あなたのつむじ、美容師さんからどう見える?

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 とくに男性にとって、老いも若きも頭髪の問題は永遠のテーマ。若いうちから薄毛、AGA(男性型脱毛症)に悩む人が多い昨今、美容院に行くことがストレスになる人もいるようだ。「もしかして頭頂部が透けていないか」、「美容師さんにヤバいと思われたくない」、「こんな薄毛で似合う髪型などないのでは」などなど、悩みは尽きない。実際のところ、美容師は薄毛の人をどう見ているのか。3000人の顧客を抱え、動画コンテンツ『渋谷でイメチェンさせる人』でも人気の美容師・カンタさんに、本音を聞いた。

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■「けっこうキてますかね?」、気にする男性に人気美容師の対応は?

 カンタさん(@ka.n_wl)は、3000人の顧客を抱えるフリーランスの人気美容師。“垢抜けコンサル”のしゅんさんと共に、道行く男性をカッコよくイメチェンさせていく動画『渋谷でイメチェンさせる人』(YouTube・TikTok)でも話題だ。これまで、多くの垢抜けない人たちの髪型に手を入れ、新たな魅力を引き出してきたカンタさん。担当するのは若い男性が多いとのことだが、なかには薄毛に悩む人もいるそう。実際のところ、美容師にとって薄毛はやりにくいものなのか。

──若い方の中でも、薄毛を気にしている人はいますか?

 「そうですね。気にされている方は多いと思います。早い方では、20歳初頭や大学生の方でも毛髪を気にしていて、『けっこうキてますかね?』と聞いてこられる場合もあります」

――美容室へ行くのが恥ずかしいと、ためらう人もいるんでしょうか。

 「たしかに、『薄くなっているのにお金をかけるなんて』『美容師に何か言われたら恥ずかしい』と、考える方は多いようです。また、これまで行った美容院で髪型に納得できなかった経験がある方も。そのあたりを気にし始めて、行きづらくなっているように感じますね」

――そのようにセンシティブになっている方に対して、美容師さんはどう対応するんですか?

 「もちろん傷つけるような言い方はしませんが、希望する髪型が毛量に合わない場合は、しっかりお伝えします。例えば、AGA(男性型脱毛症)がかなり進行している方がマッシュにしたいという場合は、『毛量が少なく毛も細くなっているから』と伝え、その方により合う髪型を提案しますね。あと、実は僕も少しM字がキているので(笑)、僕自身の悩みを話すとお客様も安心して相談してくださいます。また、進行度にもよりますが、『早めにAGAの治療したほうがいいよね』と軽くお勧めすることも多いですね。ネガティブに悩むよりも、早く治療するのが一番いいと美容師目線でも思いますから」

――実際、薄毛でも似合う髪型はあるのでしょうか?

 「限界はあるのですが、薄毛をわかりにくくすることはできます。実はそういった技術って、美容学校で教えてくれるわけではなくて。僕自身も駆け出しの頃、おでこが広くなっているカットモデルの方を通常通りカットしてしまい、想定より前髪がずいぶん短くなってしまった大失敗がありました。それ以来、薄毛の方のカットの勉強を始め、そうしたお客様の対応経験が豊富な先輩に、個別に教えてもらいました」

――ということは、どの美容師さんでも薄毛にうまく対応できるわけではないんですね。

 「得意、不得意はあると思います。SNSなどで、薄毛の方に特化した美容師さんもいるので、探してみるのもいいかもしれません。そうでなくとも、WEBやアプリ、電話で美容室の予約する際に、事前に薄毛であることを書き込んだり、伝えていただければ、経験ある美容師さんが担当してくれることも多いのではないかと思います」

■つむじやM字、進行度合いによって似合う髪型は? 流行りのセンターパートもいける

 一言で薄毛、AGAと言っても、人によってその状況は異なる。主には、3つのタイプがあり、まず「つむじ薄毛」型。これは頭頂部から薄毛が進行するパターンだ。次に「生え際後退」型。おでこが広くなっていき、M字型に進行していくことも多い。最後が「同時進行」型で、その両方が同時に進行していくというパターン。カンタさんに、タイプごとにオススメの髪型を聞いた。

