2年目のMF古川陽介と権田修一【写真:河治良幸】

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【識者コラム】昇格候補の清水&磐田、1年でのJ1復帰を果たせるかに焦点

 2023シーズンのJ2リーグには、静岡県勢のクラブが3つ揃う。

 J1から降格した清水エスパルスとジュビロ磐田、さらにJ3から昇格した藤枝MYFCが“魔境”の異名を持つJ2を舞台に戦う。

 気鋭の須藤大輔監督が率いる藤枝の挑戦も興味深いが、やはり清水と磐田が1年でJ1復帰を果たせるかどうかは大きな注目ポイントだろう。今季はこれまでと違い、自動昇格の2枠に加えて、3位から6位が参加するプレーオフの勝者も、入れ替え戦なしで昇格できる。その意味では“トップ6”を目指す戦いにもなるが、清水や磐田はJ2優勝、J1自動昇格が目標になるだろう。

 清水は昨シーズン、監督交代を経験しながらもMF乾貴士(※2月13日、左膝過伸展損傷、骨挫傷により全治6週間と発表)の途中加入やFW北川航也の復帰などで一時は降格圏を脱したかに思われたが、試合終盤で勝ち点を落とす試合を繰り返し、逆戻りしてしまった。清水のファン、サポーターに限らず「なぜ、このメンバーで降格したのか」という声も多いが、GK権田修一などキャンプ中まで契約が未更新だった選手も含めて、主力の大半をチームに残すことができた。

 そのなかで、ディフェンスラインは複数の主力選手が退団、移籍したが、代わりに経験豊富なセンターバックのDF高橋祐治(←柏レイソル)、両サイドバックをこなすDF吉田豊(←名古屋グランパス)を補強しており、むしろ安定感が増す期待もある。彼らは守備能力の高さだけでなく、統率力やリーダーシップを発揮できるタイプで、鹿児島キャンプでも、明るさと厳しさの両面をもたらしていることが見受けられた。

 オフェンスもMF鈴木唯人こそフランス1部ストラスブールに移籍したが、J1得点王のFWチアゴ・サンタナが残留したことは非常に大きい。昨夏に期限付き移籍したJ2モンテディオ山形で8得点を記録したFWディサロ燦シルヴァーノも復帰、キャンプから猛アピールを続けている193センチの韓国人FWオ・セフンや北川など、前線のパンチ力はJ2最強レベルだ。

 戦力的に考えれば、圧倒的に有利と見られる。外部の下馬表に惑わされることなく、地に足を付けて勝ち点を積み重ねられるかどうか。J2は海千山千の監督が揃っており、5枚の交代枠を駆使して勝機を奪いにくる。就任2年目のゼ・リカルド監督はチーム設計力に定評がある。試合中のマネジメントや選手交代に関しては改めて真価が問われるシーズンになるだろう。

 開幕時の主力はやや年齢が高めになりそうだが、大卒ルーキーのFW齊藤聖七やJ2レノファ山口FCで経験を積んできたパリ五輪世代のMF成岡輝瑠(※2月13日、右膝内側側副靱帯損傷で全治6〜8週間と発表)、ユース所属ながらキャンプ中の練習試合で特別な輝きを放っていた16歳のMF矢田龍之介などが食い込んでくると、チームが活性化されながら昇格ロードを進んでいけそうだ。

FIFA処分中で十分な強化ができない磐田、“実質補強”と言える要素も

 ジュビロ磐田はカタール・ワールドカップ(W杯)で日本代表のコーチを務めた横内展昭新監督を迎え、藤田俊哉スポーツダイレクター(SD)を旗頭に、クラブをあげての改革を図っている。周知のとおり、FWファビアン・ゴンザレスの契約に関するFIFAの裁定により、今年いっぱい外部からの選手登録ができない。それに伴い、大卒ルーキーのMF師岡柊生(磐田との内定取り消し後、鹿島アントラーズに加入)を逃すなど、戦力面で痛手を被ったことは否めない。

