4月中旬の平日に万博会場を訪れると、多くの人でにぎわっていた。そしてしばらく歩いて感じたのは、圧倒的な学生の多さだった。
体感では4割くらいは学生という印象。赤白帽子を被り、先生に引率されながら集団で歩く小学生たちや、グループごとにわかれて活動する中学・高校生の姿がいたるところで確認できた。
そこで彼らに、「万博の感想・訪れる前と訪れた後」についてそれぞれ話を聞いた。
「行く前はあまりいい噂を聞かなかったので、どれだけ荒れているのかなって思っちゃっていました。パビリオンはこれから見ていこうと思っていますが、すでに結構楽しいです」(静岡県、中学2年生・男子)
「例年は京都に修学旅行で行くんですが、今年は万博に行くことになりました。いろんな噂を聞くので、どんなところかちょっと想像できないなって、不安だったりはしました」(静岡県、中学2年生・女子)
「今日は日帰りで来ました。特に準備とかもせずに、なにがあるとかは正直まったくわからん状態で来たので不安は不安でした。でもまあ、わくわくもしていましたね」(大阪府、高校1年生・男子)
「去年の12月くらいには万博に行くことが決まっていました。修学旅行は高2のときに沖縄に行って、それとは別に4月に新しい学年・学期になるので親睦を深めるという遠足みたいなのがあり、今年はそれが万博やったっていう感じで。
行く前は正直、政治的ななにかに巻き込まれるんじゃないかっていう不安がありました。でも行った後は、海外のパビリオンとか活気とか、そういうのを直に経験できですごいいい経験になりました」(京都府、高校3年生・女子)
学生たちの多くが万博を訪れる前は、さまざまな不安や疑念を抱いていたようだ。SNSやニュースで耳にした噂や情報に影響され、実際にどんな場所なのか予想もつかないという声が多く見られた。
しかし、いざ万博会場に足を運んでみると、予想に反して「楽しかった」という感想が圧倒的に多く見受けられた。学生たちは建物やオブジェ、展示物などを見て楽しんだり、パビリオンでの体験を満喫したりしていた。
「いろんな情報があって、なんか楽しかったってのもあったし、こういうのがよくなかったみたいないろんな情報があって不安でした。でも行ってみると、歩いているだけで楽しいです。建物とかオブジェとかイラストとか、見ているだけでも楽しいです」(静岡県、中学2年生・女子)
「今は高1で、入学式前の説明会みたいなので万博に行くと言われ、行くことになりました。でもネットでいろいろなニュースが流れとったじゃないですか、間違ったことも含めて。それを聞いとったからちょっと不安ではありました。でも来たら、パビリオンとか普通に楽しかったです。思ったよりも広くてびっくりしました」(三重県、高校1年生・女子)
「ネットでいろいろなニュースが流れとったじゃないですか」
また、ネット上でも話題になった、“遠足や修学旅行先を万博に替えられてしまった”問題の当事者にも話を聞くことができた。
「毎年この時期は校外学習でUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)に行っているんですけど、今年は万博に行くと去年くらいに言われました。正直かなり不評で、中には『万博を休んでユニバ行くぞ』って話も上がっているくらいでした(笑)。ほぼほぼ周りもユニバ派でしたね。
でも来てみると楽しかったです。スペインのパビリオンとかいろんな国の歴史とかを見ることができたので。今日を踏まえたうえで、『万博とUSJ、校外学習で行きたいのはどっち?』って聞かれたら、万博って答えます。USJは行こうと思ったらいつでも行けるし、万博はこういう機会じゃないと行かなかったと思うし、今しか行けないところですから」(滋賀県、高校3年生・女子)
「入学式のときに今年は遠足で万博に行くって急に言われて、特に準備する間もなく来ました。行く前はまあ、別に楽しくなさそうだな、暑そうだな、値段が全部高そうだな、とか思っていました。でも来たらなんだかんだ楽しくて、チェコのパビリオンとか行きました。ミャクミャクのグッズも値段を気にせず買ってしまいましたね」(京都府、高校1年生・男子)
今回、60人くらいの学生に話を聞いたが、そのほとんどが行く前は万博に対してあまりいいイメージを持っていなかったが、来てみると思いのほか楽しいという感想だった。
また中学生を引率していた静岡県の教師からは、「思ったほど引率は大変ではなかった」との感想も聞くことができた。
ユニバより楽しい?若者が見た万博の“リアル”
万博の会場内でインタビューをしているため、学生たちがこちらに気を遣って「来たら楽しかった」と答えている可能性も否定はできないが、学生たちがグッズのカチューシャを頭につけ、自撮りをしながら楽しんでいる様子を見ると、それは本心からの言葉のようにも感じられた。
特に、ゲート手前のグッズ売り場には学生たちが長蛇の列を作って並んでいて、まるで人気のテーマパークのようでもあった。
もちろん課題がないわけではない。しかし、学生たちの素直な声からは、万博が持つ本来の魅力や、現地でしか味わえない熱気が確かに存在することが伝わってくる。もしかすると、万博の本当の可能性を最もよく知っているのは、大人ではなく、彼らのような若い世代なのかもしれない。
取材・文・撮影/ライター神山