【1】つむじ薄毛型
 「カール感があるスパイラルではなく、ツイストっぽい無造作なパーマをオススメすることが多いです。透け感が緩和され、頭頂部へのボリュームも出ます。ほか、オールバックのような、7:3ぐらいのアップバング(前髪を立ち上げたスタイル)。ちょうどブラックマヨネーズの小杉さんのような形で、短めにしたほうが薄毛に目が行きにくいということもあります。AGAが進行している部分としていない部分で毛の伸びる早さも太さも違うので、長さで隠そうとすると余計目立つので注意してください。また、それほど進行していないのであれば、長めのソフトモヒカンだとスッキリして、薄毛も緩和されそうです」

【2】「生え際後退」型
 「生え際から進行している方はトップに量があることが多いので、前髪を長めにした重めのマッシュが似合うのではないかと思います。また、いま流行りのセンターパートもオススメです。というのも、通常の毛量でセンターパートにすると、こめかみの上あたりの髪が膨らみがちになるんです。その点、M字部分の毛が少なめだと、そこの量感がちょうどいい感じになることも。ただ、かなり進行している方は要注意で、M字部分の肌が透けて見えて逆効果になることもあります。進行段階によって…ということになりますね。進行が進んだ方は、ショートのほうが目立たないです。おでこの中心を起点として、顔にひし形を作るようなアップバングで、眉毛の横に落ちるぐらいの長さをオススメします」

【3】「同時進行」型
 「これは非常に難しく、どうしても薄毛はわかってしまいます。なので、限界はありますが、ワックスを使用する髪型にします。僕の場合は、前から見たときの印象を大事にし、王道のアップバングで合わせますね。また、これもパーマはボリュームが出るのでアリだと思います。進行具合にもよりますが、両サイドを刈り上げて頭頂部の残った髪を流す、外国人のようなヘアスタイルで、薄毛の部分も逆に見せるという形もあります」

【NG】
 「例えば、かつて“バーコード”と呼ばれたような髪型。これは、ジェル系とかツヤ系のワックスで整えるのがよくないので、マットでツヤが出ないワックスをご利用ください。また、『長めに残したい、そのほうが隠せそう』と言う方も多いのですが、実際は逆です。基本はショートの方が薄毛は隠しやすいので、長く残すのはやめたほうがいいと思います」

――ちなみに、美容師さんが勧める、普段のケア方法とは?

 「毎日できることで言えば、まずはヘッドマッサージですね。根詰まりが良くなく、頭皮が張っているような方もいらっしゃいます。お風呂に入る時、30秒でいいのでマッサージをして、血行を良くするのが良いと思います。ただ、熱すぎるお湯は髪の毛や頭皮にはよくなく、適温は38度と言われています」

――最後に、薄毛に悩む方、美容院に行くのをためらう方にアドバイスをお願いします。

 「これまで様々なお客様を見てきましたが、薄毛が進行すればするほど、自分の好みの髪型にするのは難しくなります。カッコ良く決まる髪型が限られてくるので、経験豊富な美容師さんに相談することをお勧めします。ただ、美容師としてもお客様にとって一番いいと思うのは、早い段階でAGA治療をすること。最近は、治療すれば改善するということも認知されました。僕たちも、以前より気軽に治療を勧めやすくなりましたし、お客様も受け入れやすくなっているように思います」

 実際、AGA患者を多く診ている医師も、「とくに若年性の場合は、早期に治療を開始することで薄毛を食い止めることができる」と明かす。

 「でも、そのためには”毛根”が残っていることが大前提です。AGAは早めの治療により改善は期待できますが、一度始まると自然に治ることはありません。気にしているようであれば、早めに医師に相談し、もしAGAであれば薬を服用することをお勧めします。最近では、高校生ぐらいの男性が親御さんと一緒に、AGAのお悩みで相談に来ることも珍しくなくなりました。以前より治療のハードルは下がっていると思いますし、早めに対応するのが良いと思います」(『クリニックフォア』新橋院・宋 有奈先生)

 ビジュアルがすべてではないにせよ、好きなヘアスタイルを自由に選ぶにも、髪がないことには始まらない。若いうちに不安があるのであれば、これからの長い人生ずっと髪型に悩み続けることになる懸念もある。おしゃれを楽しみ、自分に自信を持ち続けるためにも、まずはカンタさんの言うように美容師に正直に相談するのが得策だろう。そして、必要とあらば治療に踏み出す。その勇気が、未来を変えるかもしれない。

【監修】宋 有奈(そんゆな)
獨協医科大学卒業後、東京慈恵会医科大学附属病院に勤務し、形成外科・レーザーを中心とした診療を行う。現在はクリニックフォアで皮膚科、形成外科の質の高いプライマリーケアの実践を行っている。

(文:衣輪晋一)