 しかしながら、藤田SDなど強化部の尽力もあってか、昨年J1を戦ったほとんどのメンバーが残留、さらにJ2栃木SCで主力を担ったDF鈴木海音など、期限付き移籍していた4人の選手が復帰した。純粋な新戦力はユースから高校生Jリーガーとなった17歳のFW後藤啓介だけだが、怪我で1年間を棒に振った左サイドバックのDF高野遼が状態を上げており、途中加入だった昨シーズンはほぼ出番のなかったブラジル人MFドゥドゥが好調をアピールするなど“実質補強”と言える要素もある。

 鹿児島キャンプの期間、横内監督は戦術のベースになる攻守の切り替えや球際のところを強調して、個の意識改革に時間を割いており、開幕前の時点でチームの完成度が高いとは言い難い。そうした状況で、いきなり2月18日の開幕戦で昇格候補のファジアーノ岡山が相手というのは酷だが、ホームゲームにしっかり勝利できれば波に乗っていけるはずだ。

 昇格のためにはプロ26年目となるMF遠藤保仁やキャプテンに就任したMF山田大記など、経験豊富な選手の働きは心身両面で不可欠だが、ドリブル突破を武器とするMF古川陽介など、若手の突き上げ無しに昇格レースを乗り切るのは難しい。昨シーズンから大きくメンバーが変わっていないなかでも、新監督の目によって競争意識が高まっているのは好材料だ。

 前線は規格外の打開力を誇るFWファビアン・ゴンザレスの出場停止解禁時期がはっきりしない。完全移籍で心機一転を図るFW杉本健勇、キャンプから好調のFWジャーメイン良、そして横内監督も期待するルーキー後藤などが相当に奮起しないと、清水のようなチームに対抗することは難しい。一方ディフェンス陣では、東京五輪のブラジル代表優勝メンバーであるDFリカルド・グラッサの残留は大きく、リーダー格のDF伊藤槙人に加えてDF山本義道、レンタルバック組の鈴木やDF中川創、現在は負傷離脱中のDF森岡陸と、センターバック(CB)の充実度はJ2屈指だ。

現在の完成度は清水が明らかに上、磐田はベース作りの段階に

 最大のキーマンはJ3ギラヴァンツ北九州から復帰したMF針谷岳晃だ。いわゆる“東京五輪を逃した東京五輪世代”の1人で、同じ境遇からJリーグで飛躍的な活躍を見せるFW小川航基(横浜FC)やDF大南拓磨(川崎フロンターレ)にも大きな刺激を受けている様子だ。ボランチのポジションが主戦場となるが、クロアチア代表MFルカ・モドリッチのように、流れに応じて幅広く顔を出しながら、テンポ良くチャンスの起点を作る。そうした働きはもちろん、セットプレーのキッカーとしても期待される選手だ。

 2月4日に鹿児島で行われたトレーニングマッチの結果(45×4本、合計3-1で清水が勝利)どおり、現在の完成度は清水が明らかに上で、横内新監督の磐田はベース作りの段階にあることが象徴された結果と内容だった。しかし、チームは生き物で、シーズンは長い。清水が順調にスタートダッシュを見せるのか、磐田が尻上がりにチーム力を上げて、昇格圏内に食い込んでいけるのかなど、興味は尽きない。

 最終的な静岡勢のワンツーフィニッシュも十分にあり得るが、ライバルクラブは侮れない存在ばかり。昨シーズン、プレーオフで惜しくも昇格を逃した岡山、山形、大分トリニータ、ロアッソ熊本に加え、積極補強のFC町田ゼルビアなど強者が揃う。もう1つの“静岡勢”藤枝も両チームとの対戦ではタフな相手になりそうだ。第5節の静岡ダービーが最初の山場になるが、再び静岡の地から日本サッカーを盛り上げていく戦いを期待しながら見守りたい。(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)