赤や黄色、橙色に染まった京都もひと段落。新年もすぐそこの師走ではありますが、少しだけ静かな京都を堪能するには、今が最高のタイミングかもしれません。寒さも京都の魅力のひとつですし、寒いからこそ味わえる京都も待っています。 …

赤や黄色、橙色に染まった京都もひと段落。新年もすぐそこの師走ではありますが、少しだけ静かな京都を堪能するには、今が最高のタイミングかもしれません。寒さも京都の魅力のひとつですし、寒いからこそ味わえる京都も待っています。

新年を前に心も体もリセットしたいと思っているこの時期。一年の疲れを癒し、運気を高め、旬の美食で体を整えて冬の美景も堪能してしまう……見て、食べて、パワーを授かる、初冬の京都で心と体の幸せ体験。いかがですか。

ふたつの名庭で、四季折々の美景を堪能

京都市街から北東に約1時間、古くより紅葉の名所として人々に愛されてきた大原も初冬を迎え、ひと息といったところ。そんな静粛な庭やのどかな田園風景を眺める、癒しのひとときに出かけてみるのはいかがでしょう。

集落を流れる鴨川の支流・高野川は清流で知られ、夏はホタルの名所としても知られている

比叡山のふもとにあり、四方を山に囲まれた大原。古くは若狭の魚介を運ぶ物流ルート「鯖街道(若狭街道)」の中継地点であり、また、炭焼きの里としても知られ、頭に柴(しば)を乗せて京の都に行商する「大原女」の姿も有名。その立地から比叡山(天台宗)の影響を強く受けた大原周辺には古刹が点在しています。

ふたつの名庭を有する『三千院』は、天台宗の開祖・最澄が比叡山延暦寺建立の際に構えた草庵が起源で、寺名や場所を変えながら1200年の歴史を紡いできました。

『三千院』の玄関口となる「御殿門」。自然石を巧みに組み上げた石垣は近江の石工集団・穴太衆(あのうしゅう)によるもの

受付を済ませ最初に目に飛び込んでくるのは客殿から鑑賞する「聚碧園(しゅうへきえん)」。緑を集めたという意味を持つこの庭は、庭一面の緑と刈り込まれたサツキが美しいパノラマを生み出します。

畳に座って眺めると緑のパノラマが広がる池泉鑑賞式庭園「聚碧園(しゅうへきえん)」。
縁側の赤毛氈はお抹茶(600円)専用の特等席。
「聚碧園」は江戸時代の茶人、金森宗和(かなもり・そうわ)の修築と伝わる。東側は山肌を利用し、南側は池庭になる

客殿の先の宸殿(しんでん)からは、もうひとつの庭「有清園(ゆうせいえん)」に出ることができます。青苔の庭からまっすぐに伸びる杉やヒノキの迫力、その足元を彩る散りもみじの美景にうっとり。

冬は雪景色、春は桜やシャクナゲと季節ごとに美しく変化し、脇の弁天池には福が得られる延命水がしたたり落ち、苔と一体になったわらべ地蔵がほほ笑んでいます。

「有清園」は国宝阿弥陀三尊像を安置する『往生極楽院』を囲むように造られた池泉回遊式庭園
絨毯のように広がった一面の苔庭に、春はヤマザクラとシャクナゲ、夏は深緑、秋は紅葉、初冬は散りもみじが美しい
『往生極楽院』の南側には弁天池と枯滝の石組みがあり、周囲には石彫刻家の杉村孝(すぎむら・たかし)氏による「わらべ地蔵」が優しく微笑む

「有清園」の先の弁財天は「京の七福神」のひとつなのでこちらも忘れずにお参りを。

また、『三千院』では客殿の一角に平安時代の天台宗中興の祖、元三大師(がんざんだいし・第18代天台座主良源)をお祀りしています。法力が強いことで知られた高僧ですが実はおみくじの創始者で、ご尊像の前に置いてあるおみくじは元三大師のお言葉がかかれたもの。進むべき道を示してくれると伝わるものなので気を引き締めて引きましょう。

『三千院』の弁財天は「京の七福神」のひとつ。京都では「七福神めぐり」が盛んで特にお正月に親しまれている
青モミジ、赤モミジがあしらわれたおみくじ(100円)には、霊験あらたかと伝わる元三大師の言葉が書かれている。

癒しの「額縁庭園」を眺めつつ、お茶で一服

四季折々の景色の美しさで知られるもう一つの庭が『宝泉院(ほうせんいん)』の額縁庭園です。『三千院』からは徒歩5分ほど、天台宗の声明(しょうみょう)道場として栄えた『大原寺 勝林院』の塔頭として約800年前に建てられた寺院です。

額縁庭園で有名な『宝泉院』。書院からの四季折々の眺めが素晴らしく、小さなお寺ながらいつも賑わっている
縁側から突き出る2本の竹は理智不二(りちふに)と名付けられた水琴窟。二連式の珍しい水琴窟の音色が来院者を癒す

書院に通されると、正面に樹齢700年の五葉松、右手には竹林の合間から大原の里を見下ろす初冬の「盤桓園(ばんかんえん)」が広がります。

お庭自体は大きくありませんが、大原の里と背後の山々を借景にした奥行きのある眺めが素晴らしく、ずっと見ていても飽きることのない癒しの空間でお抹茶をいただきホッとひといき。

立ち去りがたいという意味が込められた「盤桓園」。名の通り人々を惹き付ける美しい空間で心が浄化されるよう
お抹茶とお菓子は拝観料に含まれており、お庭を眺めながらいただける

宝泉院にはもうひとつ、2005年に作庭された新しいお庭があります。「宝楽園」と名付けられた石庭は石組、樹花、白砂で太古の海と神仏の世界を表現したというスケールの大きな歩き眺められる枯山水です。

新たな名所「宝楽園」は回遊式の枯山水。太古の海をイメージした底地に立体的な石組みが神仏の世界を表している
客殿の格子から覗く「鶴亀蓬莱庭園」の鑑賞も忘れずに。こちらは江戸中期につくられたお庭で、池の形を鶴に、奥の築山を亀に見立てている

■天台宗 京都大原 三千院
住所/京都市左京区大原来迎院町540
電話/075-744-2531
拝観時間/9:00〜17:00(11月8:30〜17:00、12月〜2月9:00〜16:30)
拝観料/一般700円、中学生・高校生 400円、小学生 150円

■京都大原 宝泉院
住所/京都市左京区大原勝林院町187番地
電話/075-744-2409
拝観時間/9:00〜17:00(受付は16:30まで)
拝観料/一般800円、中学生・高校生700円、小学生600円
※2024年4月1日から拝観料が変わります(一般900円、中学生・高校生800円、小学生700円)

編集/エディトリアルストア
取材・執筆/渡辺美帆、成田孝男
写真/奥田正治

※情報は令和5年12月12日現在のものです