【社長・細貝萌の生き様】沖田監督のもとで「内容」と「結果」の二兎を追う。群馬トップは現場をどうサポートしていくのか
そういうなか、J2から降格してきたザスパ群馬はボールを大事にするスタイルを推し進めているが、目下、勝点8の15位と苦戦している。
今季に就任した沖田優監督も、3月30日のギラヴァンツ北九州戦後、毅然とこう語り、社長代行兼GMの細貝萌氏もその方向性を支持。「フットボールの内容」と「J2昇格という結果」の二兎を追うことが極めて難しいという現実も理解したうえで、佐藤正美強化部長らと力を合わせ、できることをやろうと日々、動いている。
「J3のアウェーに行くと、ピッチ状態に差があるなとすごく感じます。つなぐサッカーを志向する僕らからすると、なかなか思うようにいかない。これまでの4敗のうち、3敗はアウェーなんですけど、長野パルセイロ戦や奈良クラブとの試合の時は、正田醤油スタジアム群馬との環境の違いが大きくて、それが苦戦の原因になった。パフォーマンスにも大きく影響したと考えています。
ただ、そうだとしても、やることを変えずに貫くのが今のクラブのスタンス。僕自身も100%信じていますし、現場に近いところでサポートしています。毎日、練習前の8時半から現場のスタッフミーティングがあるんですが、それも出ていますし、チームの現状や課題も把握している。僕なりに意見を言うこともあります」と本人も言う。
沖田監督とも必要に応じてディスカッションしている細貝氏だが、現場のやり方に口を出さないのが基本的なスタンス。序盤の厳しいスタートは真摯に受け止め、選手たちが前向きに戦えるように時々、話もしているという。
「僕も選手だったので、負けが込んだり、連敗したりした経験はたくさんあります。ファン・サポーターから苦言を呈されることもありますけど、そこでブレることはない。結果が出れば『良かったね』『良い方向に進み始めたね』と言われるようになるので、結果を出していくしかないんです。
ベテランの風間(宏希)や青木(翔太)、小柳(達司)なんかは昨年一緒にやっていた仲間ですし、各ポジションの軸にベテランを残すという編成を佐藤さんと決めたので、彼らにはしっかりした役割を担ってもらわないといけないと思っています。
今年に来た選手も僕がGMとして呼んだので、よく話をします。キャプテンになったヨネ(米原秀亮)もヤス(西村恭史)、山内陸を筆頭に、みんな能力がある。それを発揮できるような状況を整えてあげたいと思いますし、彼らが持っているものを出せば、間違いなくJ2に行けるはず。今はそれだけを考えて、彼らと向き合っているつもりです」と、細貝氏は献身的な姿勢を前面に押し出している。
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彼らを取り巻く環境を整えるのも、クラブトップの仕事の1つ。特にサッカー専用スタジアムの建設機運を高めることは、重要な課題と言っていい。
現在のホームである正田醤油スタジアム群馬は、1951年のオープンから半世紀以上もの時間が経過している。その間、2006年、2014年に改修工事が行なわれたが、専用ではない分、臨場感が乏しく、VIPルームなどの社交やビジネスに使える部屋も少ないというデメリットがある。
「僕はドイツやトルコでプレーしていたので、VIPルームにスポンサー・パートナー企業の関係者を招いたり、ランチミーティングをしているような文化を目の当たりにしてきました。だからこそ、専用スタジアムが欲しいですし、選手たちにもプレーしてほしいという思いが強い。お客さんにとってのエンタメという意味でも専用の方が価値が上がりますよね。もちろん来年、再来年というわけにはいきませんけど、ザスパ群馬の代表として活動していくなかで、専用スタジアムを作りたいという気持ちは強いですね」と、彼は偽らざる本音を吐露する。
全国各地のJクラブを見ると、親会社ジャパネットたかたの力強いバックアップを受けて「長崎スタジアムシティ」というJR長崎駅前のモダンな複合型施設を昨年10月に作り上げたV・ファーレン長崎、広島財界や自治体の力を借りながら昨年2月から「エディオンピースウイングスタジアム広島」を本拠地にしているサンフレッチェ広島など、時代を先取りしているところもある。群馬もそういった動きが加速していけば理想的だ。
「先日、ヴィッセル神戸の千布勇気社長とお会いしましたけど、僕より1つ上で同じ30代なんです。他のクラブを見ても、最近は40代前半の社長が増えてきて、そのつながりもすごく重要だと感じます。スタジアムのことを含め、いろんな情報を収集するためにも、横のネットワーク作りには積極的に取り組んでいきたいですね。僕もまだこの仕事を始めたばかりなので、いろんなことを学びながら、前進していきたいと思っています」
こう語り、目を輝かせた細貝氏。現場から環境整備、スポンサー・パートナー営業までやるべきことは数多くあるが、転身後の混乱から脱しつつある今からが社長代行兼GMとしての本番だ。4月の株主総会で正式に社長となった後の彼の歩みを見守り続けていきたいものである。
取材・構成●元川悦子(フリーライター)
