WBCの熱がすごい。2月17日のキャンプインから、地上波テレビのワイドショーも、夜のニュースも、もちろんインターネットのサイトも、「侍ジャパン」を絶えず取り上げている。

 取材をする立場の人間からすると、ダルビッシュ有の存在がとにかく頼もしい。現役メジャーリーガーにしてWBC優勝経験者のスーパースターが、宮崎でのキャンプに初日から合流してくれた。もっと言えばキャンプ前に宮崎入りして、その瞬間からほぼ毎日テレビカメラの前に立っている。

 日本人の多くが名前を知っているに違いないダルビッシュが、チームの先頭に立って情報を発信してくれているのだ。メディアからすれば、取り上げたくなるのは当然だろう。

 ひるがえって、Jリーグである。
 2月17日のフライデーナイトJリーグから、2023年シーズンがスタートした。J1とJ2はすでに2節を消化し、3月4日からJ3リーグも開幕する。

 1993年5月の開幕から30周年ということで、今シーズンは特別な催しが企画されている。コロナ禍からの本格的な回復を目ざしていくことも重なって、Jリーグも各クラブもいつも以上に意気込みを感じさせるスタートとなっているのだが、周りを見渡してみると違う景色が広がっている。

 Jリーグが話題になっていないのだ。話題にしているのは、サッカーに関心のある人たちに限られている。

 シーズン開幕前ならば、それもしかたがないと考えていた。シーズンが動き出せばJリーグを目にする機会が増え、話題になる場面も出てくるに違いないとの期待を抱いていた。

 しかし、Jリーグの開幕と侍ジャパンの始動がバッチリ重なったこともあり、Jリーグはすっかり追いやられてしまっている。都内を歩いていても、電車に乗っていても、サッカーが目に入ってこないのだ。
 
 JリーグはDAZNでの視聴が基本だが、開幕節はFC東京対浦和レッズ戦がNHK総合で生放送された。第2節は横浜F・マリノス対浦和レッズが、NHKBSで中継されている。そのほかの試合も、NHKの地方局やローカル局が放送している。テレビで観ることもできるのだが、侍ジャパンを上回るほどの話題は提供できていない。

 個人的に思うのは、アイコンとなる存在の有無だ。

 現在のJリーグに、ダルビッシュ有のような存在の選手がいるだろうか。イニエスタ? 残念ながらケガが多い。所属するヴィッセル神戸が優勝争いに絡んでこないと、彼のプレーを取り上げる必然性を欠く。

 長友佑都? 現時点ではスタメンを譲っている。試合に出ない選手も、取り上げられる必然性を見つけにくい。本人もメディアに出にくいだろう。

 連覇を目ざすF・マリノスの選手は? ケヴィン・マスカット監督が指揮するチームは、特定の個人に頼っていない。選手層の厚みが最大の武器だ。アイコンになり得る選手はいるが、ひとりに絞るのが難しい。
 
 3月24日の日本代表対ウルグアイ代表戦は、WBC決勝の2日後に行なわれる。侍ジャパンが世界一になったら、その余韻はまだ色濃いだろう。WBCの結果次第だが、代表戦が陰に隠れてしまう可能性がある。
 
 Jリーグが苦しいのは言うまでもない。WBCが終われば、プロ野球が開幕する。世界を相手にした選手たちが競い合う。ニュースバリューは高い。メディアは取り上げやすいだろう。
 
 Jリーグを、サッカーを、どうやって届けていくのか。興味のない人に、どうやって観てもらうのか。サッカー界からは危機感を抱く声も聞こえているが、それをリーグ全体の共通認識としていくべきだ。いまのままでは「自分たちで盛り上がっているだけ」になってしまう。